【ツイッター(現X)投稿のスクリーンショットについて引用の成立を認めた事件】
投稿日:2026年6月29日 |
著者:弁護士 多田 宏文
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参照条文/キーワード/論点 |
著作物の引用/著作権法第32条1項該当性 |
ポイント
本件は、ツイッターにおいて、投稿に添付された画像に含まれる控訴人プロフィール画像に係る著作権の侵害等を主張して、控訴人らが、プロバイダである被控訴人に対し、ツイッター投稿者の発信者情報の開示を求めた事案である。裁判所は、引用の成立を認めて著作権侵害を否定した。なお、裁判所は、名誉毀損による権利侵害の明白性を認めたが、本項では、著作権侵害に係る点に絞って説明する。 |
判決概要 |
| 裁判所 | 知的財産高等裁判所第2部 |
| 判決言渡日 | 令和4年11月2日 |
| 事件番号 | 令和4年(ネ)第10044号 |
| 事件名 | 著作権侵害等に基づく発信者情報開示請求控訴事件 |
| 裁判長裁判官
裁判官 裁判官 |
本多 知成
浅井 憲 勝又 来未子 |
事案の概要
事案の概要は以下のとおりである。
1 本件は、氏名不詳者により、ツイッターにおいて、本件ツイート1及び2が投稿されたことにより、ツイートに添付された本件投稿画像1又は2に含まれる控訴人プロフィール画像に係る控訴人X1の著作権及び控訴人X2の原著作者の権利が侵害されたこと並びに控訴人X1の名誉権が侵害されたことが明らかであると主張して、控訴人らが、経由プロバイダである被控訴人に対し、令和3年法律第27号による改正前のプロバイダ責任制限法第4条1項に基づき、発信者情報の開示を求めた事案である。
本件投稿画像1及び2は、控訴人X1が投稿したツイートをスクリーンショットにより撮影したものであり、ツイートには、投稿者を示すアイコンとして、控訴人のプロフィール画像が付されていた。控訴人のプロフィール画像は、控訴人X1が自らのアカウントにおいてプロフィール画像として用いていたもので、控訴人X2が撮影した控訴人X1の写真の顔部分に、控訴人X1がイラストを付して加工したものである。
2 原判決は、控訴人らが開示を求める情報が、本件ツイート1の投稿から長期間経過したものであることから、被控訴人の設備が侵害情報である本件ツイート1及び2の投稿に供されたと認めることができず、被控訴人はプロバイダ責任制限法第4条1項所定の「開示関係役務提供者」に当たらないとして控訴人らの請求を棄却した。
3 知財高裁は、本件控訴人プロフィール画像の利用については「引用」に当たり適法であるとして著作権に係る権利侵害の明白性を否定したが、名誉毀損による権利侵害の明白性を認め、また、プロバイダ責任制限法第4条1項所定の要件を満たすと判断して、控訴人X1の被控訴人に対する請求を認容し、控訴人X2の請求は棄却すべきとした。
以下では、著作権侵害に関し、引用の成否の争点についてのみ取り上げる。
争点
引用の成否
判旨
裁判所の判断は、以下のとおりである。なお、以下の引用部分の下線及び強調は筆者による。
1 争点1-1(本件ツイート1の投稿による権利侵害の明白性)について
…
(3)著作権侵害について
ア 証拠(甲1~3、5、13、37、38)によると、本件控訴人画像1は、控訴人X2が撮影した写真(本件控訴人写真)に、控訴人X1が、その被写体である自らの顔部分に作画を加えて作成したものであることが認められる。そして、本件控訴人写真には、被写体の選択や撮影場面等に撮影者である控訴人X2の個性が表れているということができ、また、本件控訴人画像の顔部分に描かれた絵には、目と口の形状や位置等に控訴人X1の個性が表れているということができる。そうすると、本件控訴人写真及びこれを加工した本件控訴人画像には、いずれも著作物性が認められる
。そして、本件控訴人プロフィール画像は、本件控訴人画像を複製し、主に下部分を切除して被写体の上半身を残したものであって、控訴人X1が著作権を、控訴人X2が原著作者の権利を有するものと認められる。
イ 本件では、本件ツイート1の投稿者が、本件アカウントにおいて、控訴人らの許諾を得ることなく本件ツイート1を投稿しており(甲5、13)、これにより、本件控訴人プロフィール画像をツイッターのサーバに複製し、送信可能化したといえる。
ウ 被控訴人は、上記イの本件控訴人プロフィール画像の利用について、「引用」に当たり適法であると主張するので検討するに、適法な「引用」に当たるには、①公正な慣行に合致し、②報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行われるものでなければならない(著作権法32条1項)。
エ(ア)本件についてみると、本件ツイート1においては、「X1’さん」「DM画像捏造してまで友人を悪人に仕立てあげるのやめてくれませんかね?」との文言と共に本件投稿画像1が投稿されているところ、「X1’」は控訴人X1の旧姓であるから(甲81)、同ツイートは、控訴人X1が「DM画像を捏造した」という行為を批判するために、控訴人X1が捏造した画像として、本件投稿画像1を合わせて示したものと推認され、本件投稿画像1を付した目的は、控訴人X1が「DM画像を捏造」してこれをツイートした行為を批評することにあると認められる。
(イ)上記控訴人X1の行為を批評するために、控訴人X1のツイートに手を加えることなくそのまま示すことは、客観性が担保されているということができ、本件ツイート1の読者をして、批評の対象となったツイートが、誰の投稿によるものであるか、また、その内容を正確に理解することができるから、批評の妥当性を検討するために資するといえる。また、本件控訴人プロフィール画像は、ツイートにアイコンとして付されているものであるところ、本件ツイート1において、控訴人X1のツイートをそのまま示す目的を超えて本件控訴人プロフィール画像が利用されているものではない。そうすると、控訴人X1のツイートを、アイコン画像を含めてそのままスクリーンショットに撮影して示すことは、批評の目的上正当な範囲内での利用であるということができる。
(ウ)次に、証拠(乙12)によると、画像をキャプチャしてシェアするという手法が、情報を共有する際に一般に行われている手法であると認められることに照らすと、本件ツイート1における本件控訴人プロフィール画像の利用は、公正な慣行に合致するものと認めるのが相当である。
解説/検討
本件では、ツイッター(現X)の投稿のスクリーンショットをとって当該投稿を批判する際に、このスクリーンショットを同時に投稿する行為について、アイコン画像の著作権に関して、引用の成立が認められた。
引用には、著作権法第32条1項において、①公正な慣行への合致及び②報道、批評、研究等の引用の目的上正当な範囲内との要件が課されている。本判決は、投稿内容が名誉毀損に当たるとしながらも、②批評の目的上正当な範囲内としている。名誉毀損の成否と引用の成否を独立して判断していることになるが、両者は別個の問題であり、妥当な判断と思われる。
なお、ツイッターにおいて、リツイート機能を使用した場合に、ツイッター社の仕様により、元の投稿中の写真の一部がトリミングされ、写真中の氏名表示部分がカットされた点について、リツイート行為を氏名表示権侵害とした最判令和2年7月21日・平成30年(受)第1412号がある。(知財高裁は同一性保持権侵害も認定しているが、最高裁はこの点には触れていない。)本件のような態様でスクリーンショットをとれば、この問題は回避されうる。しかし、引用に該当するかという問題が残っていたところ、本判決は、これに該当すると判断したものである。