【アマゾンへの権利侵害申告が信用毀損行為に該当するとされた事件】

 

投稿日:2026年6月29日

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著者:弁護士 多田 宏文
*本記事は、筆者の個人的見解であり、当事務所を含め、筆者が所属する如何なる団体の見解も表示するものではありません。
*判決等に筆者が適宜下線や太字強調等を付している場合があります。


参照条文/キーワード/論点

信用毀損行為/営業誹謗行為/不正競争防止法第2条1項21号

ポイント

 本件は、アマゾン上に開設している仮想店舗(以下、「原告サイト」という。)において商品を販売している原告が、被告に対し、被告が訴外アマゾンに対して原告サイト上に掲載した画像等が被告の著作権を侵害する等の申告をした行為が不正競争防止法第2条1項21号の不正競争行為又は不法行為に該当し、当該行為により損害を被ったと主張して、不正競争防止法第4条又は民法709条に基づき、損害賠償請求等をした事案である。裁判所は、請求を一部認容した。

判決概要

裁判所 大阪地方裁判所第26民事部
判決言渡日 令和5年5月11日
事件番号 令和3年(ワ)第11472号
事件名 損害賠償請求事件
裁判長裁判官
裁判官
裁判官
松阿彌 隆
杉浦 一輝
布目 真利子
 

判決へのリンク(裁判所HPへ)


事案の概要

 本件の事案の概要は、以下のとおりである。
 原告、被告は、ともに、アマゾンサイト上で韓国の芸能人に係る商品を販売していた。アマゾンサイトでは、アマゾンサイト上で販売されている商品等に知的財産権を侵害する内容が含まれている場合、当該知的財産権の権利所有者が、アマゾンに対し、権利侵害の申告をすることができる。
 被告は、10回にわたり、アマゾンサイトのオンラインフォームから、アマゾンに対し、原告サイトに係る識別番号、原告各画像、商品名等を特定し、侵害の種類として著作権侵害を選択した上で、権利侵害の申告(以下、「本件各申告」という。)を行った。
 これを受け、原告の扱う各商品は、本件各申告により、アマゾンサイト上での出品が停止された。(なお、後に、原告による出品再開の申立てにより出品が再開されている。)

争点

権利侵害申告の信用毀損行為、営業誹謗行為(不競法2条1項21号)該当性


判旨

 大阪地裁は、以下のとおり判断して、不競法2条1項21号該当性を肯定した。(なお、下記引用部分の下線及び強調は筆者による。)

(4) 検討
ア 本件各申告の趣旨等

 本件各申告の内容及び態様並びにこれに対するアマゾンの対応…に照らせば、被告は、アマゾンに対して、原告サイト上の原告各画像及び商品名が、被告サイト上の被告各画像及び商品名を盗用したものであること、及び当該行為が著作権侵害に該当することを理由として、権利侵害の申告(本件各申告)をしたと認められる。

イ 被告各画像等の著作物性
(ア)前記(1)アのとおり、被告各画像のうち、写真集又は卓上カレンダーに係る画像である被告画像1、2及び4ないし10は、販売する商品がどのようなものかを紹介するために、平面的な商品を、できるだけ忠実に再現することを目的として正面から撮影された商品全体の画像である。被告は、商品の状態が視覚的に伝わるようほぼ真上から撮影し、商品の状態を的確に伝え、需要者の購買意欲を促進するという観点から被告が独自に工夫を凝らしているなどと主張するが、具体的なその工夫の痕跡は看取できない上、撮影の結果として当該各画像に表現されているものは、写真集等という本件各商品の性質や、正確に商品の態様を購入希望者に伝達するという役割に照らして、商品の写真自体(ないしそれ自体は別途著作物である写真集のコンテンツとしての写真)をより忠実に反映・再現したものにすぎない。
(イ)単語帳に係る画像である被告画像3は、前記同様に商品をできるだけ忠実に再現することを目的として正面から撮影された商品全体を撮影した平面的な画像2点と、扇型に広げた商品の画像1点を配置したものであり、当該配置・構図・カメラアングル等は同種の商品を紹介する画像としてありふれたものであるといえ、被告独自のものとはいえない。
(ウ)以上より、被告各画像は、被告自身の思想又は感情を創作的に表現したものとはいえず、著作物とは認められない
(エ)また、商品名については、前記(1)イのとおり、いずれも商品自体に付された商品名をそのまま使用するか、欧文字をカタカナ表記に変更したり、大文字表記を小文字表記にしたり、単に商品の内容を一般的に説明したにとどまるありふれたものであって、著作物とは認められない
 そのほか、被告は、本件各申告には被告サイト上の商品の説明文に関する著作権侵害も含まれるかのように主張するが、具体性を欠く上、その説明が創作性を有するとは想定できず、失当である。

ウ 被告各画像等の使用の事実の有無
(ア)前記イのとおり、被告各画像等についていずれも著作物とは認められない以上、仮に原告が原告サイトにおいて被告各画像等を使用したとしても、著作権侵害は成立しない
 その点を措くとしても、原告が、アマゾンから出品停止の連絡を受けた後、被告に対して2度にわたり原告サイトについて著作権侵害と判断した理由等を尋ねる旨のメールを送信するとともに、原告訴訟代理人に委任の上で本件通知書を送付していること、本件通知書には、原告を含む競業他社が同一商品を独自に撮影した商品写真を使用する場合には被告商標を付さない限り被告の商標権を侵害しない旨記載されていること(前記(3)オ、キ)、少なくとも本件商品2、6及び8ないし10の商品名は原告サイトと被告サイトとで異なること(前記(1)イ、(2)イ)、そのほか原告各画像が被告各画像それ自体であることを的確に示す証拠が存しないこと等の事情に照らせば、原告が原告サイトに掲載していた原告各画像は、被告各画像を盗用したものではなかったと認めるのが相当である。
(イ)被告は、アマゾンが本件各申告を受けて出品を停止したこと及び被告からの問合せに対してアマゾンが被告の申告が適切であったと回答していること(前記第2「1」前提事実(4)、前記(3)ウ、ク)等から、原告が被告各画像を盗用していた事実が強く推認されると主張するが、アマゾンにおいて権利侵害申告がどのように処理されているかは不明であって、前記認定を左右しない。

エ 被告の故意過失・違法性
 前記(1)ア及びイのとおり、被告は、アマゾンから、権利侵害の申告に係る手続について、知的財産権の侵害を理由とする場合の通知方法、ASINの重複を理由とする場合の通知方法及びそれぞれ個別に申告することが必要であるとのメールを受信し、自らASINの重複を申告する方法ではなく知的財産権の侵害を理由とする場合の方法を選択し、申告に係る原告各画像等を特定し、「著作権侵害」の項目を選択の上で本件各申告を行っている。このような被告の行動に照らせば、被告は、アマゾンに対して自ら積極的に著作権侵害の虚偽事実を申告したといえ、被告が本件各申告をするにつき、少なくとも過失が認められ、本件各申告は違法である。
 被告は、権利行使の一貫として本件各申告を行い、やむを得ず著作権侵害という選択肢を選んだにすぎないこと、著作物性の判断を正確に行った上で申告することが求められるとすれば権利行使を不必要に萎縮させる等と主張するが、被告に本件各商品に関する知的所有権がないことは自明である上、原告からの問合せに対応することなく本件各申告を続けたとの事実関係のもとでは、採用の限りでない。

オ 小括
 以上のとおり、本件各申告は、原告各画像が被告各画像等を無断で使用していることを理由とする原告による著作権侵害をアマゾンに伝える趣旨の権利侵害の申告である一方、被告各画像について被告が著作権を有さず、また原告が被告各画像を無断で使用したとも言えないことから、その内容は、いずれも、被告と競争関係にある原告の営業上の信用を害する虚偽の事実を申告する行為であり、不競法2条1項21号の不正競争行為に該当するといえる。また、被告には少なくとも過失が認められる。

解説/検討

 本件では、被告によるアマゾンに対する著作権侵害申告が、不正競争防止法第2条1項21号の信用毀損行為に該当すると判断されている。(同じく、アマゾンに対する商標権侵害申告が同号に該当すると判断したものとして、東京地判令和2年7月10日・平成30年(ワ)22428号がある。)

 不正競争防止法第2条1項21号は、「競争関係にある他人の営業上の信用を害する虚偽の事実を告知し、又は流布する行為」を不正競争行為とする。

 典型的には、特許権者Aが、被疑侵害者Bの取引先Cに対して、Bの製品が特許権を侵していると告知する行為が問題となるが、不正競争防止法第2条1項21号は、誰に対する告知がこれに該当するのか、その客体を特に規定していない。

 本件は、取引先への告知の事案とは若干異なり、ECサイトを管理運営するアマゾンに対する告知が問題となっている。アマゾンは、権利侵害申告の申立内容について一応は検討したうえで、商品を削除するかどうかを判断する建前である。そのような構造が、特に考慮されていない点には留意すべきである。(米国アマゾンでは、知的財産権侵害について、両当事者に主張させてこれを判断するという手続を設けており、安価なADRとして利用されている。)

 なお、商標権者Aが、被疑侵害者Bの顧客Cに対して、商標権侵害に基づいて訴訟を提起すること自体は、権利行使を制限すべきでないから、不当訴訟に当たる特段の事情がない限り、不正競争防止法第2条1項21号に該当しないとされている(大阪地判平成23年10月20日・平成22年(ワ)5536号)。

 一方、この裁判例を前提とすれば、裁判所以外の私人が権利侵害の有無について判断する場合については、基本的に、不正競争防止法第2条1項21号が適用されることになろう。

       

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