【子供用椅子の形態につき「商品等表示」該当性及び著作権侵害が否定された事例】

 

投稿日:2026年6月9日

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著者:弁護士 盛田 真智子
*本記事は、筆者の個人的見解であり、当事務所を含め、筆者が所属する如何なる団体の見解も表示するものではありません。
*判決等に筆者が適宜下線や太字強調等を付している場合があります。


参照条文/キーワード/論点

不正競争防止法2条1項1号、2号/商品等表示/商品形態/特別顕著性/周知性/応用美術/著作物性/複製・翻案

ポイント

※本判決は、子供用椅子の形態について、不正競争防止法2条1項1号、2号の「商品等表示」に該当するためには、特別顕著性及び周知性を備える必要があるとした上で、原告が特定した形態的特徴は、多様な非類似形態を含むもので外延が不明確であり、「商品等表示」として保護される範囲を画するものとはいえないとして、商品等表示該当性が否定された。
※ 本判決は、商品の全体的な「直線的構成美」に原告製品の特徴があるとしつつ、被告製品は曲線的形状や複数の固定部材を有し、全体的印象が異なるとして、原告製品と被告各製品とは、需要者において出所の混同を生じさせるものとは認められず、類似するものともいえないとした。
※ 著作権法上も、仮に原告製品に著作物性を認め得るとしても、被告製品から原告製品の「直線的構成美」という表現上の本質的特徴を直接感得することはできないとして、複製・翻案を否定した。

判決概要

裁判所 東京地方裁判所民事第40部
判決言渡日 令和5年9月28日
事件番号 令和5年(ワ)第31529号
事件名 不正競争行為差止等請求事件
裁判長裁判官
裁判官
裁判官
中島 基至
小田 誉太郎
尾池 悠子
 

判決へのリンク(裁判所HPへ)


事案の概要

 家具デザイナーであるA(以下「訴外A」という。)は、製品名を「TRIPP TRAPP」とする別紙原告製品目録記載の椅子(以下「原告製品」という。)をデザインし、原告オプスヴィック社に対し、原告製品に係る著作権を譲渡した。
 原告ストッケ社は、原告オプスヴィック社から上記著作権の独占的利用権を取得し、原告製品を製造販売等している。他方、被告は、別紙被告製品目録記載の各製品(以下、別紙被告製品目録記載1の製品を「被告製品1」、別紙被告製品目録記載2の製品を「被告製品2」といい、被告製品1及び被告製品2を併せて「被告各製品」という。)を製造販売等している。

 本件は、原告らが、被告による被告各製品の製造販売等の行為は、原告製品の商品等表示として周知又は著名なものと同一の商品等表示を使用する不正競争行為に該当し、仮に不正競争行為に該当しないとしても、原告製品の著作権(原告オプスヴィック社が有するもの)及びその独占的利用権(原告ストッケ社が有するもの)の各侵害行為を構成し、仮に不正競争行為に該当せず又は著作権及びその独占的利用権の各侵害行為を構成しないとしても、取引における自由競争の範囲を逸脱する行為であり、原告らの営業上の利益を侵害すると各主張して、被告に対し、①原告オプスヴィック社は、主位的に不正競争防止法(以下「不競法」という。)3条1項及び2項に基づき、予備的に著作権法112条1項及び2項に基づき、被告各製品の製造販売等の差止め及び廃棄を求めるとともに、主位的に不競法4条及び5条3項1号、予備的に著作権法114条3項又は民法709条に基づき、損害金の支払を求め、②原告ストッケ社は、不競法3条1項及び2項に基づき、被告各製品の製造販売等の差止め及び廃棄を求めるとともに、主位的に不競法4条及び5条3項1号、予備的に著作権法114条2項の類推適用又は民法709条に基づき、損害金の支払を求め、③原告らは、不正競争防止法14条又は民法723条に基づき、別紙謝罪広告目録記載の謝罪文の掲載を求めた事案である。

原告製品 被告製品1 被告製品2
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争点

(1)不競法上の争点
ア 「商品等表示」該当性(争点1)
イ 周知著名性(争点2)
ウ 商品形態の類否(争点3)
エ 混同の有無(争点4)

(2)著作権法上の争点
ア 著作物性の有無(争点5)
イ 複製又は翻案の成否(争点6)

(3)一般不法行為の成否(争点7)

(4)各請求の成否
ア 差止請求の成否(争点8)
イ 損害賠償請求の成否(争点9)
ウ 謝罪広告掲載の当否(争点10)

以下では、争点1、5、6に関する点について記載する。

争点に関する当事者の主張

 原告らは、原告製品につき、①左右一対の側木(床から斜め上向きに平行に伸びる2本の棒状の部位をいう。以下同じ。)の2本脚であり、かつ、座面板及び足置板が左右一対の側木の間に床面と平行に固定されている点(以下「特徴①」という。)及び②左右方向から見て、側木が床面から斜めに立ち上がっており、側木の下端が、脚木(側木の下側端部から後ろ方向に平行に伸びている2本の棒状の部位をいう。以下同じ。)の前方先端の斜めに切断された端面でのみ結合されて直接床面に接していることによって、側木と脚木が約66度の鋭角による略L字型の形状を形成している点(以下「特徴②」という。)において形態的な特徴を有する(以下「本件形態的特徴」という。)として、不競法上の争点においては、主位的に、原告製品全体の形態が商品等表示に該当すると主張し、仮に原告製品全体の形態が商品等表示に該当しない場合であっても、予備的に、本件形態的特徴が商品等表示に該当するとした上、被告各製品は本件形態的特徴をそのまま具備すると主張し、また、著作権法上の争点においては、本件形態的特徴が創作的表現に該当するとした上、被告各製品は本件形態的特徴をそのまま具備すると主張している。

判旨

1 不競法上の争点について ⑴ 「商品等表示」該当性(争点1)
ア 商品の形態に係る「商品等表示」の特定について
 不競法2条1項1号又は2号は、他人の周知又は著名な商品等表示(人の業務に係る氏名、商号、商標、標章、商品の容器若しくは包装その他の商品又は営業を表示するものをいう。以下同じ。)と同一又は類似の商品等表示を使用等することをもって、不正競争に該当する旨規定している。この規定は、周知著名な商品等表示の有する出所表示機能を保護するという観点から、周知著名な商品等表示に化体された他人の営業上の信用を自己のものと誤認混同させて顧客を獲得する行為を防止し、事業者間の公正な競争等を確保するものと解される。そして、商品の形態は、特定の出所を表示する二次的意味を有する場合があるものの、商標等とは異なり、本来的には商品の出所表示機能を有するものではないから、上記規定の趣旨に鑑みると、その形態が商標等と同程度に不競法による保護に値する出所表示機能を発揮するような特段の事情がない限り、商品等表示には該当せず、仮にこれに該当した場合であっても、商品の形態は本来的には商品の出所表示機能を有するものではないのであるから、商品の形態のうち出所表示機能を発揮する商品等表示部分は、取引の実情等によって時間的にも場所的にも変わり得るものといえる。
 そうすると、原告らが商品の形態の商品等表示該当性を主張する場合には、商品等表示として権利範囲を画する部分がそれ自体不明確であることに鑑みると、商品の形態のうち出所表示機能を発揮する商品等表示部分を明確に特定する必要があるものと解するのが相当である(知的財産高等裁判所平成17年(ネ)第10068号同17年7月20日判決参照)。
 これを本件についてみると、原告らは、主位的に、原告製品全体の形態が商品等表示に該当する旨主張して、商品の形態のうち出所表示機能を発揮するという部分を明確に特定していないことからすると、原告らの主位的主張は、上記において説示したところに照らし、主張自体失当というほかない。

 他方、原告らは、予備的に、原告製品の形態のうち、出所表示機能を発揮するという部分が本件形態的特徴であるという限度で特定して主張しているため、本件形態的特徴が商品等表示に該当するかどうか、以下検討する。

イ 本件形態的特徴の「商品等表示」該当性について
 前記アのとおり、商品の形態は、特定の出所を表示する二次的意味を有する場合があるものの、商標等とは異なり、本来的には商品の出所表示機能を有するものではないから、不競法2条1項1号又は2号の規定の趣旨に鑑みると、その形態が商標等と同程度に不競法による保護に値する出所表示機能を発揮するような特段の事情がない限り、商品等表示には該当しないというべきである。
 そうすると、商品の形態は、①客観的に他の同種商品とは異なる顕著な特徴(以下「特別顕著性」という。)を有しており、かつ、②特定の事業者によって長期間にわたり独占的に利用され、又は短期間であっても極めて強力な宣伝広告がされるなど、その形態を有する商品が特定の事業者の出所を表示するものとして周知であると認められる特段の事情がない限り、不競法2条1項1号又は2号にいう商品等表示に該当しないと解するのが相当である。
 そして、不競法2条1項1号又は2号にいう商品等表示に該当すると主張された表示が複数の商品形態を含む場合において、その一部の商品の形態が商品等表示に該当しないときであっても、上記表示が全体として商品等表示に該当するとして、上記一部の商品を販売等する行為まで不正競争に該当するとすれば、出所表示機能を発揮しない商品形態までをも保護することになるから、上記規定の趣旨に照らし、かえって事業者間の公正な競争を阻害するというべきである。のみならず、不競法2条1項1号又は2号により使用等が禁止される商品等表示は、登録商標とは異なり、公報等によって公開されるものではないから、その要件の該当性が不明確なものとなれば、表現、創作活動等の自由を大きく萎縮させるなど、社会経済の健全な発展を損なうおそれがあるというべきである。
 そうすると、不競法2条1項1号又は2号にいう商品等表示に該当すると主張された表示が複数の商品形態を含む場合において、その一部の商品形態が商品等表示に該当しないときは、上記表示は、全体として不競法2条1項1号又は2号にいう商品等表示に該当しないと解するのが相当である。
 これを本件についてみると、前記認定事実、検証の結果(検証調書参照)及び前記認定に係る子供用椅子の販売状況によれば、原告製品は、①左右一対の側木の2本脚であり、かつ、座面板及び足置板が左右一対の側木の間に床面と平行に固定されている点(特徴①)、②左右方向から見て、側木が床面から斜めに立ち上がっており、側木の下端が、脚木の前方先端の斜めに切断された端面でのみ結合されて直接床面に接していることによって、側木と脚木が約66度の鋭角による略L字型の形状を形成している点(特徴②)という本件形態的特徴のほか、③座面板と足置板を側木内側にはめ込んで固定することによって、これらの部材を直接固定し、その余の固定部材を省いた点(特徴③)、④前後方向からみて、座面板、足置板、横木及び背板と、側木が垂直に交わっており、側木内側の小さな略半円形状の溝部分を除き、直線的要素が強調されている点(特徴④)、⑤左右方向からみて、側木については、これを一直線とし、その上端の2隅を直角とし、脚木についても、これを一直線とし、その先端側と後端側の各2隅の角度を略左右対称とした点(特徴⑤)、⑥上下方向からみて、身体に接触する曲線状の背板並びにこれに対応する座面板及び足置板の後部波状部分を除き、座面板と足置板の前部を直線状の形状とし、その2隅を直角とした点(特徴⑥)に特徴があるものと認められる。
 そうすると、原告製品は、これらの各特徴を全て組み合わせることによって、身体に接触する背板部分及びこれに対応する座面板及び足置板の後部波状部分を除き、側木、脚木、横木、座面板、足置板及び背板という椅子を構成すべき最小限の要素を直線的に配置し、究極的にシンプルでシャープな印象を与える直線的構成美を空間上に形成したという限度において、形態としての特徴があるものと認められる。
 他方、本件形態的特徴は、図面又は写真で特定されるものではなく(意匠法6条、24条、意匠法施行規則3条各参照)、上記にいう特徴①及び特徴②を文字で特定されるにとどまるものである。そのため、本件形態的特徴は、それ自体複数の商品形態を含むところ、本件形態的特徴には、原告らが主張するとおり被告各製品が含まれるほか、側木が曲線を含む形態、座面板や足置板が曲線の形態その他の直線的構成美を欠く多種多様な形態を含むものであるから、原告製品が形成する直線的構成美を欠く非類似の商品形態を広範かつ多数含むものである。しかも、原告らの主張によれば、本件形態的特徴(特徴①及び特徴②)は、本件形態的特徴のみに限るというのではなく、例えば特徴③が付加された形態も、本件形態的特徴に含むというものであるから、本件形態的特徴は、座面板と足置板を固定するための複雑な部材を採用する形態その他の究極的にシンプルな構成美を欠く多種多様な形態を含むものである。
 したがって、本件形態的特徴は、そもそもその外延が極めて曖昧であり、商品形態が商品等表示として認められる場合を限定する不競法2条1項1号又は2号の上記趣旨目的に鑑みると、原告らは、原告製品のうち出所表示機能を発揮する商品等表示部分を明確に特定するものとはいえない。
 のみならず、原告らにおいて本件形態的特徴をそのまま具備すると主張する被告各製品についてみても、被告各製品は、座面板及び足置板を固定するために、支持部材、丸みを帯びた固定部材及び略円形のネジ部材を設ける構成を採用し、特徴③を有するものではない。そのため、被告各製品は、需要者に対し、椅子全体として安定して使いやすい印象を与えるものの、複雑な上記構成によって、究極的にシンプルな印象を与える直線的構成美を欠くものといえる。しかも、被告各製品は、前後方向からみると、背板中央に楕円形の大きな穴が形成されており、かつ、固定部材を側木にネジ止めするため、側木には円形状の穴が多数形成されていることからすると、被告各製品は、直線的でシャープな印象を明らかに損なうものである。さらに、被告各製品は、左右方向からみても、側木上部が床面と略垂直方向に折れ曲がっており、一直線の側木で構成される原告製品の直線的でシャープな印象とは、全体として大きく異なる印象を与えている。加えて、被告各製品は、上下方向からみても、座面板及び足置板の前部及び後部が端部から緩やかな曲線状に形成されており、椅子全体として柔らかい印象を与えるものであるから、座面板及び足置板の前部が直線で構成される原告製品の直線的でシャープな印象とは明らかに異なるものである。
 これらの印象の相違を踏まえると、被告各製品は、座面板及び足置板の固定において複数の部材を利用する点において、原告製品のような究極的にシンプルな印象を与えるものではなく、かつ、曲線的形状を数多く含む点において、原告製品のような直線的でシャープな印象を与えるものではない。
 したがって、直線的構成美を造形表現する原告製品の高いデザイン性に鑑みると、少なくとも被告各製品の形態は、究極的にシンプルでシャープな印象を与える直線的構成美を欠くものであるから、原告らの出所を表示するものであると認めることができないことは明らかである。
 以上によれば、本件形態的特徴に含まれる被告各製品の形態は、明らかに原告製品の商品等表示に該当しないことからすると、本件形態的特徴は、全体として不競法2条1項1号又は2号にいう商品等表示に該当しないと認めるのが相当である。

ウ これに対し、原告らは、本件形態的特徴が上記商品等表示に該当する旨主張するものの、本件形態的特徴は、原告製品が形成する直線的構成美を欠く広範かつ多数の非類似形態を含むものであるから、これを商品等表示に該当するとすれば、かえって公正な競争を阻害し、社会経済の健全な発展を損なうおそれがあることは、上記において説示したとおりである。したがって、原告らの主張は、採用することができない。
 その他上記において説示したところを踏まえると、原告製品と被告各製品の各形態における直線的構成美に関する顕著な相違に鑑みると、原告製品と被告各製品とは、需要者において出所の混同を生じさせるものと認めることはできず、類似するものともいえない。
(2)したがって、その余の点について判断するまでもなく、被告各製品の製造販売等は、不競法2条1項1号又は2号にいう不正競争に明らかに該当しないものと認められる。

2 著作権法上の争点について(争点5,6)
 著作物とは、思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものであり(著作権法2条1項1号)、美術の著作物には、美術工芸品が含まれる(同条2項)。そして、美術工芸品以外の実用目的の美術量産品であっても、実用目的に係る機能と分離して、それ自体独立して美術鑑賞の対象となる創作性を備えている場合には、美術の範囲に属するものを創作的に表現したものとして、著作物に該当すると解するのが相当である。
 これを本件についてみると、原告製品は、前記説示に係る特徴①ないし⑥を全て組み合わせることによって、身体に接触する背板部分並びにこれに対応する座面板及び足置板の後部波状部分を除き、側木、脚木、横木、座面板、足置板及び背板という椅子を構成すべき最小限の要素を直線的に配置し、究極的にシンプルでシャープな印象を与える直線的構成美を空間上に形成したところに、表現としての特徴があるものと認めることができる。
 他方、被告各製品は、前記において説示したとおり、座面板及び足置板を固定するために原告製品よりも複数の部材を利用する点において、原告製品のような究極的にシンプルな印象を与えるものではなく、かつ、曲線的形状を数多く含む点において、原告製品のような直線的でシャープな印象を与えるものではなく、原告製品が表現する直線的構成美を明らかに欠くものといえる。
 そうすると、原告製品と被告各製品は、その形態が表現するところにおいて明らかに異なるものといえる。そして、原告製品の上記直線的構成美は、究極的にシンプルであるがゆえに椅子の機能と密接不可分に関連し、当該機能といわばマージするといえるものの、仮に、これに著作物性を認める立場を採用した場合であっても、基本的にはデッドコピーの製品でない限り、製品に接する者が原告製品の細部に宿る上記直線的構成美を直接感得することはできず、まして、複雑かつ曲線的形状を数多く含む被告各製品に接する者が、原告製品の表現上の本質的な特徴を直接感得することができないことは明らかである。
 したがって、被告各製品の製造販売等は、明らかに原告製品を複製又は翻案するものではなく、原告らの主張を前提としても著作権侵害を構成するものとはいえない。

 これに対し、原告らは、被告各製品が本件形態的特徴をそのまま具備するものであり、被告各製品から原告製品の表現上の本質的な特徴を直接感得することができる旨主張する。しかしながら、原告製品の直線的構成美に関する造形表現は、可能な限り曲線形状を排したその細部に宿るものといえ、被告各製品が表現するところと明らかに異なるものであり、原告製品の表現上の本質的な特徴が、被告各製品の形態から直接感得することができないことは、上記において説示したとおりである。したがって、原告らの主張は、採用することができない。

解説/検討

不正競争防止法 第二条 この法律において「不正競争」とは、次に掲げるものをいう。
一 他人の商品等表示(人の業務に係る氏名、商号、商標、標章、商品の容器若しくは包装その他の商品又は営業を表示するものをいう。以下同じ。)として需要者の間に広く認識されているものと同一若しくは類似の商品等表示を使用し、又はその商品等表示を使用した商品を譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、輸入し、若しくは電気通信回線を通じて提供して、他人の商品又は営業と混同を生じさせる行為

二 自己の商品等表示として他人の著名な商品等表示と同一若しくは類似のものを使用し、又はその商品等表示を使用した商品を譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、輸入し、若しくは電気通信回線を通じて提供する行為

三 他人の商品の形態(当該商品の機能を確保するために不可欠な形態を除く。)を模倣した商品を譲渡し、貸し渡し、譲渡若しくは貸渡しのために展示し、輸出し、又は輸入する行為 1
・不競法2条1項1号又は2号の「商品等表示」に関して
 本件裁判例は、商品の形態は①特別顕著性と②周知性を有すると認められる特段の事情がない限り、「商品等表示」に該当しないとした。東京地裁平成29年8月31日判決(無印良品のユニットシェルフ事件)平成28年(ワ)第25472号においても、同様の要件が課されている。

 しかし、ユニットシェルフ事件では本件TRIPP TRAPP事件と異なり、原告のユニットシェルフは両要件を満たすと判断された。具体的には、顕著性要件について「原告商品形態①~⑥のうちの個別の各形態がありふれている形態であるか否かではなく,原告商品形態①~⑥の形態を組み合わせた原告商品形態がありふれた形態であるかを検討すべきである。」「原告商品形態が特定の機能等を得るために不可避的に採用せざるを得ない構成であるとの被告の主張は採用することができない。」として、「原告商品形態は客観的に明らかに他の同種商品と識別し得る顕著な特徴を有していた」と判示された。周知性要件に関しても、販売実績、長期の大規模な宣伝広告等から「不正競争防止法2条1項1号にいう商品等表示として需要者の間に広く認識されたものとなった」と判示された。

 一方、TRIPP TRAPP事件では、上記要件に続けて「商品等表示に該当すると主張された表示が複数の商品形態を含む場合において、その一部の商品形態が商品等表示に該当しないときは、上記表示は、全体として不競法2条1項1号又は2号にいう商品等表示に該当しない」と述べられている。(これは、東京地裁令和4年3月11日判決(ルブタン事件)平成31年(ワ)第11108号において、靴底の赤色が「商品等表示」に該当しないとされた際と同じ表現である。)そして、原告製品(TRIPP TRAPP)は「①から⑥の各特徴を全て組み合わせることによって、・・・形態としての特徴がある」とされ、原告が「商品等表示」に該当すると主張した本件形態的特徴①、②のみでは多種多様な形態を含むため「商品等表示」に該当しないと判断された。

 両判決の結論の差異は、商品の知名度そのものというよりも、原告が主張した形態的特徴の特定方法や、裁判所が特徴の組合せをどの程度具体的に把握したかに起因する可能性がある。両裁判例を比べると、ユニットシェルフ事件のように、(被告製品も該当する限度で)より多くの形態的特徴を明確に挙げた方が、各特徴の組み合わせということで顕著性が認められやすくなる可能性がある。本判決が、原告製品の特徴を①〜⑥の組合せによる「直線的構成美」に求めていることからすると、原告が①②に限定せず、①〜⑥を含む形態全体をより具体的に特定していた場合には、商品等表示性の判断に影響した可能性も考えられる。

・著作権侵害に関して
 本件裁判例は、原告製品の著作物性について明示的な結論判断を示さず、仮に著作物性を認め得るとしても、被告製品から原告製品の表現上の本質的特徴を直接感得することはできないとして、複製・翻案を否定した。TRIPP TRAPPに関しては過去に複数の訴訟が提起されたが、東京地裁平成22年11月18日判決(平成21(ワ)1193号。対アップリカ)2と東京地裁平成26年4月17日判決(平成25(ワ)8040号。対カトージ)3では著作物性が否定され、知財高裁平成27年4月14日判決(平成26(ネ)10063号。対カトージ控訴審)4では著作物性が肯定されて、意見が分かれていることを考慮したのではと思われる。
 ただ、応用美術の著作物性について、本件裁判例では「美術工芸品以外の実用目的の美術量産品であっても、実用目的に係る機能と分離して、それ自体独立して美術鑑賞の対象となる創作性を備えている場合には、美術の範囲に属するものを創作的に表現したものとして、著作物に該当すると解するのが相当である。」と判示され、対カトージ控訴審で示された応用美術の著作物性判断とは異なる方向性を示唆する規範表現が用いられている。


1日本国内において最初に販売された日から起算して三年を経過した商品については適用除外(不競法1第9条1項5号イ)
2「実用品のデザインであることは明らかであり,その外観において純粋美術や美術工芸品と同視し得るような美術性を備えていると認めることはできないから,著作権法による保護の対象とはならないというべきである。」
3「原告製品のデザインが思想又は感情を創作的に表現した著作物(著作権法2条1項1号)に当たるといえるためには,著作権法による保護と意匠法による保護との適切な調和を図る見地から,実用的な機能を離れて見た場合に,それが美的鑑賞の対象となり得るような美的創作性を備えていることを要すると解するのが相当である。」
4「応用美術に一律に適用すべきものとして,高い創作性の有無の判断基準を設定することは相当とはいえず,個別具体的に,作成者の個性が発揮されているか否かを検討すべきである。」

       

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