【商標の類否判断における称呼の類否】

 

投稿日:2026年8月21日

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著者:弁理士 大塚 啓生
*本記事は、筆者の個人的見解であり、当事務所を含め、筆者が所属する如何なる団体の見解も表示するものではありません。
*判決等に筆者が適宜下線や太字強調等を付している場合があります。


参照条文/キーワード/論点

商標の類否/役務の類否/商標法36条/同法37条

ポイント

※本件は、商標権侵害差止等請求による侵害訴訟である。原告は、被告が被告標章1~8(併せて単に「被告標章」ともいう。)を付した求人情報の提供等の役務に関する広告を内容とするパンフレットや取引書類等の頒布等、インターネット上の掲載等が本件商標権の侵害に当たるとし、商標法36条1項、2項、37条1号に基づきその差止めや廃棄、被告標章6をドメイン名として使用することの差止め等を求めた。

 

判決概要

裁判所 大阪地方裁判所第21民事部
判決言渡日 令和3年1月12日
事件番号 平成30年(ワ)第11672号
事件名 商標権侵害差止等請求事件
裁判長裁判官
裁判官
裁判官
谷 有恒
杉浦 一輝
島村 陽子
 

判決へのリンク(裁判所HPへ)

事案の概要

 下記の被告標章1~8の使用は、商標登録第4898960号「Re就活」(以下、「本件商標」という。)の商標権侵害に当たるとして、原告が商標権侵害差止等を請求したところ、被告標章1~8を使用する役務と本件商標の指定役務は類似し、被告標章1~8と本件商標は商標として類似するとして、商標権侵害を認めた。

被告標章1:「リシュ活」
被告標章2:「画像

被告標章3:「画像

被告標章4:「画像

被告標章5:「画像
被告標章6:「risyu-katsu.jp」
被告標章7:「twitter.com/risyukatsu」
被告標章8:「peac.jp/risyu-katsu」

争点

商標の類否
役務の類否

   

判旨

1.争点1(役務の類否)について
(1)証拠によれば,被告は,被告役務として,スマートフォン用アプリケーションで会員登録した者に対し,求人企業があらかじめ作成し,被告が内容を審査して登録した先輩社員の出身学校名,学部学科名,履修科目等,企業における仕事内容,企業名,本社所在地,企業のサイトへのリンク,採用情報へのリンクなどからなる「先輩社員情報」をレコメンド表示する役務を提供していることが認められる。
 上記役務は,求人企業のために,当該企業に興味を持ちそうな者に対し,当該企業の仕事の魅力等を伝達するものであるから,本件商標の指定役務である「広告」に該当し,求人企業の企業名や本社所在地等を表示するものであるから,同じく「求人情報の提供」にも該当する。
 また,証拠によれば,被告役務のオファーメッセージ送信サービスは,求人企業があらかじめ登録したメッセージがアプリケーションあるいはEメールで会員登録した者に送付されるものであり,被告は,この機能について,「企業からオファーが届く」,「履修履歴でオファーが届く逆求人アプリ」などと宣伝していることが認められるから,この機能は,アプリケーションを利用しようとする者にとっては,本件商標の指定役務である「職業のあっせん」,「求人情報の提供」に相当する役務を受けられるものと理解させるものであり,被告において現実にオファーメッセージの内容に関与していないとしても,外形的には上記指定役務に類似するものといえる。
(2)被告は,「リシュ活」のサービスは,企業にオファーメッセージの送信のためのプラットフォームを利用可能とするものであるので,指定役務区分第42類の「電子計算機用プログラムの提供」に区分され,学生にアプリ「リシュ活」を提供するものであるので,同じく第9類の「ダウンロード可能なコンピュータソフトウェア」に区分される役務であると主張する。
 しかしながら,それらの役務に該当するからといって,前記(1)で検討した「広告」,「職業のあっせん」,「求人情報の提供」に該当しないことにはならないし,被告自身も,「リシュ活」を商標登録出願するに際し,その指定役務を「広告」,「職業のあっせん」,「求人情報の提供」を含む役務区分第35類及び第41類のみとし,第9類及び第42類を指定役務としていない
(3)以上によれば,被告標章の使用の対象となる被告役務は,本件商標の指定役務と同一又は類似であるということができる。

2.争点2(本件商標と被告標章の類否)について
(1)取引の実情について
ア 原告の事業
(ア)本件商標は,前記前提事実のとおり,原告による第二新卒を中心とする20代の求職者を対象としたウェブサイト上での求人情報等の提供,求人企業の求人情報等のメール送信等に係る役務の名称として用いられており,新卒者を対象とする役務については別の名称で行っているから,本件商標に係る役務の需要者は,第二新卒を中心とする新卒以外の若年求職者の採用を希望して求人広告等を依頼しようとする求人企業と,第二新卒を中心とする新卒以外の若年求職者であると認められる
(イ)証拠によれば,求職者が本件商標に係る役務を利用するに当たり,ウェブサイト上の求人情報を閲覧するには特段の手続きは必要ないが,個別に求人情報メールを受信する等のサービスを受けるには,原告のウェブサイト上で氏名及びメールアドレスを登録して会員規約に同意して会員登録をする必要があることが認められる。また,証拠によれば,求人企業が本件商標に係る役務を利用するには,原告に対し,企画参加申込書を提出して,所定の金額に係る契約を締結する必要があることが認められる。

イ 被告役務
(ア)被告標章2ないし8は,前記前提事実のとおり,被告による大学等での履修履歴,成績等を登録した者を対象としたウェブサイト上での求人情報等の提供,スマートフォン用アプリケーション上での求人企業からのオファーメッセージの送受信等を内容とする被告役務に使用されている。
 証拠によれば,履修履歴データベースへの履修履歴,成績等の登録は,株式会社大学成績センターのウェブサイトにおいて行われており,同サイトでは,学生用であることが明示されていることが認められるから,被告役務は,基本的に大学等に在学中の者の利用が想定され,履修履歴データベースへの登録を前提とする被告役務の利用者も,大学等に在学中の者が想定されているものと認められる。
 そうすると,被告役務の需要者は,新卒の求職者を採用するために広告や勧誘メッセージの送信を希望する求人企業及び就職を希望する学生であると認められる
 原告は,近年,新卒求職者と20代の既卒求職者を含む転職希望者の採用の差異がなくなってきているから,本件商標に係る役務と被告役務の需要者が重複していると主張するが,証拠によれば,原告を含む新卒求職者と転職希望者双方に係る就職情報サイトを運営している企業であっても,新卒求職者対象のサイトと転職希望者対象のサイトを別サイトとし,別の名称で役務を提供していることが認められるから,少なくとも就職情報サイトに係る役務においては,新卒求職者と転職希望者は区別されているものと認められる。
(イ)証拠によれば,学生が被告役務を利用するには,メールアドレス,電話番号,現住所と学校情報を登録した上で,アプリをダウンロードすることが必要であり,それのみで先輩社員情報等の求人企業の広告やイベント情報などを閲覧することはできるが,先輩社員情報のレコメンド表示やオファーメッセージの受信には履修履歴データベースへの履修履歴(卒業予定年,学校名,学部名,学科名,講義名,成績評価,単位数)の登録が必要であることが認められる。また,証拠によれば,求人企業が被告役務を利用するには,オファーメッセージ数に応じた料金に係る企画(パック)を選択し,被告の加盟企業を通じて,履修履歴オファーサービス利用申請書を提出する必要があることが認められる。

(2)本件商標の外観,称呼,観念について
ア 外観
 本件商標は,欧文字の「Re」と漢字の「就活」という標準文字の文字列が横並びに配置されている。

イ 称呼
 「就活」という単語の前に配置された「Re」は,接頭語的なものと理解され,「リ」と発音されるものと認められるから,本件商標からは,「リシューカツ」という称呼が生じると認められる。
 被告は,本件商標から「アアルイイシューカツ」,「シューカツ」及び「レシューカツ」という称呼も生じると主張するが,「Re」は容易に発音できる文字であるから,全く発音せずに「シューカツ」のみ読むことが一般的とは考え難く,「Re」を「アアルイイ」や「レ」と発音することがないとはいえないものの,英語における接頭語としては,「リ」と発音するのが一般的と解される。

ウ 観念
 本件商標の文字列のうち「就活」は,就職活動の略語として一般に使用されており,「Re」は「就活」という完結した単語に前置されているので,英語における接頭語として,「あとに」,「再び」という観念を生じる。
 そうすると,本件商標からは,「通常の時期よりも後に行う就職活動」ないし「再び行う就職活動」の観念が生じる

エ 出所識別力
 被告は,本件商標が指定役務との関係で出所識別力がないか極めて弱いと主張するが,「Re 就活」は造語であり,辞書等にも登載されておらず,第三者が「再び行う就職活動」などの意味で使用している事実もなく,普通名詞として通用しているものとも認められないから,一定の出所識別力は有するものといえる。

(3)本件商標と被告標章1の類否
ア 被告標章1の外観,称呼,観念
(ア)被告標章1は,カタカナの「リシュ」と漢字の「活」という標準文字の文字列が横並びで配置されている。
(イ)被告標章1からは,「リシュカツ」という称呼が生じる。
 原告は,「リシュカツ」の発音のしにくさや「履修履歴活用」の略であることから「リシューカツ」という称呼も生じると主張するが,発音が特に困難であるとまでは認め難く,「履修履歴活用」の略であっても,文字列としては長音を含んでいないので,「リシューカツ」と発音することが一般的とまでは考え難く,通常は「リシュカツ」と発音されるものと認められる
(ウ)被告標章1は,造語であり,辞書等には登載されていない。また,証拠によれば,企業の採用面接において「履修履歴面接」あるいは「履修履歴活用面接」といった方法が行われることがあり,これを「リシュ面」と呼ぶことがあると認められるが,「リシュ」それ自体が「履修履歴」の略語として一般的に使用されていると認めるに足りる証拠はない。そうすると,被告標章1が「履修履歴の活用」の観念を生じさせるということはできない。また,「リシュ面」の用語を知っている者は,「リシュ」から面接方法に関する役務を想起することもあり得るが,「活」の語は,「活用」の略語としてではなく「活動」の略語として使用されることが多いから,その場合であっても,「履修履歴の活用」といった観念を生じるとは考えにくい。
 原告は,本件商標が周知のものであるから,被告標章1から「再度の就職活動」との観念が生じると主張するが,被告標章1の「リ」はカタカナであるから,「Re」と異なり,英語の接頭語としての観念が直ちに生じるものではないし,「リシュ活」を「リ」と「シュ活」に分断することも不自然であるから,「リシュ活」から「再度の就職活動」の観念が生じるとは考え難い。原告において本件商標に係る役務について多数の広告宣伝活動を行っているものの,原告の調査によっても,20代の男女のうち,3割弱しか本件商標を知らないというのであるから,本件商標が周知であることを理由に被告標章1から本件商標と同一の観念が生じるとまではいえない。
 以上によれば,被告標章1それ自体からは,特定の観念は生じないものといえる。

イ 本件商標と被告標章1の対比
(ア)前記のとおり,本件商標は,欧文字2文字と漢字2文字からなっており,カタカナ3文字と漢字1文字からなる被告標章1とは,語尾の「活」の一文字のみが共通しているに過ぎず,欧文字とカタカナから受ける印象も相応に異なるから,外観は同一ではなく,類似するものとも認め難い
 また,被告標章1からは特定の観念を生じないため,観念の点において,両者が同一又は類似ということはできない
 しかしながら,称呼においては,両者は長音の有無が異なるに過ぎず,長音は他の明確な発音と比べて比較的印象に残りにくいことから,離隔的に観察した場合,同一のものと誤認しやすく,極めて類似しているといえる。被告は,アクセントが異なると主張するが,本件商標も被告標章1も造語であるため,固定したアクセントがあるわけではなく,時と場所を異にしてもアクセントの違いで区別できるほど,印象が異なるものとは認め難い。
(イ)取引の実情を踏まえて検討するに,需要者である求人企業においては,前記認定のとおり,本件商標に係る役務についても,被告役務についても,役務利用に当たっては文書による申込みを要し,役務のプランを選択し,相応の料金を支払うものであり,新規に正社員を採用するという企業にとって日常の営業活動とは異なる重要な活動の一環として行われる取引であるから,求人に係る媒体の事業者が多数ある中で,どの程度の経費を投じていかなる媒体でいかなる広告や勧誘を行うかは,各事業者の役務内容等を考慮して慎重に検討するものと考えられ,外観や観念が類似しない本件商標と被告標章1について,需要者である求人企業が,称呼の類似性により誤認混同するおそれがあるとは認め難い
 しかしながら,求職者についてみると,前記認定のとおり,本件商標に係る役務も被告役務も,利用のための会員登録は簡易であり,無料で利用できる上,証拠によれば,多数の他の求人情報ウェブサイトでも会員登録無料をうたっており,気軽に利用できるように簡単に会員登録ができることを宣伝しているところ,情報を得て就職先の選択肢を広げる意味で複数のサイトに会員登録する動機がある一方で,複数のサイトに会員登録することに何らの制約もなく,現実に多数の大学生が複数の就職情報サイトに登録していることが認められる。そうすると,求職者については,必ずしも役務内容を事前に精査して比較検討するのではなく,会員登録が無料で簡易であるため,役務の名称を見てとりあえず会員登録してみることがあるものと考えられる。
 そして,本件商標も被告標章1も短く平易な文字列であり,発音も容易であること,本件商標に係る役務や被告役務はインターネット上で提供されているところ,インターネット上のウェブサイトやアプリケーションにアクセスする方法としては,検索エンジン等を利用した文字列による検索が一般的であり,正確な表記ではなく,称呼に基づくひらがなやカタカナでの検索も一般に行われており,ウェブサイトや検索エンジン側においてもあいまいな表記による検索にも対応できるようにしていることが広く知られていることからすれば,需要者である求職者は,外観よりも称呼をより強く記憶し,称呼によって役務の利用に至ることが多いものというべきである。
 そうすると,求職者が需要者に含まれるという取引の実情にかんがみれば,需要者に与える印象や記憶においては,本件商標と被告標章1とでは,前記外観の差異よりも,称呼の類似性の影響が大きく,被告標章1は特定の観念を生じず,観念の点から称呼の類似性の影響を覆すほどの印象を受けるものではないから,前述のとおり必ずしも事前に精査の上会員登録するわけではない学生等の求職者において,被告標章1を本件商標に係る役務の名称と誤認混同したり,本件商標に係る役務と被告役務とが,同一の主体により提供されるものと誤信するおそれがあると認められる
(ウ)被告は,ウェブサイトでの役務の提供においては,役務主体の識別はウェブサイトの上部等の目立つところに付されたロゴにより行われるのが通常であると主張するが,前記のとおり,インターネット上においても,文字列で構成された商標については,称呼で記憶してアクセスすることが多いのであり,称呼の重要性が低いものとはいえない。また,被告は,求職者がサービス内容を確認して会員規約に同意し,所定の情報を入力して会員登録するまでの過程で多くの画面に接することにより視覚で役務の内容や運営主体を理解すると主張するが,証拠によれば,被告は,ウェブサイト上で,被告役務につき「まずは会員登録してください。メールアドレスと属性の登録のみで約1分で完了します。」などと記載し,会員登録フォームのページには被告役務の内容を説明する特段の記載はなく,メールアドレスや学校名等の登録のみで会員登録が完了し,会員規約はスクロールしなければ内容を確認できないものであることが認められる。他方,被告役務の会員登録に当たって,学生に役務の内容や運営主体を理解させ,本件商標に係る役務との誤認混同を生じさせないようにする識別表示については,存するとは認められない。

(4)本件商標と被告標章2ないし5の類否
(中略)
イ 本件商標と被告標章2ないし5の対比
 前記認定のとおり,標準文字からなる被告標章1は,本件商標と類似するところ,被告標章2は,標準文字ではないものの,太い直線からなる字形はありふれたものであり,黒色とピンク色からなることもそれほど珍しい配色とはいえないから,外観において被告標章1と大きく異なる印象を与えるものではない。そうすると,取引の実情にかんがみれば,需要者において,称呼を同じくする被告標章2も本件商標に係る役務の名称と誤認混同するおそれがあると認められるから,被告標章2は本件商標に類似するというべきである。
 また,本件図柄は,虫眼鏡等のありふれた物品を重ねた図案であって,特定の意味を観念できないものであり,平易な文字列である「リシュ活」と比べて極めて弱い印象を与えるに過ぎないから,被告標章3及び5も,同様に本件商標に類似するものと認められる。
 さらに,被告標章4の「CONSORTIUM」の文字列は,「リシュ活」の文字列よりも個々の文字が小さく,「協会」や「組合」といった意味合いで理解されるから,「リシュ活」部分が役務の主体を識別する部分として認識され,記憶されると考えられるから,被告標章3及び5と同様に本件商標に類似するものと認められる。

(5)本件商標と被告標章6ないし8の類否
(中略)
イ 本件商標と被告標章6ないし8の対比
 被告標章6ないし8は,欧文字のみで構成されており,先頭が大文字である本件商標とはすべての文字が一致しないから,外観が同一又は類似とはいえない。
 他方,被告標章6の「.jp」は,株式会社日本レジストリサービスの管理するドメイン名であることを示すものであり,被告標章7の「twitter.com/」及び被告標章8の「peac.jp/」はドメイン名であって,「/」以下の文字列とは区別して認識されるから,いずれも「risyu-katsu」ないし「risyukatsu」より生ずる称呼をもって,各標章の称呼と認識されることになる。
 そうすると,被告標章6ないし8は,外観,観念において本件商標と同一又は類似とはいえないが,称呼においては本件商標と類似しており,前記の取引の実情にかんがみても,被告標章1ないし5と同様,需要者において,本件商標に係る役務の名称と誤認混同するおそれがあると認められる

(6)まとめ
 前記1及び2の(1)ないし(5)で検討したところによれば,被告は,本件商標の指定役務と同一又は類似の範囲にある被告役務に,称呼において本件商標と類似する被告標章を使用しており,需要者に誤認混同を生じさせるおそれがあると認められるから,被告は本件商標権を侵害するものというべきである。
 なお,被告標章1と同一の商標(標準文字)が商標登録査定されたことについて,被告は,被告標章1が本件商標に類似しないことの理由としてのみ援用している。

 

解説/検討

(1)「Re就活」と「リシュ活」の類否について
 特許庁においては、「Re就活」と「リシュ活」は非類似と判断されている。被告は標準文字で「リシュ活」を出願したところ、審査において本件商標を引用して拒絶されているが(原告から情報提供あり)、意見書を提出して登録が認められている(登録第6179363号)。その後、異議申立てもされているが、審判においても非類似と判断されている(異議2019-900352)。
 本判決と異なるのは称呼の類否の判断である。異議では称呼について下記のように説示し、「Re就活」と「リシュ活」は称呼上非類似と判断している。

・引用商標は、「就活」の文字の語頭に「Re」の欧文字を付した構成からなるところ、語頭に「re」を有する親しまれた英単語である「reaction(リアクション)」、「reform(リフォーム)」、「reset(リセット)」、「regain(リゲイン)」が、「re」の直後の音節にアクセントを置いて発音されること、及び、「就活」の文字は「シューカツ」と一気に称呼される親しまれた略語であることに照らすと、その全体から生ずる「リシューカツ」の称呼は、第1音節の「リ」の音を明瞭に発音した上で、第2音節の「シュー」の音にアクセントを置いて「シューカツ」と一気に称呼される
・当該「シュー」の音は、長音を伴うために、より強調して聴取される
・本件商標から生じる「リシュカツ」の称呼は、短く平坦に称呼されるものである。
・これらの差異が、5音又は4音という短い音構成からなる両称呼全体に及ぼす影響は決して小さいものとはいい難く、両商標をそれぞれ一連に称呼するときは、語調、語感が相違し、互いに聴き誤るおそれはなく、十分に聴別し得るものである。

 実務的には、異議における特許庁の判断のほうが妥当のように思えるが、審判と明暗を分けたのは、裁判所は単に称呼を対比するだけでなく、本件役務の提供を受ける需要者の注意力に踏み込んで判断した点である。裁判所においては、需要者を求人企業と求職者に分けたうえで、求職者については、本件役務の提供を受けるための会員登録が無料かつ簡易である等の理由により慎重に判断することはなく、また、インターネット上の検索は称呼に基づくひらがなやカタカナでの検索も一般に行われ、正確な表記に限らずあいまいな表記による検索にも対応できることから、外観よりも称呼が重視されるとして、称呼が類似すると判断している。
 裁判所の需要者の認定を前提とすればロジックとして大きな誤りはないように思えるが、需要者の注意力が高くはないことと、称呼が重視されることの論理はやや飛躍がある気もする。

(2)役務の類否について
 役務が類似するという裁判所の判断は概ね理解できるが、被告の「リシュ活」の出願における指定役務が参酌されている点は興味深い。あくまで被告役務が42類のプログラムの提供に過ぎないという被告の主張に対して判示したものであるが、出願に係る指定商品/役務と矛盾するような主張は認められ難いということであろう。

(3)被告標章6~8の使用は商標権侵害か
 ドメイン名として認識される被告標章6~8についても商標権侵害が認められており、違和感を覚えるかもしれないが、ドメイン名として認識されるものであっても商品・役務に関連付けて商標的に使用した場合には商標権侵害は成立し得る。過去には、「Carrerjapan.jp」(大阪地裁平成14年(ワ)第13569号)や「mon-chouchou.com」(平成23年(ネ)第2238号等)の使用について商標権侵害が認められている。本件についても、被告ウェブサイト内の組織概要のウェブページや被告役務の「リシュ活」サービス企画書における使用が商標的使用であると判断されたものと思われる。

 

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