【商標法第4条1項15号の判断における「類似性」】
投稿日:2026年6月29日 |
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著者:弁理士 大塚 啓生
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参照条文/キーワード/論点 |
出所の混同/商標法第4条1項15号 |
ポイント
本件は、商標登録無効審判の無効審決に対する取消訴訟である。無効審判は、商標法第4条1項7号、10号、11号、15号及び19号違反を理由として請求されたが、商標法第4条1項15号にのみ該当すると判断されたため、本件の争点は商標法第4条1項15号の該当性に絞られた。 |
判決概要 |
| 裁判所 | 知的財産高等裁判所第1部 |
| 判決言渡日 | 令和3年4月14日 |
| 事件番号 | 令和2年(行ケ)第10107号 |
| 事件名 | 審決取消請求事件 |
| 裁判長裁判官
裁判官 裁判官 |
大鷹 一郎
小林 康彦 高橋 彩 |
事案の概要
本件は、被告が請求した商標登録無効審判において、商標登録第5556223号「ざんまい」(以下、「本件商標」という。)と商標登録第5003675「
」(以下、「引用商標1」という。)及び商標登録第5511447号「すしざんまい」(以下、「引用商標2」という。)は出所の混同が生ずるおそれがあるとして無効審決がされたため原告が上訴したところ、裁判所においても商標法4条1項15号に該当すると判断された。
争点
出所の混同
争点に関する当事者の主張
イ 本件商標と引用商標1及び2は,外観については,「すし」の文字等の有無や書体の差異から互いに区別し得ること,称呼については,本件商標からは,「ザンマイ」の称呼を生じ,引用商標からは,「スシザンマイ」の称呼が生じるものであり,両者は,語頭において「スシ」の音の有無という顕著な差異を有するから,称呼において明瞭に聴別し得ること,観念については,本件商標からは,「一心不乱に事をするさま」の観念を生じるのに対し,引用商標からは,「一心不乱にすしを食する」ほどの観念を生じ,両者は,区別できることからすると,外観,称呼及び観念のいずれにおいても明らかに異なるものといえるから,これらを同一又は類似の商品について使用する場合であっても,互いに誤認,混同するおそれのない非類似の商標というべきである。
ウ ①本件商標と引用商標1及び2は,非類似の商標ではあるものの,いずれも,外観において平仮名「ざんまい」の文字を横書きした構成である点及び称呼において「ザンマイ」を含む点を共通にするものであるから,ある程度の類似性を有すること,
②引用商標1及び2は,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,被告の業務に係る「すし」を表す商標として,需要者間に広く認識されていたということはできないものの,被告の業務に係る「すしを主とする飲食物の提供」を表す商標として,需要者間に広く認識されていたというのが相当であり,引用商標1及び2の周知著名性の程度は高いこと,
③引用商標1の要部である「すしざんまい」及び引用商標2からは,既成語の「すし」と「一心不乱に事をするさま」の意味を有する「ざんまい(三昧)」の文字を結合させたものと理解され,「一心不乱にすしを食するさま」ほどの観念を生じるものであるから,独創性が高いものとはいえないこと,
④本件商標の指定商品「すし」と引用商標2の指定商品「すし,すしを主とするべんとう」とは,テイクアウト専門のすし店やスーパー等といった販売部門,流通経路を共通にするものであるから,両者はその性質,用途又は目的において密接な関連性を有し,その需要者層も共通にし,また,本件商標の指定商品「すし」は,引用商標1及び2の指定役務である「すしを主とする飲食物の提供」における料理の内容(すし)であるうえに,「すしを主とする飲食物の提供」を行う,いわゆる回転ずしや着席スタイルのすし店等でも,テイクアウト用として一般に取引,販売されるものであるから,「すし」と「すしを主とする飲食物の提供」とは,その性質,用途又は目的において密接な関連性を有し,その需要者層も一部共通にすること,上記①ないし④の本件商標と引用商標1及び2類似性の程度,引用商標1及び2の周知著名性及び独創性,本件商標の指定商品と引用商標1及び2の指定商品及び指定役務との間の性質,用途又は目的における関連性の程度並びに需要者の共通性その他取引の実情を総合的に判断すると,本件商標は,その登録出願時及び登録査定時において,商標権者がこれをその指定商品「すし」に使用した場合,これに接する需要者が引用商標1及び2を想起,連想し,当該商品を被告あるいは被告と経済的又は組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように,その出所について混同を生ずるおそれがある。
判旨
1.認定事実
前記第2の1の事実と証拠及び弁論の全趣旨を総合すれば,以下の事実が認められる。
(1)被告によるすしチェーンの店舗展開等
ア(ア)被告は,昭和60年10月22日に設立された,飲食店の経営等を目的とする株式会社である。被告は,平成13年4月,東京都中央区築地に「すしざんまい本店」の名称のすし店を開店した。
その後,被告は,「すしざんまい」の文字の後に「○○店」等を付したすし店(以下「すしざんまい」チェーン店」という。)を店舗展開し,平成24年8月までに,東京都に30店舗(「すしざんまい別館」,「すしざんまい本陣」,「すしざんまい奥の院」,「すしざんまい錦糸町店」,「すしざんまい有楽町店」,「すしざんまい六本木店」等),福岡県に3店舗(「すしざんまい天神店」等),北海道に2店舗(「すしざんまい小樽店」等),神奈川県に2店舗(「すしざんまい横浜中華街東門店」等),栃木県に1店舗(「すしざんまい宇都宮駅店」)を開店し,更に同年12月までに大阪府(「すしざんまい道頓堀店」)及び福岡市(「すしざんまい博多駅前店」)に各1店舗を開店し,同月時点の「すしざんまい」チェーン店の店舗数は合計40店舗であった。(中略)
(2)被告の売上高等
ア 平成25年5月22日付け「日経MJ(流通新聞)」に,「第39回飲食業12年度ランキング」の売上高経常利益率ランキングにおいて,「東京・築地市場の初セリで,青森県大間産のマグロを過去最高額の1匹1億5000万円余りで落札した,「すしざんまい」の喜代村(東京・中央)。店舗売上高伸び率ランキングで昨年の21位から6位に躍進し,経常利益率でも5位に入った。」などの記事が掲載された。
(中略)
(3)テレビ,新聞及び雑誌による報道について
ア テレビ
(ア)「すしざんまい」チェーン店は,平成14年5月31日から平成24年9月3日までの間,下記のとおり,報道番組,ワイドショー,情報番組,バラエティー番組などの多種多様なテレビ番組で,取り上げられ,報道された。
(中略)
(4)原告について
原告は,寿司の製造,販売等を目的とする株式会社である。
原告は,九州地区等において,電話又はウェブサイトで注文を受けて,寿司を配達する形態の宅配寿司店として,「寿司ざんまい博多店」,「寿司ざんまい古賀」,「寿司ざんまい宇部店」等を出店し,宅配寿司チェーンの店舗展開を行っている。
原告は,自己の運営するウェブサイトにおいて,上記宅配寿司チェーンの名称として,「寿司ざんまい」の表示をしている。
2.引用商標1及び2に係る周知著名性について
(1)需要者について
ア 引用商標1は,別紙2記載のとおり,上段に筆文字風で記載された「つきじ喜代村」の文字を,中段に大きく筆文字風で記載された「すしざんまい」の文字を,下段に小さくゴシック体で記載された「SUSHIZANMAI」の文字を3段に配した構成からなる結合商標である。
また,引用商標2は,「すしざんまい」の標準文字を表してなる商標である。
そして,「すし」は,一般的な食品であることに照らすと,引用商標1及び2の指定商品である第30類「すし」と指定役務である第43類「すしを主とする飲食物の提供」における需要者は,いずれも一般消費者であり,共通するものと認められる。
イ この点に関し原告は,「すしを主とする飲食物の提供」にいう「すし」は,握りずし,巻き寿司及びちらし寿司の3種類(握りずし等3種類)に限られ,それら以外の多種多様な「すし」について提供がされている事実は存在せず,一般的な「すし」の提供は対価が高額であるから,その需要者は,「非大衆」の消費者であるのに対し,「すし」の販売にいう「すし」には,握りずし等3種類以外の多種多様なすしも含まれ,その需要者は「大衆」の消費者であるから,本件商標の指定商品「すし」と引用商標1及び2の指定役務「すしを主とする飲食物の提供」とは,需要者が異なる旨主張する。
しかしながら,「すしを主とする飲食物の提供」の提供対象の「すし」が握りずし,巻き寿司及びちらし寿司の3種類に限定されると解すべき合理的な理由はない。
次に,「すしを主とする飲食物の提供」について,その提供の場所を特に限定する記載はないから,提供の場所が「すし店」の店舗にのみ限定されるものではないのみならず,これを「すし店」についてみても,「すし店」には,比較的低価格で「すし」を提供する回転ずしの店舗も含まれることに照らすと,すし店の店舗で提供される「すし」がすし店以外で販売又は提供される「すし」よりも,高額であるとは一概にいえない。
さらに,すし店を利用するのは,「非大衆」であって,「大衆」が需要者に含まれないものとは到底いえない。
したがって,原告の上記主張は,採用することができない。
(2)周知著名性について
ア 前記1の認定事実を総合すれば,①被告は,平成13年4月,「すしざんまい本店」の名称のすし店を開店した後,東京都,北海道,栃木県,福岡県,神奈川県,大阪府において,すしチェーンである「すしざんまい」チェーン店を店舗展開し,平成24年12月までに,店舗数が39店舗に及んでおり,同年の売上高見込み及びシェアは,全国のすし店において,いずれも第1位であり,また,「日経MJ(流通新聞)」が調査した「第39回飲食業12年度ランキング」の売上高経常利益率ランキングにおいて,被告は,店舗売上高伸び率ランキングで前年の21位から6位に躍進し,経常利益率でも5位に入ったこと,②被告は,「すしざんまい」チェーン店の各店舗において,引用商標1を表示した看板や「すしざんまい」の文字を縦書きして表示した行灯を使用し,自己の運営するウェブサイトにおいて,引用商標1を表示した上で,「すしざんまい」チェーン店の各店舗の店舗紹介を掲載していたこと,③テレビ,新聞及び雑誌において,被告が,平成24年1月の東京・築地市場の初競りでクロマグロを過去最高値の1匹5649万円で競り落としたこと,「すしざんまい」チェーン店が24時間営業のすし店であること,マグロの解体ショーを行っていることなどの話題について,全国的規模で,多数回にわたり紹介され,その紹介の際には,「すしざんまい」の文字が表示され,また,引用商標1を付した看板の映像や写真も掲載されたことが認められる。
上記認定事実によれば,「すしざんまい」の表示は,本件商標の登録出願時(同年9月13日)及び登録査定時(同年12月26日)において,被告が店舗展開する「すしざんまい」チェーン店の名称として,「すしを主とする飲食物の提供」の役務の需要者である一般消費者の間に広く認識され,被告の業務に係る上記役務を表示するものとして,著名であったものと認められる。
イ これに対し原告は,①引用商標1及び2に係る周知著名性の判断に当たっては,被告がどれだけの店舗でどのような営業をしているかが重要であるところ,東京都内における被告の店舗数が多い3つの区(中央区,港区及び江東区)における被告の店舗数の占める割合は非常に小さい,②被告は,引用商標2については,テレビコマーシャル等で自ら宣伝しておらず,被告について話題性を有する報道がされるとしても,例えば,初競りでの落札や24時間営業の寿司屋といった報道は,初競りは年に一回であって,その報道は一過性のものであり,24時間営業は他業種特にコンビニで行われているから,このような報道によって,引用商標1が,被告の業務に係る「すしを主とする飲食物の提供」を表す商標として周知著名になることはない,③引用商標2は,第三者であるマスコミが,テレビ番組や新聞,雑誌で被告のすし店を紹介するときに使用したものであり,被告自身が使用したものではないから,商標としての使用と評価されないなどとして,引用商標1及び2に係る「すしざんまい」の表示は,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,被告の業務に係る「すしを主とする飲食物の提供」を表す商標として,需要者の間に広く認識されていたものとはいえない旨主張する。
しかしながら,引用商標1及び2に係る「すしざんまい」の表示が,被告の業務に係る「すしを主とする飲食物の提供」を表す商標として,需要者の間に広く認識されていたかどうかは,被告による引用商標1及び2の使用態様,使用状況を基礎付ける「すしざんまい」チェーン店の店舗数,売上高,需要者の認識の契機となり得る「すしざんまい」チェーン店に関するテレビ,新聞及び雑誌の報道内容等を総合的に考慮して判断すべきものであって,中央区,港区及び江東区といった限定された地域における被告の店舗数の占める割合のみを重視するのは妥当でないし,また,被告自らが行った使用や広告宣伝のみに考慮事情を限定すべき合理性はない。
一方で,引用商標1及び「すしざんまい」の表示を伴う全国的規模の多数回にわたる報道が,被告の業務に係る役務を表示するものとしての「すしざんまい」の表示の著名性の獲得に大きな貢献をしたことは明らかである。
したがって,原告の上記主張は,採用することができない。
3.本件商標の商標法4条1項15号該当性について
(1)混同を生ずるおそれの有無について
ア(ア)本件商標は,別紙1記載のとおり,「ざんまい」の文字を横書きに書してなる商標である。本件商標から「ザンマイ」の称呼が生じる。
「ざんまい」の語は,「一心不乱に事をするさま。」(広辞苑第七版)の意味を有するから,本件商標から,このような意味合いの観念を生じる。
また,前記2.(2)ア認定のとおり,「すしざんまい」の表示は,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,被告が店舗展開する「すしざんまい」チェーン店の名称として,需要者である一般消費者の間に広く認識され,被告の業務に係る「すしを主とする飲食物の提供」を表示するものとして,著名であったこと,「すし」に関連する登録商標の使用においては,「すし」又は「寿司」の表示を登録商標の前後に付加して使用することが普通に行われており,現に,原告においても,本件商標の「ざんまい」の前に「寿司」の文字を付加した「寿司ざんまい」の商標を使用していること(前記1.(4))に鑑みると,本件商標が指定商品「すし」に使用されたときは,被告が店舗展開する「すしざんまい」チェーン店を想起し,その名称としての「すしざんまい」の観念をも生じるものと認めるのが相当である。
(イ)引用商標1は,別紙2記載のとおり,上段に筆文字風で記載された「つきじ喜代村」の文字を,中段に大きく筆文字風で記載された「すしざんまい」の文字を,下段に小さくゴシック体で記載された「SUSHIZANMAI」の文字を3段に配した構成からなる結合商標であり,このうち,「すしざんまい」の文字は,引用商標1の中央に他の文字よりも大きく,かつ,太く記載されており,「すし」の部分は,「し」が「す」の左下に位置し,縦書きのように記載されている。
そうすると,引用商標1を構成する「つきじ喜代村」の文字部分,「すしざんまい」の文字部分及び「SUSHIZANMAI」の文字部分は,外観上,それぞれが分離して観察することが取引上不自然と思われるほど不可分的に結合しているものとはいえない。
そして,「すしざんまい」の文字部分の上記構成態様に照らすと,引用商標1の構成中の「すしざんまい」の文字部分は,取引者,需要者に対し,「すしを主とする飲食物の提供」の役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められるから,要部として抽出できるものと認めるのが相当である。
しかるところ,引用商標1の要部である「すしざんまい」の文字部分及び「すしざんまい」の標準文字からなる引用商標2から,いずれも「スシザンマイ」の称呼が生じる。
また,前記2.(2)ア認定のとおり,「すしざんまい」の表示は,本件商標の登録出願時及び登録査定時においては,被告が店舗展開する「すしざんまい」チェーン店の名称として,需要者である一般消費者の間に広く認識され,被告の業務に係る「すしを主とする飲食物の提供」を表示するものとして,著名であったことに鑑みると,引用商標1の要部である「すしざんまい」の文字部分及び引用商標2から,被告が店舗展開する「すしざんまい」チェーン店を想起し,その名称としての「すしざんまい」の観念を生じるものと認めるのが相当である。
(ウ)前記(ア)及び(イ)によれば,本件商標と引用商標1及び2は,外観及び称呼が異なるが,観念においては,本件商標が指定商品「すし」に使用されたときは,本件商標から被告が店舗展開する「すしざんまい」チェーン店を想起し,その名称としての「すしざんまい」の観念をも生じるのに対し,引用商標1の要部である「すしざんまい」の文字部分及び引用商標2からも,被告が店舗展開する「すしざんまい」チェーン店を想起し,その名称としての「すしざんまい」の観念を生じる点で共通するものと認められる。
イ 以上のとおり,①「すしざんまい」の表示は,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,被告が店舗展開する「すしざんまい」チェーン店の名称として,需要者である一般消費者の間に広く認識され,被告の業務に係る「すしを主とする飲食物の提供」を表示するものとして,著名であったこと(前記2.(2)ア),②本件商標と引用商標1の要部である「すしざんまい」の文字部分及び引用商標2から,いずれも被告が店舗展開する「すしざんまい」チェーン店を想起し,その名称としての「すしざんまい」の観念を生じる点で共通すること(前記ア(ウ)),③本件商標の指定商品である「すし」と被告の業務に係る役務である「すしを主とする飲食物の提供」は,需要者が一般消費者である点で共通し(前記2.(1)ア),販売の対象となる商品又は提供の対象となる商品がいずれも「すし」である点で共通することを総合考慮すると,本件商標をその指定商品の「すし」に使用するときは,その取引者,需要者において,被告が店舗展開する「すしざんまい」チェーン店の名称として著名な「すしざんまい」の表示を想起し,当該商品を被告又は被告と緊密な営業上の関係又は同一の表示による商品化事業を営むグループに属する関係にある営業主の業務に係る商品であるかのように,その出所について混同を生ずるおそれがあるものと認められる。
したがって,本件商標は,引用商標1及び2との関係において,商標法4条1項15号に該当するものと認められる。
これと同旨の本件審決の判断に誤りはない。
解説/検討
商標法第4条1項15号の該当性について、審査基準では、例えば下記の事実を総合勘案して判断するとされている。
②その他人の標章の周知度
③その他人の標章が造語よりなるものであるか、又は構成上顕著な特徴を有するものであるか
④その他人の標章がハウスマークであるか
⑤企業における多角経営の可能性
⑥商品間、役務間又は商品と役務間の関連性
⑦商品等の需要者の共通性その他取引の実情
商標法第4条1項11号と15号の両方について争われる場合、11号で非類似と判断されると芋づる式に15号も非該当と判断されるケースが少なくないが、15号で求められているのは厳格な商標の類否ではなく、商標の「類似性の程度」であるため、本件商標と引用商標1及び2が非類似であるとしつつも15号に該当すると判断すること自体は適当である。
この点、審判と裁判所で類似性の認定が異なっていることは興味深い。審決では、外観・称呼・観念が非類似としつつも「ざんまい」の文字及び「ザンマイ」の称呼を共通にすることを理由にある程度の類似性を認めたのに対し、裁判所では、外観及び称呼は非類似としながらも、本件商標が「すし」に使用された場合は被告の「すしざんまい」チェーン店を想起し、その名称としての「すしざんまい」の観念をも生じるとして、観念の共通性をもって類似性があると判断している。
裁判所がこのように判示した理由としては、原告が「ざんまい」の前に「寿司」の文字を付加した「寿司ざんまい」の商標を使用していたことが影響しているようである。15号の判断において本件商標の使用実情を考慮することにはやや疑問があるが、原告の使用態様を見ると仕方がないようにも思える。裁判所では、「すし」に関しては「すし」又は「寿司」の表示を商標の前後に付加して使用することが普通に行われているとしており、原告の使用が個別具体的な取引の実情ではなく、一般的な取引の実情であることを前提としている。一般的な取引の実情であることを前提とすれば、審決のように単に「ざんまい」が共通することをもって類似性を認めるよりは合理的な理由といえる。
なお、引用商標1は、審査において「
」(第4361034号)を引用して商標法第4条1項11号で拒絶されており、拒絶査定不服審判において、「その構成中の『すしざんまい』及び『SUSHIZANMAI』の文字部分は、自他商品・役務の識別力を有しないか極めて弱いものであるというのが自然であり、それ自体が独立して自他商品・役務の識別標識としての機能を果たし得るものといえず、本願商標のかかる構成にあっては、自他商品又は役務の識別標識としての要部は『つきじ喜代村』の文字部分というべきであるから、本願商標からは『スシザンマイ』のみの称呼は生じない」と判断されて登録が認められた経緯がある(不服2011-24834)。本件の判断と矛盾するようにも思えるが、現在では「すしざんまい」が被告の業務を表す商標として周知・著名になっていることに鑑みれば妥当ともいえ、被告の長年の営業努力が実を結んだ判決といえよう。