【商品の包装容器の形状からなる位置商標について、商標法3条1項3号該当性及び同条2項の適用が否定された事例】

 

投稿日:2026年9月4日

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著者:弁護士 盛田 真智子
*本記事は、筆者の個人的見解であり、当事務所を含め、筆者が所属する如何なる団体の見解も表示するものではありません。
*判決等に筆者が適宜下線や太字強調等を付している場合があります。


参照条文/キーワード/論点

商標法第3条第1項第3号/商標法第3条第2項/位置商標/立体的形状からなる位置商標/自他商品識別力

ポイント

※本判決は、焼き肉のたれの包装容器に付された連続する縦長の菱形形状からなる位置商標について、同形状が商品の機能又は美観に資するものとして取引上普通に採択・使用されており、需要者及び取引者において採用すると予測し得る範囲を超えたものとはいえないとして、商標法3条1項3号該当性を認めた。
※本願商標が使用された商品の販売実績や宣伝広告実績は相当程度に及んでいたものの、商品に付された「エバラ」や「黄金の味」等のラベルが強い出所識別機能を有しており、本願商標を構成する立体的形状自体が出所を識別させる標識として認識されているとは認められないとして、同条2項の適用も否定した。
※本判決は、立体的形状からなる位置商標について、使用による識別力を認めるためには、商品の販売数量や広告実績だけでなく、当該位置商標を構成する形状自体が独立して出所識別標識として認識されていることを具体的に立証する必要があることを示した。また、本件アンケートについて、比較対象の選択が適切でなく、容器全体の形状による識別と本願商標を構成する立体的形状による識別とを区別できないことを理由に、その結果を重視しなかった。

 

判決概要

裁判所 知的財産高等裁判所第3部
判決言渡日 令和2年12月15日
事件番号 令和2年(行ケ)第10076号
事件名 審決取消請求事件
裁判長裁判官
裁判官
裁判官
鶴岡 稔彦
上田 卓哉
中平 健
 

判決へのリンク(裁判所HPへ)

事案の概要

1 概要  焼き肉のたれの容器に使用された立体的形状からなる位置商標が、「同種の商品が、その機能または美観上の理由から採用すると予測される範囲のものであり、その範囲を超えた形状であると認めるに足りる特段の事情は存在しない」とされ商標法3条1項3号に該当し、また、使用により自他商品識別力を獲得したとは認められず同条2項に該当しないとして、拒絶査定不服審判の不成立審決が維持された事例。

2 商標
 原告は、平成27年5月20日、位置商標に係る商標登録出願を行った(商願2015-47397号)。

【商標登録を受けようとする商標】

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【商標の詳細な説明】
 商標登録を受けようとする商標は,標章を付する位置が特定された位置商標であり,商品を封入した容器の胴部中央よりやや上から首部にかけて配された立体的形状からなる。前記立体的形状は容器周縁に連続して配された縦長の菱形形状であり,各々の菱形形状は中央に向かって窪んでいる。なお破線部分は商品容器の一例を示したものであり,商標登録を受けようとする商標を構成する要素ではない。

【商品及び役務の区分並びに指定商品又は指定役務】
 第30類 調味料

3 事実関係
平成29年4月10日付 拒絶査定
平成29年7月18日  不服審判請求(不服2017-10633)
令和2年3月30日付  請求不成立審決
令和2年6月23日   審決取消訴訟提起

争点

1.商標法3条1項3号の該当性(商品の形状を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標に当たるか)
2.商標法3条2項の該当性(自他商品識別力を獲得したか)

   

判旨

1 3条1項3号該当性について
(1) 判断の枠組み
 3条1項3号は,その商品の産地,販売地,品質,原材料,効能,用途,形状(包装の形状を含む。・・・),生産若しくは使用の方法若しくは時期その他の特徴,数量若しくは価格又はその役務の提供の場所,質,提供の用に供する物,効能,用途,態様,提供の方法若しくは時期その他の特徴,数量若しくは価格を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標は,商標登録を受けることができない旨を規定しているが,これは,同号掲記の標章は,商品の産地,販売地その他の特性を表示,記述する標章であって,取引に際してこれらを使用する必要性が高く,誰もがその使用を欲するものであるから,特定人による独占使用を認めるのは公益上適当でないとともに,これらの標章は,一般的に使用される標章であって,多くの場合,自他商品識別力を欠き,商標としての機能を果たし得ないことから,登録を許さないとしたものである。同号掲記の標章のうち商品等の形状は,多くの場合,商品等に期待される機能をより効果的に発揮させたり,商品等の美観をより優れたものとするなどの目的で選択されるものであって,その反面として,商品・役務の出所を表示し自他商品・役務を識別する標識として用いられるものは少なく,需要者としても,商品等の形状は,文字,図形,記号等により平面的に表示される標章とは異なり,商品の機能や美観を際立たせるために選択されたものと認識するものであり,出所表示識別のために選択されたものとは認識しない場合が多いといえる。また,商品等の機能又は美観に資することを目的とする形状は,同種の商品等に関与する者が当該形状を使用することを必要とし,その使用を欲するものであるから,先に商標出願したことのみを理由として当該形状を特定の者に独占させることは,公益上の観点から適切でないといえる。したがって,商品等の形状は,同種の商品が,その機能又は美観上の理由から採用すると予測される範囲を超えた形状である等の特段の事情のない限り,普通に用いられる方法で使用する標章のみからなる商標として,3条1項3号に該当すると解するのが相当である。

(2) 包装容器の表面に付された連続する縦長の菱形形状
ア 液体状の商品の包装容器に付された形状
 飲食料品を取り扱う業界において,液体状の商品を封入する包装容器は,持ちやすさ,注ぎやすさ,飲みやすさ等の観点から,細口で縦長のものが採択,使用されることが多い。しかし,このような商品の性質から要求される一定の制約の下においても,様々な形状の包装容器が存在し(乙1~乙5),これらの包装容器の表面に立体的形状による装飾を付したもの,中でも連続する菱形形状(ダイヤカット)を付したものが,次のとおり認められる。
① 「大塚製薬の公式通販 オオツカ・プラスワン」のウェブサイト(乙6)において,「オロナミンC誕生物語Ⅱ」(1頁)の見出しの下,「美しさに加え濡れても滑らないようにとほどこされたびんのダイヤカット。」(2頁)の記載とともに,連続する菱形形状が胴部中央よりやや上部に付され,その下に商品名等を目立つ態様で表示したラベルが貼付された飲料の瓶の写真が掲載されている。
② 「小岩井乳業株式会社」のウェブサイト(乙7)において,「『小岩井カラダへの贈りもの プラズマ乳酸菌のむヨーグルト』 2012年12月4日(火)新発売」(1頁緑字)の見出しの下,「商品特長」欄の「スタイリッシュなシルエットにダイヤカットをあしらった,手に持ちやすい新容器を採用。」(1頁)の記載とともに,連続する菱形形状が上部に付され,その下に商品名が目立つ態様で表示された飲料の容器の写真が掲載されている。
③ 「ヤマトマテリアル株式会社」のウェブサイト(乙8)において,「オリジナル商品 食品関連」(1頁)の見出しの下,「ダイヤカットが入ったスリムなドレッシングボトル。」(1頁)の記載とともに,連続する菱形形状が下部に付され,その上に商品名等を目立つ態様で表示したラベルが貼付された調味料の容器の写真が掲載されている。
そうすると,液体状の商品の包装容器の上部又は下部に,連続する菱形形状を付すことは,取引上普通に採択,使用されているものと認められる。そして,そのいずれの場合においても,その包装容器の連続する菱形形状の上又は下に,商品名等を目立つ態様で表示したラベルが貼付され又は商品名が目立つ態様で表示されているものと認められることや,①,②の各記載等に照らしてみると,菱形形状は,持ちやすさなどの機能や美観の観点から採用されているものと考えられる。

イ 焼肉のたれに係る包装容器に付された形状
・・・そうすると,焼肉のたれの包装容器の上部又は下部の表面に,連続する縦長の菱形形状を付すことは,取引上普通に採択,使用されているものと認められる。
そして,そのいずれの場合においても,その包装容器の表面の連続する縦長の菱形形状の上又は下に,商品名等を目立つ態様で表示したラベルが貼付されているものと認められること等からすれば,これらの菱形形状も,機能や美観の観点から採用されているものと推認される。

ウ 本願商標を構成する形状に関する原告の説明
 原告は,本願商標を構成する形状に関して次のとおり説明していることが認められる。
① 原告のウェブサイト(乙21)において,「エバラの真髄 黄金の味開発ストーリー」(1枚目)の見出しの下,「『黄金の味』のネーミングの由来とダイヤモンドカット容器」(1枚目)の項目に,「『黄金の味』の容器の特徴であるダイヤモンドカットは,香水やブランデーのボトルのような『高級感』『見栄えの良さ』を意識したデザイン性と,ダイヤモンドカットのビンの耐衝撃性・耐久性に優れている点を重視して,採用されました。」(2枚目)という記載がある。
② 「日本食糧新聞」(2017年6月16日付け)(乙22)において,「焼肉のたれ特集:メーカー動向=エバラ食品工業 主力『黄金の味』大幅刷新」の見出しの下,「今期は,1978年の発売以来はじめて『黄金の味』シリーズを大幅リニューアルする。」(本文9行目),「新開発のPETボトル容器には,現行瓶に設けられたダイヤモンドカットを再現。軽くて持ちやすいという利便性と,衝撃に強く,耐久性にも優れた機能性を備え,店頭や食卓でも見栄えするデザインとなっている。」(21~23行目)という記載がある。上記の「日本食糧新聞」の記事は,原告の商品に関する詳細な内容に及んでいることから,原告に対する取材に基づくものであると推認され,その記事の内容は,原告の説明に基づくものであると認められる。
 そうすると,原告自身,本願商標を構成する形状について,包装容器の機能や美観に資するものであると説明し,新聞においてそのように報道されていたものと認められる。

エ 形状の採択,使用の趣旨
 以上を総合すると,包装容器の表面に付された連続する縦長の菱形の立体的形状は,液体状の商品及びそのうちの焼き肉のたれの包装容器について,機能や美観に資するものとして,取引上普通に採択,使用されている立体的な装飾の一つであり,その位置は,包装容器の上部又は下部が一般的であることが認められる。そして,実際の使用例においては,いずれの場合も,その立体的形状の上又は下に,商品名等を目立つ態様で表示したラベルが貼付されていることが認められ,需要者は,そのようなラベルによって商品名等を容易に認識することができるものと認められる。

(3) 3条1項3号該当性
 本願商標は,標章を付する位置が特定された位置商標であり,商品を封入した容器の胴部中央よりやや上から首部にかけて配された立体的形状からなり,その立体的形状は容器周縁に連続して配された縦長の菱形形状であり,各々の菱形形状は中央に向かって窪んでいるものである。前記(2)エのとおり,包装容器の表面に付された連続する縦長の菱形の立体的形状は,焼き肉のたれの包装容器について,機能や美観に資するものとして,取引上普通に採択,使用されている立体的な装飾の一つであり,その位置は,包装容器の上部又は下部が一般的である上に,その形状に,格別に斬新な特徴があるとまではいえないことからすると,本願商標を構成する立体的形状及びそれを付す位置は,需要者及び取引者において,商品の機能又は美観上の理由により採用されたものと予測し得る範囲のものであると認められる。本願商標の図の破線部分は商品容器の一例を示したものであり,商標を構成する要素ではなく,また,本願商標は,その立体的形状の下に商品名等が記載されたラベルを貼付することを構成自体に含むものではないが,本願商標は,容器の胴部中央よりやや上から首部にかけて配されており,指定商品が焼き肉のたれであることからすると,その下に商品名等が記載されたラベルが貼付されることは容易に予測されるものであり,そのような観点からしても,本願商標を構成する立体的形状は,需要者及び取引者において,出所の識別ではなく機能や美観に資するものとして採択,使用されていると認識されるものと認められる。
 そうすると,本願商標を構成する立体的形状は,同種の商品が,その機能又は美観上の理由から採用すると予測される範囲のものであり,その範囲を超えた形状であると認めるに足りる特段の事情は存在しない。したがって,本願商標は,商品の包装の形状を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標であり,3条1項3号に該当すると認められる。

(中略)

2 3条2項に規定する要件の具備に関する判断の誤り
(1) 判断の枠組み
 立体的形状からなる位置商標が使用により自他商品識別力を獲得したといえるかどうかは,当該商標の形状,その使用期間及び使用地域,当該商標が付された商品の販売数量やその広告の期間及び規模並びに当該商標の形状に類似した形状を有する他の商品の存否などの事情を総合考慮して判断すべきである。・・・

(中略)

「(3) 識別機能の有無
ア 一般に,食用又は飲用の液体の包装容器である瓶又はペットボトル等の容器にはラベルが貼付されており,ラベルには,商品名,製造者,販売者を示す標章や文字,商品の内容を示す文字等が記載されており,商品名,製造者,販売者を示す標章や文字は,目立つ態様で記載されていることが往々にしてあり,需要者がラベルによって商品を特定したり商品の出所を認識することは,顕著な事実である。そのため,需要者は,食用又は飲用の液体の包装容器である瓶又はペットボトル等の容器を見るときにラベルに注意を払うものと認められ,ラベルの記載が需要者に強い印象を与えるものと認められる。そして,本願商標使用商品についてみても,その態様は前記(2)アのとおりであり,それによれば,本願商標使用商品は,ラベルに記載された「エバラ」や「黄金の味」の標章が需要者に強い印象を与え,需要者は,出所識別標識として,ラベルの「エバラ」や「黄金の味」の標章部分に着目するものと認められる。このように,ラベルに記載された標章や文字が需要者に強い印象を与え,出所識別機能を果たしており,他方,本願商標が,焼き肉のたれの包装容器について機能や美観に資するものとして取引上普通に採択,使用されている立体的な装飾の一つである連続する縦長の菱形の立体的形状からなり(前記1(2)エ),ラベルに近接した位置に配置され(前記(2)ア),ラベルが強い印象を与える反面でラベル以外の出所を表示する標識としては認識されにくい状況にあることからすると,本願商標使用商品において,本願商標を構成する立体的形状が出所を識別させる標識として認識されるとは認められない。
イ(ア) 原告は,昭和53年6月から本願商標使用商品を販売しており(前記(2)イ(ア)),平成27年度の本願商標使用商品の販売実績は,210gのものが約20億円,400gのものが約94億8000万円であり(前記(2)ウ),平成27年度の「エバラ焼き肉のたれ 黄金の味」という商品の出荷本数は4000万本,焼き肉のたれ市場におけるシェアは約4割であった(前記(2)ウ)。なお,「エバラ焼き肉のたれ 黄金の味」という商品には,本願商標使用商品とは異なる包装容器のものもあるが(前記(2)イ(イ)),本願商標使用商品は業務用ではなく一般消費者向けであり(前記(2)イ(イ)),宣伝の対象となっていること(前記(2)エ)からすると,「エバラ焼き肉のたれ 黄金の味」という商品のうち多くの部分を本願商標使用商品が占めると推認される。このように,本願商標を構成する立体的形状は,約40年にわたって本願商標使用商品に使用されており,本願商標使用商品の売上は相当額に及んでおり,出荷本数や同種商品中におけるシェアは,相当に及んでいたものと認められる。
 また,本願商標使用商品は,テレビCM,ラジオCM,パンフレット,チラシ,製品案内,各種コラボレーション企画,ムックにおいて宣伝広告されており(前記(2)エ),それらの数は,全体として相当数に及んでいたものと認められる。
 このように,本願商標使用商品の販売実績,宣伝広告実績は相当程度に及んでおり,それにより,「エバラ焼き肉のたれ 黄金の味」という商品名や,その製造販売者が「エバラ」こと原告であることは,消費者に知られるようになったものと推認される。
(イ)a しかし,「エバラ焼き肉のたれ 黄金の味」という商品のうち多くの部分を本願商標使用商品が占めると推認されるものの(前記(ア)),その一方で,本願商標使用商品とは異なる包装の商品もあること(前記(2)イ(イ))からすると,「エバラ焼き肉のたれ 黄金の味」という商品が広く知られたとしても,それが常に本願商標使用商品と結びつくものとはいい切れない。
b また,前記アのとおり,本願商標使用商品の態様に照らして,本願商標使用商品において,自他商品識別機能を果たしているのはラベルであり,本願商標を構成する立体的形状が出所を識別させる標識として認識されるとは認められないことからすると,本願商標使用商品の販売実績が相当に及んでいても,それによって,本願商標を構成する立体的形状が出所を識別させる標識として認識されているものとは認められない。
 さらに,実際に行われた宣伝広告においては,テレビCMにおいて,本願商標使用商品の容器表面の本願商標を構成する立体的形状が視認できるように映し出される時間は短いものと認められるから(前記(2)エ(ア)),テレビCMによって本願商標を構成する立体的形状が需要者に印象付けられたとは認められないし,本願商標が商品容器表面に付された立体的形状からなる位置商標であることからすると,ラジオCMによって,聴取者が,本願商標を構成する立体的形状を認識することは困難であったと認められる。また,テレビCMには本願商標使用商品の外観正面が映し出され(前記(2)エ(ア)),パンフレット,チラシ(前記(2)エ(ウ)),製品案内(前記(2)エ(エ)),各種コラボレーション企画による商品(前記(2)エ(オ)),ムック(前記(2)エ(カ))には,本願商標使用商品の外観正面の写真が掲載又は表示されたが,前記アのとおり,本願商標使用商品において,本願商標を構成する立体的形状は,出所を識別させる標識として認識されるとは認めることができず,また,これらの宣伝広告において,本願商標を構成する立体的形状を,商品又はその容器の特徴としてうたうなど,その立体的形状自体を商品の出所を表示する標識又は自他商品を識別する標識として強く印象付けるような告知や表示が存在したとは認められない。そうすると,上記の宣伝広告において本願商標使用商品の外観正面が映し出され,外観正面の写真が掲載又は表示されたとしても,それによって,本願商標を構成する立体的形状が,出所を識別させる標識として認識されるようになったとは認められない。・・・

(中略)

(ウ) 本件アンケートによれば,本願商標使用商品を含む4種の商品の容器の写真を示した上で,それぞれについて思い浮かんだ焼肉用調味料の商品名を答えさせる質問(純粋想起)に対し,本願商標使用商品の容器について,「黄金の味/黄金のたれ/黄金」と回答した者は28%,「エバラ/エバラ焼肉のたれ」と回答した者は36%であり,また,具体的な複数の商品名の選択肢を示した上で,本願商標使用商品を含む4種の商品の容器の写真のそれぞれについて,当てはまると思う商品名を答えさせる質問(助成想起)に対し,本願商標使用商品の容器の写真について「エバラ 黄金の味」を選択した者は66%であった。・・・しかし,上記のように容器全体を比較する場合には,容器全体の形状や,本願商標を構成する立体的形状以外の部分による印象も識別に寄与することも考慮に入れなければならない。・・・そのため,本件アンケートにおいて,容器全体を比較して,本願商標使用商品の容器について,原告の商品であると回答した者や,「エバラ焼き肉のたれ 黄金の味」という商品であると回答した者が相当程度いたとしても,それらの者は,容器全体から受ける印象によって識別した可能性が相当程度あり,本願商標を構成する立体的形状により識別したものと認めることはできない。・・・本件アンケートにおいては,本願商標使用商品の容器と比較する対象として,本願商標使用商品の容器と同様に全高が高く,なおかつ包装容器の表面に立体的形状による装飾を付したもの又は包装容器の表面に付す立体的装飾の一類型として連続する立体的な菱形形状を用いたものは示されていないから,そのようなものとの関係で本願商標を構成する立体的形状に識別力があることは立証されていない。
 そうすると,本件アンケートは,本願商標の識別力の有無を立証するという観点からすると,本願商標使用商品の容器と比較の対象とされた容器の選択において相当とはいえないものと認められ,本件アンケ-トの結果は,本願商標を構成する立体的形状に識別機能があることを立証するものとは認められず,その識別機能を判断する上で重視することはできない。
ウ 前記ア,イで検討したところによれば,本願商標を構成する立体的形状は本願商標使用商品において使用され,本願商標使用商品は相当数販売され,その宣伝広告も行われてきたが,本願商標は,使用により自他商品識別力を獲得したとは認められず,したがって,使用をされた結果需要者が原告の業務に係る商品であることを認識することができるものに当たらないから,3条2項に規定する要件を具備しているとは認められない。

 

解説/検討

・商標法3条1項3号
その商品の産地、販売地、品質、原材料、効能、用途、形状(包装の形状を含む。第二十六条第一項第二号及び第三号において同じ。)、生産若しくは使用の方法若しくは時期その他の特徴、数量若しくは価格又はその役務の提供の場所、質、提供の用に供する物、効能、用途、態様、提供の方法若しくは時期その他の特徴、数量若しくは価格を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標

・商標法3条2項
前項第三号から第五号までに該当する商標であつても、使用をされた結果需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができるものについては、同項の規定にかかわらず、商標登録を受けることができる。

 3条1項3号該当性については、立体形状からなる位置商標についての令和元年(行ケ)10125号(知財高判令和2年2月12日)石油ストーブ事件判決で示された、立体的形状からなる位置商標に関する判断枠組みを踏襲し、「商品等の形状は,同種の商品が,その機能又は美観上の理由から採用すると予測される範囲を超えた形状である等の特段の事情のない限り,普通に用いられる方法で使用する標章のみからなる商標として,3条1項3号に該当すると解するのが相当である。」との判断枠組みが用いられている。
 3条2項該当性については、商標の使用態様、使用期間、販売実績、宣伝実績等が総合考慮されている。そして、商品自体は広く知られるようになったとしても、自他商品識別機能を果たしているのはラベルであって、本願商標を構成する立体的形状は出所を識別させる標識として認識されるとは認められないと判示された。本判決からは、商品の機能又は美観に資するものとして採用される立体的形状については3条1項3号が問題となり、同条2項による登録を受けるためには、商品の販売実績や広告実績だけでなく、当該立体的形状自体が独立して出所識別標識として認識されていることを具体的に立証することが重要であることがうかがわれる。判決中で「仮に宣伝広告中に,本願商標を構成する立体的形状自体を商品の出所を表示する標識又は自他商品を識別する標識として強く印象付ける表示又は記載等が存在したならば,それによって,本願商標を構成する立体的形状が出所を識別させる標識として認識されるようになると評価する余地もあり得るとしても,そのような表示又は記載等が全く認められない以上,本願商標を構成する立体的形状が出所を識別させる標識として認識されるようになったとは認められない。」とも述べられている。立体形状を強く印象づける広告がされ、適切な比較対象を用いたアンケート結果が示されて、立体形状が独立して出所識別標識として認識されるようになったことが立証できれば、3条2項の適用が認められる余地があることを示唆したものと考えられる。

 

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