【分割出願が不適法とされた結果、出願日遡及が否定され、後発的に周知著名となった引用商標との混同のおそれが認められた事例】

 

投稿日:2026年8月19日

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著者:弁護士 盛田 真智子
*本記事は、筆者の個人的見解であり、当事務所を含め、筆者が所属する如何なる団体の見解も表示するものではありません。
*判決等に筆者が適宜下線や太字強調等を付している場合があります。


参照条文/キーワード/論点

分割出願の適法性/商標法4条1項15号該当性

ポイント

※本判決は、商標登録出願の分割に際し、原出願から分割対象商品を削除する補正がされていない場合には、商標法10条1項の分割出願として不適法であり、出願日遡及の効果は生じないと判断した。
※その上で、本願商標の出願日を実際の分割出願日と認定し、その時点において引用商標が周知著名であり、本願商標との類似性も高いことから、商標法4条1項15号の「混同を生ずるおそれ」を認めた。
※商標法施行規則22条2項は商標法10条1項に適合するものであり、違憲違法との主張は採用されなかった。

 

判決概要

裁判所 知的財産高等裁判所第4部
判決言渡日 令和4年11月21日
事件番号 令和4年(行ケ)第10033号
事件名 審決取消請求事件
裁判長裁判官
裁判官
裁判官
菅野 雅之
本吉 弘行
岡山 忠広
 

判決へのリンク(裁判所HPへ)

事案の概要

1 原告は、「MIRAI」の文字を標準文字で表してなる商標について商標登録出願をしたが、拒絶査定を受けたため、拒絶査定不服審判を請求した。しかし、特許庁は、本願商標はトヨタ燃料電池車に関する引用商標と、その商品の出所について混同を生ずるおそれがあるため商標法4条1項15号に該当するとし、請求は成り立たないとの審決をした。そこで、原告は、本件審決の取消しを求める本件訴訟を提起した。
 商標法4条1項15号該当性は出願時を基準として判断されるため、本願の出願日がいつであるかが問題となった。本願は、原商標登録出願の分割出願として登録出願されたものであり、この分割登録出願が適法であれば、さらにその親出願である原々商標登録出願の出願日が本願商標の出願日となる。しかし、審決では、本願の商標登録出願時に、原商標登録出願について、本願に係る指定商品を削除する補正がされていなかったため、商標法施行規則22条2項の要件を欠き分割出願として不適法であると判断された。原告は同項は違憲違法であり、分割は適法であると主張し争った。
 また、出願日において、引用商標が周知著名であるかが争われた。

2 本願出願
【出願番号】 商願2015-92058
【出願日】 平成26年9月8日(注:原出願の出願日)
【商標】 MIRAI
【標準文字】
【商品及び役務の区分並びに指定商品又は指定役務】
第12類   船舶,船舶の部品及び附属品,航空機,航空機の部品及び附属品,鉄道車両,鉄道車両の部品及び附属品,自動車,自動車の部品及び附属品,二輪自動車,二輪自動車の部品及び附属品

3 原出願
【出願番号】 商願2015-68401
【出願日】 平成26年9月8日
【商標】 MIRAI
【標準文字】
【商品及び役務の区分並びに指定商品又は指定役務】
第9類   電気通信機械器具,…
第12類   船舶,船舶の部品及び附属品,航空機,航空機の部品及び附属品,鉄道車両,鉄道車両の部品及び附属品,自動車,自動車の部品及び附属品,二輪自動車,二輪自動車の部品及び附属品
第35類   広告,…

4 引用商標(トヨタ自動車株式会社)
画像

5 特許庁における手続の経緯
 原告は、平成27年9月24日、「MIRAI」の文字を標準文字で表してなる商標(以下「本願商標」という。)について、指定商品を第12類「船舶、船舶の部品及び附属品、航空機、航空機の部品及び附属品、鉄道車両、鉄道車両の部品及び附属品、自動車、自動車の部品及び附属品、二輪自動車、二輪自動車の部品及び附属品」とする商標登録出願をした(商願2015-92058。以下「本願」という。)。
 なお、本願は、平成27年7月18日に登録出願された商願2015-68401(以下「原商標登録出願」という。)に係る商標法10条1項の規定による分割出願として登録出願されたものである。
 平成30年7月31日付けで拒絶査定を受けたため、原告は、平成31年1月4日、拒絶査定不服審判を請求した。しかし、特許庁は「本件審判の請求は、成り立たない。」との審決(以下「本件審決」という。)をした。
 原告は、令和4年5月1日、本件審決の取消しを求める本件訴訟を提起した。

6 本件審決の理由の要旨
 本願は、原商標登録出願について商標法施行規則22条2項が準用する特許法施行規則30条の規定による必要な補正がなされておらず、商標法10条1項の規定による商標登録出願の要件を満たすものではないから、同条2項が規定する出願日遡及の効果は生じない。
 別紙引用商標目録⑴の構成よりなる商標(以下「引用商標」という。)は、トヨタ自動車株式会社(以下「トヨタ社」という。)の取扱に係る燃料電池車(以下「トヨタ燃料電池車」という。)を表示する商標として、平成26年9月7日以前より、現在に至り、自動車の取引者、需要者はもとより、一般の需要者の間においても広く知られている。
 本願商標と引用商標とは、互いに類似する商標と判断するのが相当であり、類似性の程度は高い。
 本願商標の指定商品と引用商標が使用されるトヨタ燃料電池車の商品は、商品の用途や、取引者及び需要者を共通にする。
 以上の事情からすれば、本願商標は、原告がこれをその指定商品について使用した場合、取引者、需要者をして、引用商標を連想又は想起させ、その商品がトヨタ社あるいは同社と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように、その商品の出所について混同を生ずるおそれがあり、商標法4条1項15号に該当する。

争点

1 出願日の遡及が認められるか(分割出願の適法性)
2 商標法4条1項15号該当性

争点に関する当事者の主張

原告の主張
・分割出願に関する商標法10条1項では、もとの商標登録出願の指定商品及び指定役務についての補正が本願と同時になされていることが出願分割の要件としては規定されていない。商標法施行規則22条2項は、特許法施行規則30条の規定を商標登録出願に準用し、分割出願をしようとする場合においては、もとの商標登録出願の願書を補正する必要があるときは、その補正は、新たな商標登録出願と同時にしなければならない旨規定するが、これは商標法10条1項に規定する要件に加え、「その補正は、新たな商標登録出願と同時にしなければならない」という新たな要件を規定していることになり、同項の想定しないものであり、このような省令への委任を前提とした規定は同項には存在しない。よって、商標法施行規則22条2項は商標法10条1項に反し違憲違法である。
 これを前提とすると、原商標登録出願より更に前の、最初の登録出願である商標登録出願(商願2014-75417、平成26年9月8日出願。以下「原々商標登録出願」という。)を複数回適法に出願分割したものである本願は、同日に出願されていることになる。
・未来工業株式会社(以下「未来工業」という。)は、平成25年12月25日出願、指定商品を「自動車並びにその部品及び附属品」とする「MIRAI」商標(以下「別件商標」という。)の登録第5671887号の商標権を有している。そうすると、引用商標が、トヨタ燃料電池車を表示するものとして、平成26年9月7日以前より、需要者の間においても広く知られていたとの本件審決の認定は疑わしいし、引用商標は、商標法4条1項11号に該当するものとして拒絶査定されるべきものである。
・引用商標は、原々商標登録出願の出願日には周知著名となっていなかったから、本願商標の商標法4条1項15号該当性を認めた本件審決は誤りである。

判旨

1 出願日の遡及について
⑴ 商標法4条1項15号にいう「混同を生ずるおそれ」の有無は、当該商標と他人の表示との類似性の程度、他人の表示の周知著名性及び独創性の程度、当該商標の指定商品等と他人の業務に係る商品等との間の性質、用途又は目的における関連性の程度並びに商品等の取引者及び需要者の共通性その他取引の実情等に照らし、当該商標の指定商品等の取引者及び需要者において普通に払われる注意力を基準として、総合的に判断すべきである。
 商標法4条1項15号に該当する商標であっても、商標登録出願の時にこれに該当しなければ、同号は適用されないので(同条3項)、本件において商標登録出願がいつであるかが問題となる。
 この点につき、原告は、前記第3の1⑴のとおり、商標法施行規則22条2項は違憲違法であり、その結果、本願は商標法10条1項による商標登録出願の要件を満たすものとなり、同条2項が規定する出願日遡及の効果が生ずるから、本件における出願日は、原々商標登録出願がされた平成26年9月8日になる旨主張するので、以下検討する。
⑵ 商標法10条1項は、「商標登録出願人は、商標登録出願が審査、審判若しくは再審に係属している場合又は商標登録出願についての拒絶をすべき旨の審決に対する訴えが裁判所に係属している場合であって、かつ、当該商標登録出願について第76条第2項の規定により納付すべき手数料を納付している場合に限り、2以上の商品又は役務を指定商品又は指定役務とする商標登録出願の一部を1又は2以上の新たな商標登録出願とすることができる。」と定めている。
 このように、分割出願においては、もとの商標登録出願の指定商品等を2以上に分けることが当然の前提となっているから、もとの商標登録出願と分割出願で指定商品等が重複するのを避けるため、もとの商標登録出願から分割出願に係る指定商品等を削除する必要がある。
 この点につき、平成17年最高裁判決は、「商標法10条は、『商標登録出願の分割』について、新たな商標登録出願をすることができることやその商標登録出願がもとの商標登録出願の時にしたものとみなされることを規定しているが、新たな商標登録出願がされた後におけるもとの商標登録出願については何ら規定していないこと、商標法施行規則22条4項は、商標法10条1項の規定により新たな商標登録出願をしようとする場合においては、新たな商標登録出願と同時に、もとの商標登録出願の願書を補正しなければならない旨を規定していることからすると、もとの商標登録出願については、その願書を補正することによって、新たな商標登録出願がされた指定商品等が削除される効果が生ずると解するのが相当である。」旨説示して、新たな商標登録出願がされたことにより、当然にもとの商標登録出願が補正されるものとはいえないことを明らかにしている。そうすると、上記のように、もとの商標登録出願と分割出願で指定商品等が重複するのを避けるためには、もとの商標登録出願から分割出願に係る指定商品等を削除する補正が必要となることは、商標法10条1項自体が想定しているものということができる。
 そして、商標法施行規則22条2項は、特許法施行規則30条を準用し、商標法10条1項の規定により新たな商標登録出願をしようとする場合において、もとの商標登録出願の願書を補正する必要があるときは、その補正は、新たな商標登録出願と同時にしなければならないとしているところ、これは、もとの商標登録出願から分割出願に係る指定商品等を削除する必要が生ずるという、同項が想定する事態に対処するものであるというべきであり、上記最高裁判決も、このような意味で、商標法施行規則22条4項(現2項)が商標法10条1項に適合することを明らかにしていると理解される。
 本件においては、そもそも、本願の商標登録出願時はもとより現在に至るまで、原商標登録出願について、本願に係る指定商品を削除する補正がされたとは認められず、商標法施行規則22条2項の要件を欠くばかりか、もとの商標登録出願の指定商品等を2以上に分けるという前記の分割の前提をも欠くものである。そうすると、本願の商標登録出願は、商標法10条1項の規定による商標登録出願の要件を満たすものではないから、分割出願として不適法であり、同条2項が規定する出願日遡及の効果は生じないものであり、これと同旨の本件審決の判断に誤りはなく、出願時は平成27年9月24日となる。

2 本願商標の商標法4条1項15号該当性について
⑴ 引用商標の周知著名性について
 トヨタ社は、平成25年11月20日から同年12月1日に開催された第43回東京モーターショー2013にトヨタ燃料電池車を出展し(乙98)、平成26年9月6日付けの日本経済新聞(乙34)では、トヨタ社がトヨタ燃料電池車の名称を「ミライ」とし、米国の特許商標庁に「TOYOTA MIRAI」を商標登録する手続を進めていることが報じられている。そして、トヨタ社は、同年11月18日、トヨタ燃料電池車を同年12月15日に販売し、その名称は「MIRAI(ミライ)」となる旨発表し、新聞各紙やウェブサイトで報じられ(乙4ないし6、35、36等)、これらの記事のうち、写真が掲載されているものについては、モデル車両のボディやナンバープレートに引用商標が表示されている。
 また、平成27年1月15日には、自動車関係のウェブサイトでトヨタ燃料電池車が同年の受注目標400台に対し1500台を受注したことが報じられ(乙9)、同月23日には、産経新聞で、トヨタ燃料電池車の生産能力を平成29年に増強することが報じられており(乙10、91)、その他、本件出願前に、水素と空気中の酸素が反応して走る環境負荷の低い自動車として、トヨタ燃料電池車が官邸や地方公共団体に納入されたことが報じられている(乙38、87、89、90)。これらの記事のうち、写真が掲載されているものについては、モデル車両のナンバープレートに引用商標が表示され、それ以外のものについては、本文で「MIRAI(ミライ)」の表示があることが確認できる。
 以上によれば、引用商標は、本願商標の商標登録出願時には、自動車の取引者及び需要者の間で、トヨタ社の取扱に係るトヨタ燃料電池車を表示するものとして周知著名だったものというべきである。
 また、本願商標の指定商品「航空機、航空機の部品及び附属品、鉄道車両、鉄道車両の部品及び附属品」と引用商標が使用される「燃料電池車」は、人や物品の輸送を目的とするもので、商品の用途や取引者及び需要者に共通性があるし、大手企業において多角経営が行われることは一般的であり、トヨタ社の燃料電池車(MIRAI)の技術を応用した水素で走るハイブリッド鉄道車両開発をトヨタ社、JR東日本及び日立製作所が進めていること(乙63、96)も考慮すると、本願商標の指定商品と引用商標が使用される「燃料電池車」とは、密接な関連性を有しているといえる。このように、本願商標の指定商品と引用商標が使用される商品の関連性並びに取引者及び需要者の共通性が認められるから、本願商標の指定商品の取引者、需要者の間においても、引用商標は、トヨタ社の取扱に係るトヨタ燃料電池車を表示するものとして周知著名だったものというべきである。

 別件商標の存在は、トヨタ燃料電池車が上記出願日及びそれ以降に周知著名性を有するとの判断を左右するものではないから、原告の主張は、当を得ない

⑵ 本願商標と引用商標の類似性の程度について
ア 本願商標
 本願商標は標準文字・ローマ字の「MIRAI」からなり、「ミライ」の称呼を生じる。
 また、本願商標は、日本語の「未来」に由来することが容易に理解でき、同観念を生じるほか、前記⑴のとおり、引用商標がトヨタ燃料電池車を表示するものとして、本願商標の指定商品の取引者及び需要者並びに自動車の取引者及び需要者の間で周知著名であることから、「トヨタ燃料電池車のブランド名」の観念も生じる。

イ 引用商標
 引用商標は「MIRAI」の文字をデザイン化したものと認識することができ、引用商標からは「ミライ」の称呼を生じる。
 また、引用商標及び「MIRAI」の文字は、引用商標がトヨタ燃料電池車を表示するものとして、自動車の取引者及び需要者並びに本願商標の指定商品の取引者及び需要者の間で周知著名であることから、「未来」の観念と共に、「トヨタ燃料電池車のブランド名」の観念も生じる。

ウ 類否
 引用商標は「MIRAI」の欧文字をデザイン化したものであるから、本願商標と引用商標は外観上相紛れるものである。
 本願商標と引用商標は「ミライ」の称呼を共通にする。
 本願商標と引用商標は、「未来」及び「トヨタ燃料電池車のブランド名」という観念においても共通する。
 そうすると、本願商標と引用商標は類似し、その類似性の程度は高いものというべきである。

⑶ 混同のおそれについて
 以上⑴及び⑵において認定したとおり、引用商標は、本願商標の商標登録出願日である平成27年9月24日には、本願商標の指定商品の取引者及び需要者並びに自動車の取引者及び需要者の間で、トヨタ社の取扱に係る燃料電池車を表示するものとして周知著名であり、現在に至っていること、本願商標と引用商標は類似し、その類似性の程度は高いことからすると、本願商標は、原告がこれをその指定商品について使用した場合、取引者、需要者をして、引用商標を連想又は想起させ、その商品がトヨタ社あるいは同社と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように、その商品の出所について混同を生ずるおそれがあるものというべきである。

 

解説/検討

・商標法第4条「次に掲げる商標については、前条の規定にかかわらず、商標登録を受けることができない。」
1項15号 「他人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがある商標」
3項 「第1項…第15号…に該当する商標であつても、商標登録出願の時に当該各号に該当しないものについては、これらの規定は、適用しない。」

・商標法10条1項
「商標登録出願人は、商標登録出願が審査、審判若しくは再審に係属している場合又は商標登録出願についての拒絶をすべき旨の審決に対する訴えが裁判所に係属している場合であつて、かつ、当該商標登録出願について第七十六条第二項の規定により納付すべき手数料を納付している場合に限り、二以上の商品又は役務を指定商品又は指定役務とする商標登録出願の一部を一又は二以上の新たな商標登録出願とすることができる。

・商標法施行規則22条2項
「特許法施行規則…第三十条(…特許出願の分割をする場合の補正)の規定は、商標登録出願又は防護標章登録出願に準用する。…この場合において、…特許法施行規則第三十条中「願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面」とあるのは「願書」と読み替えるものとする。」

・特許法施行規則30条
「特許法第四十四条第一項第一号の規定により新たな特許出願をしようとする場合(注:特許出願の分割)において、もとの特許出願の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面を補正する必要があるときは、もとの特許出願の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面の補正は、新たな特許出願と同時にしなければならない。

・憲法第73条6号
「…但し、政令には、特にその法律の委任がある場合を除いては、罰則を設けることができない。」
 本判決は、以下の通り、商標法4条1項15号の「混同を生じるおそれ」の判断基準を示した。

「当該商標と他人の表示との類似性の程度、他人の表示の周知著名性及び独創性の程度、当該商標の指定商品等と他人の業務に係る商品等との間の性質、用途又は目的における関連性の程度並びに商品等の取引者及び需要者の共通性その他取引の実情等に照らし、当該商標の指定商品等の取引者及び需要者において普通に払われる注意力を基準として、総合的に判断すべき」

 そして、「人や物品の輸送を目的とする」という商品の用途や取引者及び需要者に共通性があることに加え、大企業において多角経営が一般的であることや、実際にトヨタ社が燃料電池車の技術を応用した鉄道車両開発を進めていること等から、本願商標の指定商品と引用商標が使用される商品に密接な関連性があると判断した。そして、引用商標が本願商標の取引者及び需要者にとっても周知著名であることや、出願商標と引用商標は類似性が高いこと等を認定し、商品の出所について混同を生ずるおそれがあると判断した。
 これは、以下のような特許庁の商標審査基準にも沿うものである。
 「本号に該当するか否かは、例えば、次のような事実を総合勘案して判断する。
① 出願商標とその他人の標章との類似性の程度
② その他人の標章の周知度
③ その他人の標章が造語よりなるものであるか、又は構成上顕著な特徴を有するものであるか
④ その他人の標章がハウスマークであるか
⑤ 企業における多角経営の可能性
⑥ 商品間、役務間又は商品と役務間の関連性
⑦ 商品等の需要者の共通性その他取引の実情」
 原告が適法に分割手続を行い出願日遡及の効果が認められた場合、本願商標の出願日は平成26年9月8日となり、商標法4条1項15号該当性の判断時点も同日に遡ることになる。また、原告も主張した、未来工業の別件商標(登録第5671887号。指定商品を「自動車並びにその部品及び附属品」とする「MIRAI」商標)も、トヨタ社の引用商標の出願より前に既に登録されていた。
 判決認定によれば、トヨタ社は本願商標の出願日前から継続的な広報活動を行っており、その結果として本願商標の出願日(平成27年9月24日)までには引用商標が周知著名になったと認定された。本件では、分割出願の適法性が否定された結果、本願の出願日は実際の分割出願日である平成27年9月24日とされた。そして、その時点までのトヨタ社による製品発表や各種報道等を踏まえ、引用商標の周知著名性が認定されたことが結論を左右した。したがって、本判決は、分割出願制度の利用に当たって所定の手続を遵守することの重要性とともに、出願日の認定が商標法4条1項15号の判断に決定的な影響を及ぼし得ることを示した事例といえる。

 

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