【文字と図形的要素の結合から成る商標の類否】

 

投稿日:2026年6月5日

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著者:弁理士 大塚 啓生
*本記事は、筆者の個人的見解であり、当事務所を含め、筆者が所属する如何なる団体の見解も表示するものではありません。
*判決等に筆者が適宜下線や太字強調等を付している場合があります。


参照条文/キーワード/論点

結合商標の類否/商標法4条1項11号

ポイント

※ 本件は、拒絶査定不服審判の請求不成立審決に対する取消訴訟である。
※ 商標法4条1項11号が争われ、原告は本願商標と引用商標が非類似であることを争ったが、裁判所は審決の判断を支持し、商標法4条1項11号に該当すると判断した。

判決概要

裁判所 知的財産高等裁判所第2部
判決言渡日 令和5年6月22日
事件番号 令和5年(行ケ)第10017号
事件名 審決取消請求事件
裁判長裁判官
裁判官
裁判官
本多 知成
浅井 憲
勝又 来未子
 

判決へのリンク(裁判所HPへ)


事案の概要

 原告が商願2020-124498号「画像」(以下、「本願商標」という。)の出願をしたところ、商標登録第5589978号「画像」(以下、「引用商標」という。)を引用して拒絶査定を受け、当該査定に対して拒絶査定不服審判を請求したところ、特許庁の審判において請求不成立の審決がされたため原告が上訴した事件。裁判所においても審決の判断と同様に、原告の請求は棄却された。

争点

結合商標の類否


判旨

2.本願商標及び引用商標
(1)本願商標について
ア 本願商標の構成は、前記第2の1(1)のとおりであり、上部には、全体の3分の2を超える大きさで図形が表され、その下に二段からなる文字が表され、文字部分の上段には欧文字で大きく「REIGN」と、下段には「REIGN」の文字部分とほぼ同じ幅をもって、欧文字で小さく「TOTAL BODY FUEL」と表されているものであり、図形部分及び文字部分はいずれも黒色である。
イ 本願商標の全体を観察すると、図形部分と文字部分はそれぞれの形態が明瞭に異なるとともに、図形部分と文字部分の間には空白部分があり、図形部分と文字部分がそれぞれ視覚的に分離、独立した印象を与えるものといえる
 そして、本願商標の図形部分は、その大きさが全体の3分の2を超えるものであり、黒色ではっきりと表されていることから、本願商標において強く支配的な印象を与える部分といえる。また、文字部分は、「REIGN」の文字部分(一段目)と「TOTAL BODY FUEL」の文字部分(二段目)からなるところ、一段目と二段目は文字の大きさやフォントが明らかに異なるために、視覚的に独立した印象を与えるものであるとともに、「REIGN」の文字部分が他の文字部分に比して著しく太いフォントで大きく表されていることから、本願標章を見た者に対し、「REIGN」の文字部分もまた、強く支配的な印象を与える部分といえる
ウ(ア)本願商標の図形部分は、一見して何を表すものであるか看取することは困難であり、直ちに特定の観念及び呼称が生じると認めることはできない。
(イ)本願商標の二段にわたる文字部分は、四つの英単語からなるものであるところ、ジーニアス英語辞典第5版及びその他の英和辞典によると、「REIGN」は、「(君主の)治世、統治(在位)期間、支配」等を、「TOTAL」は「まったく、すっかり、完全に」を、「BODY」は「体、身体」等を、「FUEL」は「燃料」等を意味するものであることが認められる。これらのうち、「TOTAL」及び「BODY」については、日本国内において広く親しまれており、日常的に用いられる単語であり、広辞苑第七版(平成30年発行)にも、「合計、全体的」等を意味するものとして「トータル【total】」が、「身体、胴体」等を意味するものとして「ボディー【body】」が登載されている。また、「FUEL」についても、日本国内において日常的に使用されているとまではいえないとしても、広辞苑第七版に、燃料を意味するものとして「フューエル【fuel】」が登載されている。これに対し、「REIGN」は日本国内で親しまれているものとはいえず、その意味及び読みについても一般に広く認識、理解されているものではない
 そうすると、文字部分である「REIGN TOTAL BODY FUEL」の全体から、特定の観念及び称呼が生じるということはできない。また、文字部分の全体が、英文として特定の意味を有する熟語や文章であると認めることもできず、各英単語の意味を考慮しても、文字部分の全体から特定の観念を生じるということはできない。さらに、文字部分の全体を一連一体のものと観察すべきとする取引の実情があるものと認めるに足りる証拠はない。
エ 以上を総合すると、本願商標は、図形部分、「REIGN」の文字部分及び「TOTAL BODY FUEL」の文字部分からなる結合商標であるところ、各構成部分がそれを分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているものとは認められないから、その構成部分の一部であり、文字部分のうち強く支配的な印象を与える「REIGN」の部分を抽出し、当該部分(以下「本願要部」という。)だけを他人の商標と比較して商標の類否を判断することも許されるというべきである
オ そして、本願要部からは、ローマ字から連想される「レイグン」や、英語読みの「レイン」の称呼を生じ、また、そのアルファベットから「アールイーアイジーエヌ」の称呼を生じる。「REIGN」は英単語であるが、日本において広く用いられる外来語であるものとは認められず、「REIGN」から、特定の観念が生じるとはいえない。

(2)引用商標について
ア 引用商標は、「RE!GN」の5文字を横書きしてなるものであり、「!」は下部分を「★」で表して、デザイン化した文字となっている。
イ 名称等を表すロゴや文字列における「!」の文字の使用例についてみると、次のとおり、会社名、ブランド名又はサービス名等を表すロゴや文字列の中で、「I」又は「i」に変えて「!」の文字又は「I」の下に「●」や「■」や「★」の図形を配して「!」をデザイン化したものを用いるレタリング手法が採用されているものが多くみられることが認められる。

(ア)株式会社フィットのウェブサイト
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(イ)株式会社Creative2が運営するヒントポットのウェブサイト
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(ウ)株式会社ビズヒントのウェブサイト
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(エ)hintゼミのウェブサイト
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(オ)株式会社インサイトテクノロジーのウェブサイト
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(カ)CAMPFIRE(キャンプファイヤ)の「ラジオ局が本気で作る、今までにない【Hint(ヒント)】」のウェブサイト
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(キ)株式会社ジンズのウェブサイト
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(ク)PEIENのウェブサイト
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(ケ)ECO&KIDS AKIRA 釧路店のウェブサイト
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(コ)東レ株式会社の「ナノ積層フィルム ピカサス」のウェブサイト
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ウ 「I」又は「i」と「!」は、外観が類似していることから、日本国民にとって、「!」の文字から「I」又は「i」を連想して「アイ」又は「イ」と読むことが難しいとはいえないことに加え、前記イの各使用例においては、「!」又は「!」の文字をデザイン化(ただし、「!」の文字であることが容易に読み取れる限度におけるデザイン化である。以下同じ。)したものをもって、「I」又は「i」と読ませることを意図しているものであることが明らかであり、名称等を表すロゴや文字列において、「I」又は「i」に代えて「!」又は「!」の文字をデザイン化したものを用いる手法が一般的に用いられていることからすると、このようなロゴや文字列を見た取引者、需要者は、「!」又は「!」の文字をデザイン化したものをもって、「I」又は「i」と読むものと認識、理解すると認めるのが相当である
エ そうすると、引用商標である「RE!GN」は、取引者、需要者をして「REIGN」を意味するものと認識、理解されると認めるのが相当である。したがって、引用商標からは、「レイグン」、「レイン」又は「アールイーアイジーエヌ」の称呼を生じ、特定の観念が生じるとはいえない。

3.本願商標と引用商標の類否
(1)本願要部(「REIGN」の文字部分)と引用商標とを比較すると、その外観はフォントがやや異なっており本願商標の方が太い文字であること及び3文字目が本願要部では欧文字の「I」であるのに対し、引用商標では「I」の下に「★」を配したもので、「!」の文字をデザイン化したものである点において異なるものの、本願要部と引用商標は、それが表す文字列が同一であること、引用商標の3文字目のデザイン化の程度が著しいとはいえず、欧文字の「I」に近いものであることを考慮すると、そのデザインの差異により見る者に与える印象の差異が大きいということはできず、外観において近似しているというべきである。そして、文字列が同一であって、称呼及び観念が共通することからすると、本願要部と引用商標は、外観において近似しており、また、称呼及び観念を共通にし、同一又は類似の商品又は役務について使用するときは、その商品又は役務の出所について誤認混同が生じるおそれがあるというべきであるから、互いに類似する

解説/検討

 本件は、一部が図案化された商標について、その図案化された部分をどのように認定するかがポイントとなった事案である。裁判所の結論は原審と同じであるが、原審では「『REIGN』から『レイン』の称呼が生じ、『治世。支配』の観念が生じる」と認定したのに対し、裁判所では「『REIGN』は日本国内で親しまれているものとはいえず、その意味及び読みについても一般に広く認識、理解されているものではない」ことを理由に、「REIGN」からは特定の観念が生じないと認定した点で異なっている。
 個人的には、「REIGN」の認定に関しては裁判所の判断が正しいと考える。「REIGN」は英和辞書に載っている成語であるとはいえ、一般的に認知されているような平易な英単語ではないため、これに接する一般需要者が「REIGN」から特定の観念を理解するとは考え難い。しかし、そうであるとするならば、本願要部と引用商標は非類似と判断されても良かったのではないかと思う。なぜなら、「REIGN」が一般需要者に理解できない単語であれば、「画像」の「!」を「I」と認識する合理的な理由はないはずだからである。
 確かに、商取引の経験則上、図案化された部分を文字に置き換えて認識することはあるとしても、それは特定の単語が想起されることが前提であろう。この点、裁判所は、被告が主張する「I」を図案化した取引の実情に注目して引用商標中の「!」が「I」と容易に認識できると判断しているが、これらはいずれも「FIT」「HINT」「INSIGHT」など平易な英単語であることや、そのサイト上で通常の活字体で名称等を示したり、読み方をカナ文字で表記しているため、一般需要者が認識できていると考えるのが相当である(この点については原告も主張している)。
 なお、インターネットで調べた限りでは、引用商標が実際に「REIGN」として使用されているかは確認できなかった(その意味では不使用取消審判を請求する選択肢もあったのではないかと思う)。
 また、過去の審決では、図案化された「!」を「I」と認定するものがほとんどであったが、やはり特定の単語が想起できるケースであった。

  審判番号     本件商標     引用商標     結論  
異議2019-900138 画像 JSS 非類似
本件商標は「JSSI」と認識される。
不服2003-24961 画像 画像 類似
不服2003-24082 F.I.X 画像 類似
無効S53-8688 LIFE 画像 類似
 

       

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