【商品「歯科用材料」「歯科用機械器具」と役務「義歯の加工(「医療材料の加工」を含む。)」の類否】
投稿日:2026年5月12日 |
![]()
著者:弁理士 大塚 啓生
|
参照条文/キーワード/論点 |
商品と役務の類否/商標法4条1項11号/商標法4条1項15号 |
ポイント
本件は、商標登録無効審判の請求不成立審決に対する取消訴訟である。商標法4条1項11号、15号、19号、7号の該当性が争われ、裁判所は本件商標と引用商標は類似するとして、商標法4条1項11号及び15号に該当すると判断した。
|
判決概要 |
| 裁判所 | 知的財産高等裁判所第2部 |
| 判決言渡日 | 令和6年7月8日 |
| 事件番号 | 令和5年(行ケ)第10087号 |
| 事件名 | 審決取消請求事件 |
| 裁判長裁判官
裁判官 裁判官 |
清水 響
菊池 絵理 頼 晋一 |
事案の概要
被告が5、10、40類の商品役務を指定して「三金工業」を商標登録(第6074174号)したところ、原告が5類又は10類の商品を指定した「Sankin\サンキン」(第3102237号及び第4048984号)を引用して商標登録無効審判を請求し、当該請求は成り立たないとの審決がされたことから、原告が上訴した事案。裁判所は、審決を覆して無効と判断した。
争点
本稿では、特に以下の争点に関し記載する。
第5類「歯科用材料」及び第10類「歯科用機械器具」と第40類「義歯の加工(「医療材料の加工」を含む。)」の類否
判旨
(2)本件商標の指定商品役務と引用商標の指定商品役務の類否
ア 本件目録記載の本件商標の指定商品・指定役務(以下「指定商品等」という。)のうち、本件目録に実線の下線を引いた指定商品(第5類「薬剤、医療品試験紙、医療用油紙、衛生マスク、オブラート、ガーゼ、カプセル、眼帯、耳帯、生理帯、生理用タンポン、生理用ナプキン、生理用パンティ、脱脂綿、ばんそうこう、包帯、包帯液、胸当てパッド、綿棒、歯科用材料」、第10類「医療用指サック、おしゃぶり、氷まくら、三角きん、支持包帯、手術用キャットガット、吸い飲み、スポイト、乳首、氷のう、氷のうつり、哺乳用具、魔法哺乳器、人工鼓膜用材料、補綴充てん用材料(歯科用のものを除く。)、義歯、医療用マウスピース、医療用機械器具、医療用手袋」)及び第5類「サプリメント」(以下、併せて「本件薬剤等商品」と総称する。)については、いずれも医薬品、衛生用品又は医療補助品であって、引用商標1の指定商品である第5類「消化器官用薬剤、外皮用薬剤、血液用剤、診断用薬剤、歯科用材料、衛生マスク、絆創膏」又は引用商標2の指定商品である第10類「医療用機械器具(診断用機械器具・治療用機械器具・歯科用機械器具・医療用X線装置を含む)、医療用手袋」と同一の商品又はこれらに類似する商品であると認められる。また、本件商標の指定役務(第40「金属の加工、セラミックの加工、義肢又は義歯の加工(「医療材料の加工」を含む。)、金属加工機械器具の貸与、化学機械器具の貸与、3Dプリンターの貸与、材料処理情報の提供」)のうち、「義歯の加工(「医療材料の加工」を含む。)」については、少なくとも引用商標1の指定商品である第5類「歯科用材料」又は引用商標2の指定商品である第10「歯科用機械器具」の製造に含まれるか、又はこれに密接に関連する役務と考えられるから、商品役務間の同一性又は類似性が認められる。
イ これに対し、本件商標の指定商品のうち、本件薬剤等商品を除いたもの(第5類「乳幼児用粉乳、食餌療法用飲料、食餌療法用食品、乳幼児用飲料、乳幼児用食品」、第10類「睡眠用耳栓、防音用耳栓、業務用美容マッサージ器」、「家庭用電気マッサージ器」)は、いずれも医薬品、衛生用品又は医療補助品とは用途及び需要者を異にするものと考えられ、取引の実情として、通常同一営業主の製造又は販売に係る商品と誤認混同されるおそれがあると認められるような事情が存在する旨の主張立証もないから、引用商標1又は引用商標2の各指定商品と同一又はこれらに類似する商品であるとは認められない。また、本件商標の指定役務のうち前記「義歯の加工(「医療材料の加工」を含む。)」を除いた各役務(第40「金属の加工、セラミックの加工、義肢の加工(「医療材料の加工」を含む。)、金属加工機械器具の貸与、化学機械器具の貸与、3Dプリンターの貸与、材料処理情報の提供」)についても、通常同一営業主の提供する役務と誤認混同されるおそれがある役務であって引用商標1又は引用商標2の指定商品に類似する役務であるとまでは認められない。
(3)取消事由1についての結論
以上によれば、本件商標は、その指定商品等のうち本件薬剤等商品及び「義歯の加工(「医療材料の加工」を含む。)」の役務については、商標法4条1項11号に該当するから、この点に関する本件審決の判断は誤りである。
解説/検討
審決と明暗を分けた要因としては、需要者の範囲の認定、「工業」の語に関する認定、商品役務の類否判断、が考えられ、特に最後の「商品役務の類否判断」がポイントになったと考える。
裁判所は、本件商標の指定役務中40類「義歯の加工(「医療材料の加工」を含む。)」は、第5類「歯科用材料」又は第10類「歯科用機械器具」の製造に含まれるか又はこれに密接する役務と考えられるため、商品役務間の同一性又は類似性が認められるとして、第40類「義歯の加工(「医療材料の加工」を含む。)」についても商標法4条1項11号に該当すると判断している。しかし、この点については過度な判断と考える。
確かにこれらの商品役務間では密接な関連性が認められるかもしれないが、本件は不登録事由である商標法4条1項11号が争点であり、侵害事件ではない。登録段階における取引の実情は、商品役務全般についての一般的・恒常的な事情によって判断されるのが原則(最判昭和49年4月25日第一小法廷判決、昭和47年(行ツ)第33号〔保土谷事件〕)であるから、本裁判所の判断を前提とすると、一般論として第5類「歯科用材料」又は第10類「歯科用機械器具」と第40類「義歯の加工(「医療材料の加工」を含む。)」は類似することになるはずであるが、裁判所が当該判断の影響力を念頭に置いて判断したかは不明である。
加えて、第5類「歯科用材料」又は第10類「歯科用機械器具」と第40類「義歯の加工(「医療材料の加工」を含む。)」の類似について、原告は何ら主張をしておらず、裁判所が独自に判断していることが窺える。
本件に関しては、商標法4条1項11号だけでなく15号についても争われているので、第5類「歯科用材料」又は第10類「歯科用機械器具」と第40類「義歯の加工(「医療材料の加工」を含む。)」との関係については15号で処理すべきであったと考える。
