【海外店舗のロゴをウェブサイト上に掲載する行為は日本の商標権侵害となるか】 】

 

投稿日:2026年7月6日

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著者:弁理士 井出 麻衣子
*本記事は、筆者の個人的見解であり、当事務所を含め、筆者が所属する如何なる団体の見解も表示するものではありません。
*判決等に筆者が適宜下線や太字強調等を付している場合があります。


参照条文/キーワード/論点

不正競争防止法2条1項1号又は2号、3条1項/商標法36条1項/インターネット上の商標の使用

ポイント

 マレーシアにおいてすし店「寿司三昧Sushi Zanmai」を展開するマレーシア企業のグループ会社である被告が、被告ウェブサイトに当該すし店の標章(被告各表示)を掲載したところ、原告の登録商標「SUSHI ZANMAI」等を侵害するとして、被告各表示の使用の差止及び損害賠償請求が認められた事案である。

判決概要

裁判所 東京地方裁判所民事第29部
判決言渡日 令和6年3月19日
事件番号 令和3年(ワ)第11358号
事件名 不正競争行為差止等請求事件
裁判長裁判官
裁判官
裁判官
國分 隆文
間明 宏充
木村 洋一
 

判決へのリンク(裁判所HPへ)


事案の概要

 原告は登録商標1乃至3を有するところ、被告が被告表示1~2をインターネット上のウェブサイトに掲載した行為が商標権侵害又は不正競争行為にあたるとして、被告各表示の差止・損害賠償を求めた事案である。
 東京地裁は、原告各商標と被告各表示は類似しており、かつ、被告が本件各ウェブページに被告各表示を掲載した行為は、原告各商標の指定役務と類似する役務において、原告各商標を「使用」したものと評価できるとし、差止・損害賠償の一部を認容した。

<原告登録商標>
●登録第5003675号
画像
第30類 すし 第43類 すしを主とする飲食物の提供
●登録第5511447号「すしざんまい」
第30類 すし、すしを主とするべんとう 第43類 すしを主とする飲食物の提供
●登録第5758937号「SUSHI ZANMAI」
第30類 すし、べんとう、丼物 第43類 すし・丼物を主とする飲食物の提供

<被告表示>
1)Sushi Zanmai
2)画像

ウェブサイト上の表示拡大イメージ図
画像

判旨

 以下では争点のうち、原告各商標の指定役務と被告各表示に係る役務の類否及び被告が被告各表示を「使用」(商標法2条3項)したか否かについて、抜粋して掲載する。

 原告各商標の指定役務は「すしを主とする飲食物の提供」であること、被告は、魚介類及び水産加工品の輸出入等の事業を行う株式会社であり、日本での食材の仕入れ及び東南アジアのダイショーグループ各社への輸出を行っていること、ダイショーグループは、シンガポール・マレーシア・インドネシアなどで「寿司」、「和食レストラン」などの店舗を展開していること、本件各ウェブページは、日本語によって記載された主に日本国内の取引者及び需要者に向けたウェブページであり、被告が管理していること、本件各ウェブページには、スーパースシが展開する本件すし店に関するものとして被告各表示が掲載されており、被告各表示とともに「手頃な価格で幅広い客層が楽しめる回転寿司。厳選した食材と豊富なメニューで、人気を集めています。」との説明が掲載されていることが認められる。
 このような事情からすれば、本件各ウェブページにおける被告各表示は、すしを主とする飲食物の提供を行う本件すし店を紹介するために掲載されたものであり、「すしを主とする飲食物の提供」と類似の役務に係るものといえるから、原告各商標の指定役務と被告各表示に係る役務とは類似するものといえる。そして、被告が本件各ウェブページに被告各表示を掲載した行為は、「役務に関する広告…を内容とする情報に標章を付して電磁的方法により提供する行為」(商標法2条3項8号)に該当するといえ、被告は原告各商標を「使用」したものと認められる。

 被告は、被告各表示はスーパースシがマレーシアにおいて展開する本件すし店に関するものにすぎず、被告自身は「すしを主とする飲食物の提供」を行っていないことなどから、被告各表示に係る役務は、原告各商標の指定役務である「すしを主とする飲食物の提供」とは類似しておらず、また、被告が原告各商標を「使用」したとはいえないと主張する。

 そこで検討すると、商標法は、「商標を保護することにより、商標の使用をする者の業務上の信用の維持を図り、もつて産業の発達に寄与し、あわせて需要者の利益を保護することを目的とする」と定めており、この目的を達成するため、商標は、標章をある者の商品又は役務に付することにより、その商品又は役務の出所を表示する機能(出所表示機能)や、取引者及び需要者が同一の商標の付された商品又は役務には同一の品質を期待しており、商標がその期待に応える作用をする機能(品質保証機能)を有するものと解される。  

 本件においては、前記で説示したとおり、本件各ウェブページは主に日本国内の取引者及び需要者に向けたウェブページであり、かつ、被告各表示は「すしを主とする飲食物の提供」という役務に係るものといえるから、被告各表示がマレーシアの本件すし店に係るものであったとしても、本件各ウェブページに被告各表示を掲載した行為は、日本における原告各商標の出所表示機能及び品質保証機能を害し、ひいては、上記の商標法の目的にも反するものであるといえる。
 そして、被告各表示が被告自身の事業に関するものではなかったとしても、本件各ウェブページに被告各表示を掲載した行為は被告が行ったものと認められ、上記のとおり、そのような被告の行為によって日本における原告各商標の出所表示機能及び品質保持機能が害されている以上、被告が原告各商標を「使用」していないと評価することはできない。
 そうだとすれば、被告の上記主張はいずれも役務の類否や使用行為の有無を左右するものではないというべきである。
(中略)
 原告各商標と被告各表示は類似しており、かつ、被告が本件各ウェブページに被告各表示を掲載した行為は、原告各商標の指定役務と類似する役務において、原告各商標を「使用」したものと評価できる。

解説/検討

 被告自身は役務の提供を行っておらず、あくまでマレーシアで事業展開するグループ企業の情報をウェブサイトに掲載したに過ぎない。属地主義の原則からすれば、日本の商標権は日本での使用行為にしか及ばず、どこまでが「日本での商標の使用」に該当するのか、上記被告の使用態様は原告各商標の「使用」に該当するといえるのか疑問が残る 。
 ここで、商標法の目的を考えると、商標法は、登録商標と類似する商標を指定商品・指定役務に類似する商品・役務に使用することに対して禁止権を設け、登録商標の出所識別機能を助成し、ひいては商品や役務の質の維持・発展を図ることで、もって産業の発達を期することを目的としている。したがって、そのような商標法制の下で、内国実質法としての属地主義を実現するとすれば、第一義的には、出所識別機能がどこで発揮されているのかということが問題になるべきと考える 。

   不使用取消に係る事件ではあるが、以下の2つの判決を踏まえると、本件では被告ウェブサイトに日本語で表示されていることからも、日本の需要者を対象にしているといえ、出所識別機能は日本で発揮されているといえる。
・知財高判H17.12.20 平成17年(行ケ)10095「PAPA JOHN’S」
 指定商品「ピザ」に関する広告及びフランチャイジーの募集が行われていたが、「上記ウェブページは、米国サーバーに設けられたものである上、その内容もすべて英語で表示されたものであって、日本の需要者を対象としたものとは認められない。上記ウェブページは日本からもアクセス可能であり、日本の検索エンジンによっても検索可能であるが、このことは、インターネットのウェブページである以上当然のことであり、同事実によっては上記ウェブページによる広告を日本国内による使用に該当するものということはできない」とし、日本語で表示されていない以上、日本の需要者を対象にしたものではないと判示している。
・知財高判H29.11.29 平成29年(行ケ)10071「COVERDERM」
 「本件ウェブサイトは、日本語で本件商標に関するブランドの歴史、実績等を紹介するとともに、注文フォームおよび送信ボタンまで日本語で記載されているのであるから、リンク先の商品の紹介が英語で記載されているという事情を考慮しても、本件ウェブサイトが日本の需要者を対象とした注文サイトであることは明らかである。そうすると、審決が認定するとおり、本件商標を付した商品が日本の需要者に引き渡されたことまで認めるに足りないか否かはさておき、少なくとも、原告は、本件商標について本件要証期間内に日本国内で商標法2条3項8号にいう使用をしたものと認められる。」

 次に、自己の提供する商品役務に標章を使用しているといえるのかについて検討すると、以下の判例を踏まえると、本件については、ウェブサイトの<事業内容>直下に表示され、何ら被告自身ではなくグループ会社が提供していることや原告とは無関係であることなどの表示はなく、提供主体と認識される虞は十分にあるといえるのではないだろうか。
・東京地判R4.9.12 令和3年(ワ)6974「セレモニートーリン」
 「そして、本件ウェブページは、これを単独でみても、そのドメインや本件ウェブページのタイトル部分や末尾の「安心葬儀」等の表示、競合し得る近隣の斎場等の情報も表示されることに加え、本件葬儀場の情報については、ホールの外観、特徴や所在地、アクセス方法、設備情報等の客観的な情報が記載されているにとどまり、これを超えて本件葬儀場の利用を誘引するような記載はみられないこと等の事情からすると、本件ウェブページに接した需要者は、「セレモニートーリン」を、葬儀場を紹介するという本件サービスサイトにおいて紹介される一葬儀社(場)として認識するものであり、原告が本件葬儀場において提供する商品ないし役務に関し、被告がその主体であると認識することはないものというべきである(本件ウェブページを含め、本件サービスサイトの運営者が原告であると認識することがないことも同様である。)。・・・被告による被告標章の使用は、商標法26条1項6号の規定により、本件商標権の効力が及ばないというべきである。」
・知財高判H20.3.19 判タ1629号288頁「ELLEGARDEN」
 「Y(被告)ウェブサイトにおける販売についてみても、購入に至るまでには複数のステップがあり、その中には同サイトが一般の被服等を販売するサイト、とりわけX(原告)のようなファッションブランドの商品を販売するサイトではなく、ロックバンドのファンサイトであると容易に気づかせるような表示が随所に見られるのであるから、このような販売方法による場合であっても、これを購入しようとする者が当該商品の出所の混同を来す場合があるとは容易に想定し難いというべきである。」

   以上より、本判決の結論としては妥当とも思われるが、当てはめとしては、以下のように「このような事情からすれば・・」と諸事情を一括して判断しており、具体的にどのような行為が出所表示機能等を害したとされたのか、理解しがたい。判決では言及されていないが、原告「すしざんまい」の周知性も判断に影響したように考える(登録主義である以上、周知性は考慮要素になるべきではない。さらに周知・著名性獲得による保護範囲の事後的拡張により、後行者の予測可能性が害されるという問題があるとの意見がある )。

       

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