【タッチペン付き多機能ペンは「電子計算機」に当たるか(商標不使用取消審判における指定商品の解釈)】

 

投稿日:2026年4月30日

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著者:弁護士 大野 浩之
*本記事は、筆者の個人的見解であり、当事務所を含め、筆者が所属する如何なる団体の見解も表示するものではありません。
*判決等に筆者が適宜下線や太字強調等を付している場合があります。


参照条文/キーワード/論点

不使用取消審判

 

ポイント

 指定商品「電子計算機」は、中央処理装置やプログラム記憶回路等に関わる機器に限定され、外部周辺機器は含まれないと解釈し、結果として不使用取消審決が維持された。

 

判決概要

裁判所 知的財産高等裁判所第3部
判決言渡日 令和6年10月31日
事件番号 令和6年(行ケ)第10045号
事件名 審決取消請求事件
裁判長裁判官
裁判官
裁判官
中平 健
今井 弘晃
水野 正則
 

判決へのリンク(裁判所HPへ)

事案の概要

 本件は、商標「ZOOM」(登録第4363622号)について、第9類「電子計算機、電子計算機用プログラム等」に関し、商標法50条1項に基づく不使用取消審判が請求された事案である。
 商標権者である株式会社トンボ鉛筆は「ZOOM」商標を付したタッチペン付き多機能筆記具を使用していたと主張した。しかし特許庁は、当該商品は第16類の筆記具に属し、第9類「電子計算機等」には該当しないとして登録取消審決を行った。
 これに対し原告らは、
①タッチペンは入力装置として電子計算機の周辺機器に当たる
②書換登録前の指定商品には「周辺機器」が含まれていた
などと主張して審決取消訴訟を提起した。
 知的財産高等裁判所は、
・「電子計算機」とは電子作用を本質とする機器に限定される
・周辺機器も中央処理装置やプログラム記憶回路等に密接に関連するものに限られる 
・タッチペンは単なる入力補助具にすぎない 
と判示し、使用商品は指定商品に該当しないとして、審決を維持(原告請求棄却)した。

争点

 タッチペン付き多機能ペン(各使用商品)への「ZOOM」使用が、第9類「電子計算機等」に対する商標使用といえるか(商標法50条)

   

争点に関する当事者の主張

【原告主張】
□タッチペン付き多機能ペンは、筆記具であると同時にデータ入力装置(周辺機器)として第9類「電子計算機」に該当する。
□書換登録前の「電子計算機」は周辺機器を含む概念であり、書換後も同様に広く解釈すべき。 
□スタイラスペンは一般に入力装置とされるため、各使用商品は電子計算機の周辺機器として使用に当たる。

【被告主張】
 各使用商品は単なる筆記具であり、「電子計算機」やその指定商品には該当しない別商品である。
 書換登録後の「電子計算機」は周辺機器を含まない限定的概念であり、入力装置は含まれない。
 書換の結果、周辺機器等は指定商品から外れており、使用事実は認められない。

審決の判断

【審決の要旨】
 本件審決の理由は、要するに、原告トンボ鉛筆は、2018年(平成30年)ないし2021年(令和3年)頃に「トンボ鉛筆総合カタログ」を発行し、当該カタログにおいて、「シャープペンシル、黒ボールペン、赤ボールペンの機能を有する筆記用具」を紹介したところ、上記商品に「ZOOM」の欧文字よりなる商標が使用されていたことが推認され、上記商標と本件商標とは、構成文字を同じくし、いずれも「ズーム」の称呼を共通にする社会通念上同一の商標であると認められるが、原告トンボ鉛筆が本件商標を使用したと主張する商品は、「シャープペンシル、黒ボールペン、赤ボールペンの機能を有する筆記用具」であり、第16類「筆記具(文房具)」の範ちゅうに属する商品と判断するのが相当であるから本件取消対象指定商品の範ちゅうに属する商品とは認められず、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかが、本件要証期間に本件取消対象指定商品について、本件商標(社会通念上同一の商標を含む。)の使用(商標法2条3項各号のいずれかに該当する使用行為)をしたとは認められないというものである。

判旨

1.各使用商品が本件取消対象指定商品に該当するか否かについて
⑴ 商標法施行規則別表において定められた商品又は役務の意義は、商標法施行令別表の区分に付された名称、商標法施行規則別表において当該区分に属するものとされた商品又は役務の内容や性質、国際分類を構成する類別表注釈において示された商品又は役務についての説明、類似商品・役務審査基準における類似群の同一性などを参酌して解釈するのが相当である(最高裁平成21年(行ヒ)第217号同23年12月20日第三小法廷判決・民集65巻9号3568頁参照)。

⑵ 本件商標の指定商品について本件書換登録の申請がされた日(平成22年5月10日、甲55。以下「本件書換登録申請日」という。)に施行されていた、商標法6条2項において政令で定めることとされた商品及び役務の区分につき規定する平成27年政令第26号による改正(条文繰下げ)前の商標法施行令1条(以下「商標法施行令1条」という。)の別表(第一条関係)には、「第九類 科学用、航海用、測量用、写真用、音響用、映像用、計量用、信号用、検査用、救命用、教育用、計算用又は情報処理用の機械器具、光学式の機械器具及び電気の伝導用、電気回路の開閉用、変圧用、蓄電用、電圧調整用又は電気制御用の機械器具」と規定されていた。
 そして、商標法施行令1条の規定による商品及び役務の区分に属する商品又は役務を規定する、本件書換登録申請日に施行されていた商標法施行規則6条の別表(第6条関係。平成23年経済産業省令第66号による改正前のもの。以下「省令別表」という。)の「第九類十六 電子応用機械器具及びその部品」は、次のとおりであった。
 「十六 電子応用機械器具及びその部品
 (一)電子応用機械器具
 ガイガー計数器 高周波ミシン サイクロトロン 産業用X線機械器具 産業用ベータートロン 磁気探鉱機 磁気探知機 磁気ディスク用シールドケース 地震探鉱機械器具 水中聴音機械器具 超音波応用測深器 超音波応用探傷器 超音波応用探知機 電子応用静電複写機 電子応用扉自動開閉装置 電子計算機 電子顕微鏡 電子式卓上計算機 ハードディスクユニット ワードプロセッサ
 (二)電子管
 X線管光電管真空管整流管ブラウン管放電管
 (三)半導体素子
 サーミスターダイオードトランジスター
 (四)電子回路(電子計算機用プログラムを記憶させた電子回路を除く。)
積回路大規模集積回路  (五)電子計算機用プログラム」

 そうすると、本件商標の指定商品のうち、「電子計算機」は、上記第九類十六の「(一)電子応用機械器具」中に定める「電子計算機」を意味するものと解されるので、そこにいう「電子計算機」の意義について検討することとなる。

⑶ 本件書換登録申請日における類似商品・役務審査基準等の記載は、以下のとおりであった。
ア 本件書換登録申請日当時の「類似商品・役務審査基準」であることに当事者間に争いのない特許庁商標課編「『商品及び役務の区分』に基づく類似商品・役務審査基準〔国際分類第9版対応〕」(平成19年1月1日から平成23年12月31日までに対応)には、以下のとおり記載されている(甲4、乙9、被告第2準備書面9頁)。
 「電子応用機械器具及びその部品 11C01」
 「1 電子応用機械器具
 ガイガー計数器 高周波ミシン サイクロトロン 産業用X線機械器具 産業用ベータートロン 磁気探鉱機 磁気探知機磁気ディスク用シールドケース 地震探鉱機械器具 水中聴音機械器具 超音波応用測深器 超音波応用探傷器 超音波応用探知機 電子応用静電複写機 電子応用扉自動開閉装置 電子計算機 電子顕微鏡 電子式卓上計算機 ハードディスクユニット ワードプロセッサ
2 電子管
 X線管 光電管 真空管 整流管 ブラウン管 放電管
3 半導体素子
 サーミスター ダイオード トランジスター
4 電子回路(電子計算機用プログラムを記憶させた電子回路を除く。) 
 集積回路 大規模集積回路
 (備考)『電子管 半導体素子電子回路(電子計算機用プログラムを記憶させた電子回路を除く。)』は、『電子通信機械器具』に類似する。
5 電子計算機用プログラム
 (備考)『電子計算機用プログラム』は、第42類の『電子計算機用プログラムの提供』に類似する。」

イ また、特許庁商標課編「商品及び役務の区分解説〔国際分類第9版対応〕」には、第9類十六の「電子応用機械器具及びその部品」につき、「この概念には、電子の作用を応用したもので、電子の作用をその機械器具の機能の本質的な要素としているものだけが含まれる。」と記載され、「電子計算機」の説明として、「<電子計算機>電子計算機には、電子計算機(中央処理装置及び電子計算機用プログラムを記憶させた電子回路、磁気ディスク、磁気テープその他の周辺機器)等のハードウェアが含まれる。」と記載されている(甲56)。

⑷ 一方、本件書換登録前の、本件商標の設定登録に至る経過は次のとおりである。・・・
 上記ウの注意事項の記載内容に従えば、指定商品「電子計算機」については、二つの商品である「電子計算機」及び「電子計算機用プログラム」に書換可能であることが示されているが、それ以外の書換表示であっても、それが書換登録申請に係る商標権の指定商品の範囲内の適切な商品表示であれば、その書換表示による書換も認められることとなる。

⑹ 電子計算機及び周辺機器について、辞書及び文献には以下の記載がある。
 「電子計算機」について、辞書には、「トランジスター・集積回路などを用いた高速自動計算機。演算装置のほかに制御装置・記憶装置を備え、あらかじめ作成したプログラムに従って計算や論理的処理を高速度で行う。グラフィックスや各種情報処理など多方面に利用。コンピューター。」(広辞苑第7版。乙27)と記載されている。
 「周辺装置」について、辞書には、「コンピューター本体に組み合わせて使用する各種の装置。補助記憶装置、ディスプレー・プリンターなどの出力装置、キーボードなどの入力装置、通信装置の類。周辺機器。」(広辞苑第7版。乙26)と記載されている。
 また、「情報処理技術者試験基本情報図解テキスト①ハードウェアとソフトウェア2001年版」(甲52)は、「1.2コンピュータの基本構成」において、コンピュータを処理装置と周辺装置に分類し、処理装置を中央処理装置と主記憶装置(メモリ)に分類した上で主記憶装置(メモリ)はプログラムを記憶しておく装置であるとし、周辺装置については、「処理装置の外部にあり記憶装置とやりとりを行う入力装置・出力装置・補助記憶装置を総称して周辺装置と呼びます。」とした上で、補助記憶装置としてハードディスク等を、入力装置としてキーボード等を、出力装置としてディスプレイやプリンタなどを挙げ、これらを「周辺装置」としている。

⑺ 以上を前提に検討すると、上記⑵の政令、省令の定めのとおり、本件商標の本件書換登録後の指定商品は省令別表第九類十六の「(一)電子応用機械器具」中の商品「電子計算機」を意味するものと解されるところ、省令別表第九類十六「(一)電子応用機械器具」中には他の商品として「ハードディスクユニット」も記載され、更に省令別表第九類十六には、「(一)電子応用機械器具」とは別に、「(五)電子計算機用プログラム」が記載されている。
 これは、上記⑶アの「『商品及び役務の区分』に基づく類似商品・役務審査基準〔国際分類第9版対応〕」の「電子応用機械器具及びその部品 11C01」における「1 電子応用機械器具」中の商品として「電子計算機」と「ハードディスクユニット」が定められ、「1 電子応用機械器具」とは別に「5 電子計算機用プログラム」が定められているのと同旨である。
 そして、上記⑶イの「商品及び役務の区分解説〔国際分類第9版対応〕には、第9類十六の「電子応用機械器具及びその部品」につき、「この概念には、電子の作用を応用したもので、電子の作用をその機械器具の機能の本質的な要素としているものだけが含まれる。」とした上で、「電子計算機」の説明として、「<電子計算機>電子計算機には、電子計算機(中央処理装置及び電子計算機用プログラムを記憶させた電子回路、磁気ディスク、磁気テープその他の周辺機器)等のハードウェアが含まれる。」と記載されており、商品「電子計算機」は、上記本質的要素を踏まえた上で、中央処理装置と、電子計算機用プログラムを記憶させた電子回路等の周辺機器等のハードウェアを含むものとされている。もとより、商標の指定商品を示す用語の意味は、他の指定商品との関係等をも考慮して解釈されるべきものであり、一般的な用法や科学技術上の用法における意味と常に完全に一致するとは限らないが、上記の指定商品としての「電子計算機」の語の意味は、上記⑹に照らすと、一般的に又は科学技術上いわれる「電子計算機」の中核的内容を示し、一般的な用法や科学技術上の用法にも合致するものであり、それらと矛盾するものではない。
 一方、省令別表第九類十六に商品として記載された「ハードディスクユニット」については、上記⑹の辞書及び文献等の記載にもよれば、電子計算機(コンピュータ)の処理装置の外部にある補助記憶装置として、電子計算機の周辺機器に属するものと認められる。
 そうすると、本件商標の本件書換登録後の指定商品である「電子計算機」は、電子の作用をその機械器具の機能の本質的な要素としているものだけを含むものであり、その「電子計算機」に含まれる周辺機器も、中央処理装置及び電子計算機用プログラムを記憶させた電子回路等の周辺機器のみがこれに当たり、ハードディスクユニット等の電子計算機外部の周辺機器はこれに当たらないものというべきである。

⑻ 各使用商品に関連しては、以下の事実が認められる。
 原告トンボ鉛筆による2015年(平成27年)10月14日付けプレスリリースには、「タブレットやスマートフォン対応のタッチペンを尾栓に搭載したモデルも同時発売します。・・・タッチペン付は、上記多機能ペンに加えてスマートフォンやタブレットが操作しやすい直径6.5ミリ、高さ4ミリ(半円形)の静電容量式タッチペンを尾栓に搭載しました。」との記載がある(甲17)。
 また、各使用商品の掲載された原告トンボ鉛筆のカタログには、「スマートフォン対応のタッチペン搭載指では操作しづらかった細かな箇所もタッチできる細身のタッチペンです。」との記載がある(甲18)。使用商品1の外箱には「Styluspen」とのシールが貼付されている(甲19)。
 スタイラスペンについて文献の記載を見ると、「imidas 2007」には、「スタイラスペンペン型の入力機器で、タブレットやデジタイザー(文字や図形を入力するためのプレート型の装置)で文字や図形、図面の座標を入力するために使われる。」と(甲57)、「カタカナ外来語/略語辞典」(平成11年10月1日、株式会社自由国民社)には、「スタイラス・ペン(stylus pen)〔コンピューター〕座標を指定して図形を入力するためのペン。」と(乙52)、それぞれ記載されている。

⑼ 本件商標の本件書換登録後の指定商品である「電子計算機」の意味について上記⑺で検討した結果を本件に当てはめると、まず、使用商品2については、その仕様は「別紙1 使用商品2」記載のとおりであるところ、上記⑻のとおり、使用商品2は静電容量式のタッチペン付きの尾栓であって、人の指などの導電性の物に代わる入力手段に過ぎないから、上記⑺のとおり、電子の作用をその機械器具の機能の本質的な要素としているものだけを含むとする「電子計算機」に含まれるものとは解しがたい。加えて、「電子計算機」につき、上記のとおり中央処理装置及び電子計算機用プログラムを記憶させた電子回路等の周辺機器のみを含み、補助記憶装置であるハードディスクユニット等の電子計算機外部の周辺機器ですら含まれないと解されることからすれば、電子計算機の中央処理装置及び電子計算機用プログラムの記憶とは何ら関係しない、多機能ペンの尾栓である使用商品2は、電子計算機に含まれる周辺機器に当たるものとは解しがたいというべきである。
 次に、使用商品1は、多機能ペンであって筆記具である上、静電容量式のタッチペン付きの尾栓を備えていることを考慮しても、上記と同様に、人の指などの導電性の物に代わる入力手段に過ぎないから、電子の作用をその機械器具の機能の本質的な要素としているものだけを含むとする「電子計算機」に含まれるものとは解しがたく、電子計算機の中央処理装置及び電子計算機用プログラムの記憶とは何ら関係しない多機能ペンである使用商品1は、電子計算機に含まれる周辺機器に当たるものとも解しがたいというべきである。

2 原告らの主張に対する判断
(1) 原告らは、前記第3の1〔原告らの主張〕⑴及び⑵のとおり、各使用商品は「電子計算機」ないしそこに含まれる周辺機器に当たるから、本件商標の本件取消対象指定商品についての使用の事実の立証がされていると主張する。
 しかし、既に述べたとおり、本件商標の本件書換登録後の指定商品である「電子計算機」は、電子の作用をその機械器具の機能の本質的な要素としているものだけを含み、その電子計算機に含まれる周辺機器も、中央処理装置及び電子計算機用プログラムを記憶させた電子回路等の周辺機器のみがこれに当たり、ハードディスクユニット等の外部周辺機器はこれに当たらないと解されるところ、各使用商品は、いずれもそこにいう「電子計算機」に該当するものとは認められないというべきである。なお、原告らの主張のうち、本件書換登録が書換登録ガイドラインに従ったものであるとする点についての判断は後記⑶のとおりである。
 したがって、原告らの上記主張は採用することができない。

⑵ 原告らは、前記第3の1〔原告らの主張〕⑶のとおり、「商品及び役務の区分解説〔国際分類第9版対応〕」(甲56)によれば、本件書換登録の申請時においても、電子計算機は周辺機器を含むものとして考えられていたとし、「周辺機器」についての辞書等の記載によれば、スタイラスペンが入力装置として解説されていることなどから、各使用商品は、入力装置であるスタイラスペン(ペン型データ入力具)の性質を有するものとして、「電子計算機」の周辺機器に含まれる旨を主張する。
 しかし、上記1⑶イの「商品及び役務の区分解説〔国際分類第9版対応〕」(甲56)の記載を含め、本件書換登録後の指定商品である「電子計算機」に含まれる周辺機器については、中央処理装置及び電子計算機用プログラムを記憶させた電子回路等の周辺機器のみがこれに当たるものであり、ハードディスクユニット等の外部周辺機器がこれに当たらないと解されることについては既に述べたとおりである。そして、上記1⑻のとおり、使用商品1の外箱には「Styluspen」とのシールが貼付されていたけれども、各使用商品が本件書換登録後の指定商品である「電子計算機」に含まれないことについては、上記1⑼で述べたとおりである。
 したがって、原告らの上記主張は採用することができない。
⑶ 原告らは、前記第3の1〔原告らの主張〕⑵及び⑷のとおり、原告トンボ鉛筆は、本件書換登録の申請に当たり、本件書換登録申請日当時の書換ガイドラインに沿って書き換えを行ったに過ぎないから、本件書換登録後の指定商品「電子計算機」は、本件書換登録前の「電子計算機〔中央処理装置及びその周辺機器(電子計算機用プログラムを記憶させた電子回路、磁気ディスク、磁気テープを含む)〕」と同義であるところ、書換前の「その周辺機器」には各使用商品が含まれるから、書換後の「電子計算機」についても同様に解すべき旨を主張する。
 しかし、上記1⑸エのとおり、書換ガイドラインの一覧表上に昭和34年法に基づく商品として記載されているのは「電子計算機」であって、本件書換登録前の本件商標の指定商品であった「電子計算機〔中央処理装置及びその周辺機器(電子計算機用プログラムを記憶させた電子回路、磁気ディスク、磁気テープを含む)〕」と同一ではないから、原告トンボ鉛筆の行った書換は、必ずしも書換ガイドラインの一覧表に示された通りの書換を行ったものとはいえない。加えて、そもそも書換ガイドラインは、上記1⑸ウにあるとおり、基準的な性格のものに過ぎない上に、一覧表の書換表示以外の書換表示であっても、それが書換登録申請に係る商標権の指定商品の範囲内の適切な商品表示であれば、その書換表示による書換も認められるのであるから、本件申請時の商品等区分に従い、本件書換登録前の指定商品の記載に基づいて原告トンボ鉛筆が指定商品に含まれると考える商品について書換申請を行うことも可能であったということができる(上記1⑸エ)。なお、本件書換登録申請日当時の「類似商品・役務審査基準」が適用される間における書換登録においても、書換前の第11類「電子計算機〔中央処理装置およびその周辺機器(電子計算機用プログラムを記憶させた電子回路、磁気ディスク、磁気テープを含む)〕」及びこれと類似する記載を、第9類「電子計算機〔中央処理装置及びその周辺機器(電子計算機用プログラムを記憶させた電子回路、磁気ディスク、磁気テープを含む)」などや、これと類似する記載に書き換えた例も存するところである(乙47ないし49、51)。
 さらに、上記の点を措くとしても、上記1⑸ウの書換ガイドライン利用上の注意事項(「旧区分の1の商品に対して書換表示が複数の商品となる場合は、各商品の配列を五十音順とし、各商品間をカンマ(,)で区切っている。」)から明らかなとおり、そもそも同ガイドラインの一覧表に示された記載に沿って商品「電子計算機」の書換登録を行ったとする場合の書換後の商品は、上記1⑸エのとおり「電子計算機」及び「電子計算機用プログラム」の二つの商品であり、指定商品を実質的に超えない範囲で書換登録がなされるものであること(上記1⑸ア、イ)に鑑みれば、二つの商品に書換えられた後の一方の商品である「電子計算機」が、書換前の商品「電子計算機」と内容的に全く同一とはいえないことも明らかである。
 そして、商標法附則12条3項が「(書換の)申請書に記載されなかった指定商品に係る商標権は、登録の時に消滅する。」と規定するところから、書換登録がなされた後にあっては、該商標の指定商品については、書換後の指定商品の内容に従って客観的に定まるものと解される。これに沿って解した場合の、本件書換登録後の本件商標の指定商品である「電子計算機」の意義、及び各使用商品がこれに当たらないことについては、既に検討したとおりである。
 したがって、原告らの上記主張は採用することができない。

 

解説/検討

 本判決は、原告トンボのタッチペンについて、第9類「電子計算機、電子計算機用プログラム、電子式卓上計算機」(以下「本件取消対象指定商品」という。)に対する使用とは認めなかった。
 「電子計算機」につき、中央処理装置及び電子計算機用プログラムを記憶させた電子回路等の周辺機器のみを含み、補助記憶装置であるハードディスクユニット等の電子計算機外部の周辺機器ですら含まれないと解されることからすれば、電子計算機の中央処理装置及び電子計算機用プログラムの記憶とは何ら関係しないと判断していることも妥当性が高いと思われる。
 本件書換登録申請日当時の書換ガイドラインに沿って書き換えを行ったに過ぎないから、本件書換登録後の指定商品「電子計算機」は、本件書換登録前の「電子計算機〔中央処理装置及びその周辺機器(電子計算機用プログラムを記憶させた電子回路、磁気ディスク、磁気テープを含む)〕」と同義であるところ、書換前の「その周辺機器」には各使用商品が含まれるから、書換後の「電子計算機」についても同様に解すべきとの主張は一理あるかのようには思われるが、書換ガイドラインの一覧表上に昭和34年法に基づく商品として記載されているのは「電子計算機」であって、本件書換登録前の本件商標の指定商品であった「電子計算機〔中央処理装置及びその周辺機器(電子計算機用プログラムを記憶させた電子回路、磁気ディスク、磁気テープを含む)〕」と同一ではないから、原告トンボ鉛筆の行った書換は、必ずしも書換ガイドラインの一覧表に示された通りの書換を行ったものとはいえないと判断されている。
 被告補助参加人は、別紙2商標権目録記載の商標権を有しており、同商標権に基づいて、令和3年11月30日、東京地方裁判所に、原告ズームを被告とする商標権侵害行為差止等請求訴訟を提起し(同裁判所令和3年(ワ)第30910号)、同訴訟は係属中であり、原告ズームは、分割譲渡を受けた商標権に基づき、登録商標の使用の抗弁及び権利濫用の抗弁を主張しているとのことであるが、今回の審決による判断は当該侵害訴訟に対して大きな影響を与えるものと考えられる。

 

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