【再生用ディスクドライブと運動機器用データ処理装置・モバイルアプリ類似商品と判断された事件】
投稿日:2026年4月30日 |
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著者:弁理士 井出 麻衣子
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参照条文/キーワード/論点 |
商標法第4条第1項第11号 |
ポイント
本件は、第9類に属する「音楽・映像データ再生用ディスクドライブ」と、「運動機器に用いられるデータ処理装置・モバイルアプリ」との商品類否が争われた事件である。知財高裁は、生産・販売実情、用途、需要者の共通性より、いずれも「電子計算機関連商品」とであって類似すると判断した。 |
判決概要 |
| 裁判所 | 知的財産高等裁判所第2部 |
| 判決言渡日 | 令和6年11月27日 |
| 事件番号 | 令和6年(行ケ)第10051号 |
| 事件名 | 審決取消請求事件 |
| 裁判長裁判官
裁判官 裁判官 |
清水 響
菊池 絵理 頼 晋一 |
事案の概要
本件は、商標登録出願の拒絶査定に対する不服審判請求について、特許庁が請求不成立とした審決の取消しを求める事案である。商標法4条1項11号の該当性が争われ、裁判所は本件商標と引用商標は類似するとして、商標法4条1項11号に該当すると判断した。
| 原告 | 被告 |
| <本件商標> 商願2021-62194 商標:ラクレコ 出願人: 株式会社バッファロー 9類: 音楽・映像データの取り込み・再生用ディスクドライブ 42類:電子計算機用プログラムの提供等 |
<引用商標> 商標登録第6434946号 商標:ラクレコ 商標権者:株式会社オカモトホールディングス 9類: ウエイトトレーニング機械器具で測定された負荷重量・マシーンの変位量・回動数・回動スピードのうちいずれか一以上の値を受信して表示するデータ処理装置,運動用トレッドミルで測定されたローラーベルトの傾斜角度・走行距離・運動経過時間・平均走行速度・消費カロリ・利用者の体重・歩数・歩幅・ピッチ・心拍数のうちいずれか一以上の値を受信して表示するデータ処理装置ダウンロード可能なモバイル機器用のアプリケーションソフトウェア,他28、41、42類 |
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審決の判断
Ⅱ.審決の理由の要旨(抜粋)
(ア)指定商品の類否について
指定商品が類似のものであるかどうかは、商品自体が取引上誤認混同のおそれがあるかどうかにより判定すべきものではなく、それらの商品が通常同一の営業主により製造され又は販売されている等の事情により、それらの商品に同一又は類似の商標を使用するときは同一営業主の製造又は販売に係る商品と誤認されるおそれがあると認められる関係にある場合には、たとえ、商品自体が互いに誤認混同を生ずるおそれがないものであっても、類似の商品に当たると解するのが相当である(最高裁判所昭和33年(オ)第1104号同36年6月27日判決)。
そして、商品の類否判断は、取引の実情、すなわち、商品の生産部門、販売部門、原材料及び品質、用途、需要者の範囲が一致するかどうか、完成品と部品との関係にあるかどうか等を総合的に考慮して判断すべきである(東京高等裁判所平成7年(行ケ)第161号同8年3月21日判決)。
(イ)本願商標の指定商品「音楽・映像データの取り込み・再生用ディスクドライブ」と引用商標の指定商品及び指定役務中、第9類「ウエイトトレーニング機械器具で測定された負荷重量・マシーンの変位量・回動数・回動スピードのうちいずれか一以上の値を受信して表示するデータ処理装置,運動用トレッドミルで測定されたローラーベルトの傾斜角度・走行距離・運動経過時間・平均走行速度・消費カロリ・利用者の体重・歩数・歩幅・ピッチ・心拍数のうちいずれか一以上の値を受信して表示するデータ処理装置」との類否について
お
本願商標の指定商品である第9類「音楽・映像データの取り込み・再生用ディスクドライブ」は、請求人主張のとおり、CDやDVDなどの光学ディスクに記録された電子データを読み取る装置であり、電子計算機等、音楽や映像データを処理する機器とともに利用されるものとみるのが相当であり、電子計算機の周辺機器及び関連製品の製造者が生産し、電気店又は家電量販店等で販売され、電子計算機等のデータ処理装置の利用者全般が需要者となり得る商品である。
一方、引用商標の指定商品である第9類「ウエイトトレーニング機械器具で測定された負荷重量・マシーンの変位量・回動数・回動スピードのうちいずれか一以上の値を受信して表示するデータ処理装置,運動用トレッドミルで測定されたローラーベルトの傾斜角度・走行距離・運動経過時間・平均走行速度・消費カロリ・利用者の体重・歩数・歩幅・ピッチ・心拍数のうちいずれか一以上の値を受信して表示するデータ処理装置」は、各種の運動に関する機械で測定した電子データを処理する装置とみるのが相当であり、電子計算機に関連する装置であると考えるのが相当である。そうすると、電子計算機関連の製造者が製造するものであり、電気店又は家電量販店等で販売され主に運動に関する機械を使用する施設や個人が主な需要者となり得る商品である。
以上のことからすると、両指定商品は、生産部門及び販売部門が共通又は近似し、音楽や映像データを処理する機器とともに利用されるもの又は電子データを処理する装置という用途において共通性を有し、本願商標の指定商品の需要者は、広く電子計算機等のデータ処理装置の利用者全般であり、引用商標の上記指定商品の需要者と一致する場合もあると考えられることからすれば、これらの指定商品に同一又は類似する商標が使用された場合には、同一営業主の提供に係る商品と誤認されるおそれがあるとみるのが相当であり、両者は類似の商品といえる。
(ウ)本願商標の指定商品「音楽・映像データの取り込み・再生用ディスクドライブ」と引用商標の指定商品及び指定役務中、第9類「ダウンロード可能なモバイル機器用のアプリケーションソフトウェア」との類否について
本願商標の指定商品である第9類「音楽・映像データの取り込み・再生用ディスクドライブ」は、上記(イ)のとおりである。
一方、引用商標の指定商品である第9類「ダウンロード可能なモバイル機器用のアプリケーションソフトウェア」は、携帯情報端末等で用いるためのコンピュータプログラムであって、ダウンロードを通じて提供される商品であり、電子計算機関連の製造者が生産し、電気店又は家電量販店等のウェブサイト上で販売され、携帯情報端末等のデータ処理装置の利用者全般が需要者となり得る商品である。
なお、別掲に示すとおり、「データの取り込み・再生用ディスクドライブ」装置を機能させるために必要なコンピュータプログラムが存在し、ディスクドライブとは別にダウンロード形式で提供されている実情も認められる。以上のことからすると、両指定商品は、生産部門及び販売部門が共通又は近似し、音楽や映像データを処理する機器又は携帯情報端末等とともに利用されるという用途において共通性を有し、本願商標の指定商品の需要者は、広く電子計算機等のデータ処理装置の利用者全般であり、引用商標の上記指定商品の需要者と一致する場合があり、加えて、本願商標の指定商品も含まれる「データの取り込み・再生用ディスクドライブ」装置について、当該商品を機能させるために必要なコンピュータプログラムが存在し、ディスクドライブとは別にダウンロード形式で提供されている実情があると考えられることからすれば、これらの指定商品に同一又は類似する商標が使用された場合には、同一営業主の提供に係る商品と誤認されるおそれがあるとみるのが相当であり、両者は類似の商品といえる。
(エ)小括
以上のとおり、本願商標の指定商品と引用商標の指定商品は類似するものである。
判旨
Ⅲ.裁判所の判断
第4 当裁判所の判断
1 原告は、本願指定商品と引用商標の指定商品は類似しないから、これが類似するなどとして商標法4条1項11号該当性を認めた本件審決の判断には誤りがあるなどと主張する。 指定商品が類似のものであるかどうかは、商品自体が取引上誤認混同のおそれがあるかどうかにより判定すべきものではなく、それらの商品が通常同一営業主により製造又は販売されている等の事情により、それらの商品に同一又は類似の商標を使用するときは同一営業主の製造又は販売に係る商品と誤認されるおそれがあると認められる関係にある場合には、たとえ、商品自体が互いに誤認混同を生ずるおそれがないものであっても、類似の商品に当たると解するのが相当である(最高裁判所昭和33年(オ)第1104号同36年6月27日第三小法廷判決・民集15巻6号1730頁)。 そこで、判断枠組みを踏まえ、本願指定商品と引用商標の指定商品の類否について検討する。
2 検討
⑴ 本願指定商品及び引用商標の各指定商品
ア 本願指定商品は「音楽・映像データの取り込み・再生用ディスクドライ ブ」である。そして、ディスクドライブとは、HD、CD、DVDなどディスクを読み書きするための装置の総称であり(乙1)、データのバックアップコピーの作成、音楽・動画等の再生、ソフトウェアのインストール等のために使われる電子計算機の周辺機器であるから(甲18、19、乙2、3)、本願指定商品は、音楽・映像データの取り込み・再生をするための電子計算機の周辺機器である。
イ 他方、引用商標データ処理装置は「ウエイトトレーニング機械器具で測定された負荷重量・マシーンの変位量・回動数・回動スピードのうちいずれか一以上の値を受信して表示するデータ処理装置、運動用トレッドミルで測定されたローラーベルトの傾斜角度・走行距離・運動経過時間・平均走行速度・消費カロリ・利用者の体重・歩数・歩幅・ピッチ・心拍数のうちいずれか一以上の値を受信して表示するデータ処理装置」である。そして、データ処理とは、必要な情報を得るためにデータに対して行う一連の作業であって、例えば、コンピュータが大量の資料について集計・分類・照合・翻訳等の算術的・論理的処理を行うことを意味し、データ処理装置とは、電子計算機のことであるから(乙4)、引用商標データ処理装置は、前記の情報を受信して表示するための電子計算機である。
ウ また、引用商標ソフトウェアは「ダウンロード可能なモバイル機器用のアプリケーションソフトウェア」である。そして、モバイル機器とは、携帯型の情報処理機器(モバイル端末)を意味し(乙5、6)、ソフトウェアとは、電子計算機を動作させるためのプログラムのことであるから(乙7)、引用商標ソフトウェアは、モバイル端末で使用される電子計算機を動作させるためのプログラムである。
エ したがって、本願指定商品、引用商標データ処理装置及び引用商標ソフトウェアは、いずれも電子計算機に関連する商品として、電子計算機による処理を行う際に通常用いられるという商品であるという意味において、共通性がある。
⑵ 生産及び販売の実情
ア 本願指定商品、引用商標データ処理装置及び引用商標ソフトウェアのようなディスクドライブ、電子計算機及びソフトウェアは、いずれも製造業の同一事業者が生産、販売している例が多く認められる。すなわち、日本電気株式会社は、DVD-ROMドライブ等、ウェアラブルデバイスを活用したNEC感情分析ソリューション、ヘルスケア関連 アプリケーションソフトウェア等の開発及び製品の製造販売を行い〔乙8~11〕、株式会社日立製作所は、DVD-ROM・CD-R/RWドライ ブ、ウェアラブルデバイスによる作業動作の評価、プラットフォームソフトウェア等の開発、製品化及び販売を行い〔乙12~15〕、ELECOM株式会社は、スマホ用CDレコーダ、スマートフォンアプリ連携のトレーニング製品、マウスのボタンに機能を割り当てるソフトウェア等の開発、製造、販売を行い〔乙16~19〕、Apple社は、CD・DVDの再生等ができるUSB Super Drive、フィットネスに関する動きを記録するApple Watch、ヘルスケアとフィットネス等のアプリケーションソフトウェア等の開発、製造販売を行い〔乙20~24〕、パナソニックコネクト株式会社は、CD-ROMドライブ等機器、ソフトウェアの開発、製造、販売等を行い〔乙25、26〕、富士通クライアントコ ンピューティング株式会社は、パソコン、タブレット、ペリフェラル等、 プラットフォーム、ソフトウェア等の開発、販売等を行い〔乙27~29〕、株式会社日本HPは、HP製USBスーパーマルチドライブや、HP製ソフトウェアの製造販売等を行い〔乙30~32〕、株式会社アイ・オー・データ機器は、ポータブルDVDドライブのほか、電子帳簿保存法対応アプ リケーション等の製造、販売等を行い〔乙33、34〕、パイオニア株式会社は、ポータブル外付け型ブルーレイドライブのほか、スマートフォンで使用できる各種アプリ等の製造、販売等を行っていることが認められる 〔乙35、36〕。また、家電量販店やパソコン及び周辺機器を扱う専門店(ビックカメラ.com、ヨドバシ.com、ヤマダウェブコム、エディオン公式通販、パソコン工房、TSUKUMO、ドスパラ、パソコンSHOPアーク〔乙37~44〕)においても、ディスクドライブ、電子計算機及びソフトウェアは、同一販売店において扱われていることが認められる。したがって、本願指定商品、引用商標データ処理装置及び引用商標ソフトウェアは、同一営業主により製造及び販売され、又は、同一販売店により販売される実情にある。
イ この点について、原告は、本願指定商品と引用商標データ処理装置及び引用商標ソフトウェアは、総務省日本標準産業分類において属する産業を異にするなどと主張する。しかしながら、引用商標データ処理装置は、電子計算機であるから、本願指定商品と同じ「(中分類)情報通信機械器具製造業」(甲25)に属するというべきであり、原告の主張する「(中分類)業務用機械器具製造業」「(細分類)その他の事務用機械器具製造業」(甲26)に属するものと解することはできない。また、原告は、本願指定商品、引用商標データ処理装置及び引用商標ソフトウェアは、いずれも専門的に製造する業者が多数存在する実情があるので生産部門は共通しないとか、本願指定商品が一般需要者向けの直販サイト又は家電量販店等で販売されるのに対し、引用商標データ処理装置及び引用商標ソフトウェアは、企業間取引に対応する特定の専門業者により販売されるから、販売部門も共通しないなどと主張する。しかしながら、 前記のとおり、本願指定商品、引用商標データ処理装置及び引用商標ソフトウェアは、いずれもディスクドライブ、電子計算機及びソフトウェアという電子計算機に関連する商品として同一営業主により開発され、製造及び販売され、又は、同一販売店により販売される実情にあるから、営業主の同一性を誤認させるような生産・販売形態における共通性があるものと認めるのが相当である。よって、原告の主張を採用することはできない。
⑶ 用途
ア 前記のとおり、本願指定商品、引用商標データ処理装置及び引用商標ソフトウェアは、それぞれディスクドライブ、電子計算機及びソフトウェアであり、いずれも電子計算機に関連する商品である。そして、本願指定商品と引用商標データ処理装置は、いずれも電子計算機に関連し、電子データを利用し、これを読み込み・再生し、又はこれを処理することを目的とするものである。また、本願指定商品と引用商標ソフトウェアは、いずれも電子計算機に関連し、本願指定商品は電子計算機を動作させて音楽・映像データの取り込み・再生を行う周辺機器として、引用商標ソフトウェアは電子データを利用し、電子計算機の周辺機器又は電子計算機を動作させるためのプログ ラムとして、それぞれ電子計算機の機能を実現させることを目的とするものである。これらの点に照らすと、本願指定商品、引用商標データ処理装置及び引用商標ソフトウェアは、それぞれ役割が異なるものの、いずれも電子計算機による処理又は電子データの利用を行うために用いられる商品という意味において、その用途に共通点があるということができる。
イ この点につき、原告は、本願指定商品の用途は、光学ディスクに記録された音楽・映像に関する電子データの読み取り・再生であり、引用商標データ処理装置の用途は、運動に関するデータを取り込み表示するためのデータ処理であって用途を異にし、また、引用商標ソフトウェアは、データの読み取りという用途は、本願指定商品の用途と共通するが、ディスクドライブとその動作のためのアプリケーションソフトは担う具体的な役割が異なるなどと主張する。しかしながら、前記のとおり、本願指定商品、引用商標データ処理装置及び引用商標ソフトウェアは、電子計算機による処理又は電子データの利用を行うために用いられる商品であるという共通点があり、およそ営業主の同一性誤認の可能性を否定するほど用途を異にするものということはできないから、原告の主張を採用することはできない。
⑷ 需要者の範囲
ア 本願指定商品は「音楽・映像データの取り込み・再生用ディスクドライ ブ」であるから、電子計算機の周辺機器として、その需要者は、電子計算機の利用者全般である一般の消費者を含むものということができる。他方、引用商標データ処理装置は「ウエイトトレーニング機械器具で測定された負荷重量・マシーンの変位量・回動数・回動スピードのうちいずれか一以上の値を受信して表示するデータ処理装置、運動用トレッドミルで測定されたローラーベルトの傾斜角度・走行距離・運動経過時間・平均 走行速度・消費カロリ・利用者の体重・歩数・歩幅・ピッチ・心拍数のうちいずれか一以上の値を受信して表示するデータ処理装置」であるから、前記の情報を受信して表示するためのデータ処理装置(電子計算機)とし、その需要者は、前記のウエイトトレーニング機械器具又は運動用トレッドミルの利用者である。そして、これらの運動用器具は、家庭用又は自宅利用のためにも販売され(乙45~47)、モバイル端末とともに利用される場合もあることからすると(乙17、21)、その需要者は、前記の運動用器具を利用する施設等の取引者のほか、一般の消費者を含むものということができる。また、引用商標ソフトウェアは「ダウンロード可能なモバイル機器用のアプリケーションソフトウェア」であるから、モバイル端末を動作させるためのプログラムとして、その需要者は、モバイル機器を利用する取引者のほか、一般の消費者を含むものである。よって、本願指定商品、引用商標データ処理装置及び引用商標ソフトウェアの各需要者は、いずれも広く一般の消費者を含むものとして需要者の範囲において共通している。
イ この点につき、原告は、本願指定商品の需要者の範囲は、一般家電需要者であるのに対し、引用商標データ処理装置の需要者の範囲は、主に運動 用機械の使用施設を運営する専門的知見を持つ事業者等であるから共通せず、引用商標ソフトウェアの需要者の範囲は、広く一般消費者のほか特定分野の専門家又は事業者等であるから、一部共通しても一致しないなどと主張する。しかしながら、引用商標データ処理装置が、専門的知見を持つ事業者により利用されている実情があるとしても、前記のとおり、一般消費者においても利用されている実情にあるから、需要者の範囲に係る原告の主張は、 利用態様の一部をいうにとどまる。また、引用商標ソフトウェアについては、原告においても、需要者の範囲に一般消費者が含まれることを認めるのであるから、本願指定商品の需要者の範囲と共通するものと認めるのが 相当である。そして、このように本願指定商品、引用商標データ処理装置及び引用商標ソフトウェアの需要者にはいずれも一般消費者が含まれていると認められる以上、これらの商品やソフトウェアには需要者の共通性が認められるというべきである。原告の主張を採用することはできない。
⑸ 完成品と部品の関係等
本願指定商品と引用商標データ処理装置又は本願指定商品と引用商標ソフトウェアは、いずれも完成品と部品の関係にはなく、需要者の範囲は共通し ている。その他、本願指定商品、引用商標データ処理装置又は引用商標ソフ トウェアについて、同一営業主の製造又は販売に係る商品と誤認されるおそれがないことを窺わせるような特段の事情も見当たらない。
⑹ 小括
以上によれば、本願指定商品と引用商標データ処理装置及び引用商標ソフトウェアは、その生産・販売形態、用途、需要者の範囲において共通性があり、これらの商品に同一又は類似の商標を使用するときは、同一営業主の製 造又は販売に係る商品と誤認されるおそれがあると認められる関係にあるというべきであるから、本願指定商品と引用商標の指定商品は類似の商品に該当すると認めるのが相当である。そうすると、本願商標は、他人の登録商標である引用商標と同一の商標であって、引用商標の指定商品に類似する商品について使用するものであり、商標法4条1項11号に該当するものとして登録することはできないから、拒絶査定不服審判の請求を成り立たないものとした本件審決の判断に誤りはない。
第5 結論
したがって、原告の請求は理由がないから、これを棄却することとして、主文のとおり判決する。
解説/検討
引用商標の指定商品1は「ウエイトトレーニング機械器具で・・データ処理装置,運動用トレッドミルで・・データ処理装置」など商品表示を限定しているものの、「データ処理装置とは、電子計算機のことであるから、引用商標データ処理装置は、前記の情報を受信して表示するための電子計算機である」と認定された。そして、本願指定商品「音楽・映像データの取り込み・再生用ディスクドライブ」と生産部門、販売部門、原材料、用途及び需要者のすべてにおいて共通するとして類似と判断されている。
「商品(役務)の類否」は商標権の権利範囲を画するものである(商標法37条1号)ことから、登録段階において類似範囲を狭く設定してしまうと、権利を乱立させる事態を招いてしまう虞がある。しかしながら、電子計算機プログラムや電子計算機等は、用途において汎用性があり、様々な分野において利用されることが想定されるものであることから、権利範囲が広範になりすぎてしまうことが懸念される。
例えば、以下のように医療用機械器具に含まれる商品同士については、積極表示の指定商品同士は非類似と判断されているケースもある。医療用機械器具と異なり、電子計算機プログラムや電子計算機等は流通経路に競合性が存在しないとはいいにくいという特殊性はあるかもしれないが、本件の場合ももう少し具体的に商品の類否が判断されてもよかったのではないかと思われる。
<不服2002-14264>
10類「物理療法機器用電極」
10類「医療用腕環」
⇒非類似
「物理療法機器用電極」は、電気刺激等によって患者の疾患の治療に当たるいわゆる物理療法・理学療法用の大型機器の部品であって、その生産者・販売者は専門的な技術・経験を蓄積したメーカーであり、需要者はそのような治療を行うことのできる大手の病院で、商品の販売方法も専門知識を有する販売員が定期的に顧客である病院を訪れ、メンテナンスや部品の交換などを行う形で取引されるものということができる。一方、引用各商標の指定商品に含まれる第5類「医療用腕輪」は、「磁気を利用した治療用腕環等、専ら医療用のものに限られる」(特許庁商標課編「商品及び役務の区分解説」)とされているものであるが、これら商品は、医療用とはいうものの一般には、健康機器メーカーや貴金属店等において生産され、販売場所は店頭又は通信販売が主と認められ、主な需要者は一般需要者ということができる。してみれば、本願商標の指定商品「物理療法機器用電極」と引用各商標の指定商品中の「医療用腕環」とは、その生産・販売部門、需要者及び用途等からみて、全く別異のものであり、取引上互いに混同を生じさせるおそれがあるものとはいえず、これらは互いに類似する商品とはいえないものである。
<不服2000-09810>
10類「外科用人造皮膚,培養外科用人造皮膚,代替用外科用人造皮膚,仮合成表皮膚と結合した代替用外科用人造皮膚,弾性のストッキング,代替用外科用皮膚組織,傷を一時的にカバーする代替用皮膚組織」
10類「生物検体の作成において細胞及び細胞粒子の収集及び移動に用いるためのフィルター容器及びろ過装置」
⇒非類似
共に医師や検査技士等により医療機関において用いられるものであるとしても、その使用される形態はもちろんのこと、その用途、用法、機能を全く異にしているものであって、その流通経路も明らかに相違するといい得るから、両商品が競合するとみることは困難であり、両商標がそれぞれ上記の指定商品について使用されたとしても、その商品が同一営業主の製造又は販売に係る商品であると誤認混同されるおそれはなく、両商品は類似するものではないというのが相当
<不服2003-16975>
10類「ヒト病原菌の同定及び抗菌感受性試験に使用する医療用機械器具(耳鼻科において使用するものを除く。)」
10類「医療用補聴器及びその部品」
⇒非類似
その需要者、取引者、流通経路、用途、販売場所等といった取引の実情に照らせば、その流通経路が競合するとみることは困難であり、互いの商標が使用された場合、その商品が同一の営業主の製造または販売に係る商品であると誤認混同されるおそれはなく、両商品は類似するものではないというのが相当


