【商品「生ゴミ処理機」と役務「生ゴミ処理機の貸与」の類否】

 

投稿日:2026年4月24日

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著者:弁理士 大塚 啓生
*本記事は、筆者の個人的見解であり、当事務所を含め、筆者が所属する如何なる団体の見解も表示するものではありません。
*判決等に筆者が適宜下線や太字強調等を付している場合があります。


参照条文/キーワード/論点

商標法4条1項11号/商品と役務の類否

 

ポイント

※本件は、商標登録無効審判の請求不成立審決に対する取消訴訟である。
※商標法4条1項11号の該当性が争われ、裁判所は本件商標の指定役務と引用商標の指定商品は類似するとして、商標法4条1項11号に該当すると判断した。

 

判決概要

裁判所 知的財産高等裁判所第3部
判決言渡日 令和7年12月1日
事件番号 令和6年(行ケ)第10056号
事件名 審決取消請求事件
裁判長裁判官
裁判官
裁判官
中平 健
今井 弘晃
水野 正則
 

判決へのリンク(裁判所HPへ)


事案の概要

 被告が7類及び40類の商品役務を指定して「ゴミサー」(商願2019-121373)を出願したところ、7類の商品を指定した原告の「ゴミサー」(第5769618号)を引用して拒絶されたため、被告は40類の役務を分割出願して登録が認められたが(第6414447号)、本件商標に対して原告が商標登録無効審判を請求し、当該請求は成り立たないとの審決がされたことから、原告が上訴した事案。裁判所は、審決を取り消すと判断した。


争点

第7類「生ゴミ処理機」と第40類「生ゴミ処理機の貸与」の類否


争点に関する当事者の主張

被告の主張:建設機械の業界と「生ゴミ処理機」の業界とでは、製品の特性、価格、主要な需要者層等の取引の実情が全く異なり、取引実態の異なる他の業界の事例は、本件指定役務と引用指定商品との類否判断の参考とならない。

   

審決の判断

 「生ゴミ処理機の貸与」と「生ゴミ処理機」の一般的、恒常的な取引の実情において、貸与と商品の販売とは、流通形態を異にするものであり、また、商品の貸与を業とする者は、当該商品の製造・販売業者ではなく、リース又はレンタルする事業者であることが一般的であるといえる。なお、仮に当該商品の製造・販売業者がリース等の業務も行っていたとしても、前記のとおりそれが一般的、恒常的な取引の実情とはいえず、「生ゴミ処理機」の製造、販売する事業者とそれをリース又はレンタルする事業者が必ずしも一致するとはいえない。また、前記商品と役務の用途については、「生ゴミ処理機の貸与」は、他人の求めに応じて物品を貸与することが当該役務の本質であるといえることから、その用途は、「生ゴミ処理機の貸与のため(用)」であるのに対し、「生ゴミ処理機」の用途は、正に生ゴミを処理・分解するための商品そのものであるから、必ずしも用途が一致するとはいえない。
(中略)
 上記によれば、本件指定役務中の「生ゴミ処理機の貸与」と引用指定商品中の「生ゴミ処理機」については、それらの製造・販売者及び提供者、用途、販売場所及び提供場所が異なり、需要者の範囲において一致する場合があるとしても、一般的、恒常的な取引の実情を勘案して総合的に考慮すると、当該役務と商品とは相違するものである。


判旨

 引用指定商品と同じ第7類に属する建設機械について、その製造業者又はその関連会社が、販売とともに貸与(レンタル)も行っているという取引の実情がある。これに加え、複写機、プリンター等の出力機器や事務用機器等の商品を取り扱う会社においても、会社の目的に商品の販売と貸与の両方を挙げる会社が複数存在する(なお、被告も、会社の目的に「産業用機械器具の製造、販売及び賃貸」が含まれている[弁論の全趣旨]。)。機械に商標を使用する者がその機械の貸与も行っていることは、通常、特に意外なこととまではいえず、むしろ、予想し得る範疇のことといえる。また、本件指定役務の需要者は生ゴミ処理機を使用する者であり、引用指定商品の需要者も、その多くは、生ゴミ処理機を使用する者であると推認されるから、双方の需要者は多くの部分で共通する。
 これらの事情を考慮すれば、本件指定役務と引用指定商品に同一又は類似の商標を使用する場合には、同一営業主の製造、販売又は提供に係る商品又は役務と誤認されるおそれがあると認められる関係があるということができる。したがって、本件指定役務と引用指定商品は類似するものと認められる。

 

解説/検討

 本判決のポイントは、40類「生ゴミ処理機の貸与,化学機械器具の貸与」と7類「生ゴミ処理機,液体肥料製造装置」が類似すると判断した点である。商品と役務が互いに類似する場合があることは、法律上定められており(商標法2条6項)、審査基準においても「商品の製造・販売と役務の提供が同一事業者によって行われているのが一般的であるかどうか」等の事情を総合的に考慮した上で個別具体的に判断するとしている。
 また、9類「電子計算機用プログラムを記憶させた記録媒体」と42類「電子計算機プログラムの設計・作成又は保守」が類似すると判断した裁判例もある(東京地裁平成9年(ワ)第16468号)。直近では、40類「義歯の加工(「医療材料の加工」を含む。)」と5類「歯科用材料」及び10類「歯科用機械器具」の類似性を認めた「三金工業」事件もある(知財高裁令和5年(行ケ)第10087号事件)。
 しかしながら、本判決は論理には疑問が幾つか残る。一つは、本件商標と引用商標の指定商品役務が「生ゴミ処理機」であったが、建設機械の業界における販売と貸与の実情を考慮したことである。また、当該実情を証明する資料が本件商標の登録査定日より後のものであったが、これらの会社の設立が査定日よりも前であったことから、「同登録査定日の時点においても建設機械の貸与を行っていたと推認される」と判断したことも論理が飛躍しているように思える。
 商品役務間の類似を認めること自体は否定しないが、実務に与える影響の大きさに鑑みると、裁判所は慎重に判断すべきである。

 

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