【「キャラクター図形+文字」からなる結合商標について、文字部分を要部抽出して同一の文字列よりなる商標と類似と判断した事件 】

 

投稿日:2026年5月20日

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著者:弁理士 井出 麻衣子
*本記事は、筆者の個人的見解であり、当事務所を含め、筆者が所属する如何なる団体の見解も表示するものではありません。
*判決等に筆者が適宜下線や太字強調等を付している場合があります。


参照条文/キーワード/論点

商標の類否/商標法4条1項11号

 

ポイント

※本件は、本願商標「リッキー」の文字商標と、先行商標「キャラクター図形+リッキー」の結合商標との類否が争われた審決取消訴訟である。知財高裁は、全体の外観において相違し、観念上は比較できないものの、先行商標中の文字「リッキー」部分を要部として抽出できるとし、外観が近似し称呼が類似するため、両者は類似すると判断した。


判決概要

裁判所 知的財産高等裁判所第3部
判決言渡日 令和8年3月24日
事件番号 令和7年(行ケ)第10102号
事件名 審決取消請求事件
裁判長裁判官
裁判官
裁判官
中平 健
今井弘晃
水野正則
 

判決へのリンク(裁判所HPへ)


事案の概要

 以下の文字商標「リッキー」に対して、図形及び「リッキー」の結合商標を引用商標として拒絶した審決の取消しを求める事案であり、商標法4条1項11号該当性が争点となる。
 

本件商標             引用商標
商願2023-100400
「リッキー」(標準文字)

第16類「メモ帳、シール、ペンシルケース、文房具類、定期刊行物、小冊子、印刷物」
登録第6517882号
画像
指定商品役務(抵触する区分のみ)
第16類「事務用又は家庭用ののり及び接着剤、封ろう、マーキング用孔開型板、装飾塗工用ブラシ、紙製包装用容器、プラスチック製包装用袋、家庭用食品包装フィルム、紙製ごみ収集用袋、プラスチック製ごみ収集用袋、型紙、裁縫用チャコ、紙製のぼり、紙製旗、衛生手ふき、紙製タオル、紙製テーブルナプキン、紙製手ふき、紙製ハンカチ、荷札、印刷したくじ(『おもちゃ』を除く。)、紙類、文房具類、印刷物、書画、写真、写真立て」


判旨

1 取消事由(本願商標と引用商標との類否判断の誤り)について
⑵本願商標について
 本願商標は、「リッキー」の文字を標準文字で表してなるものである。「リッキー」の語は、英語の辞書(新英和中辞典第7版。乙3)には、「Rick・y」につき「リッキー(男性名;Richard の愛称)」と記載されているものがあるものの、一般的な国語の辞書等に載録された成語ではなく、特定の意味合いを想起させる語として知られていると認めるに足りる証拠はない。そうすると、本願商標は、「リッキー」の文字に相応して「リッキー」の称呼が生じるが、特段の観念が生じるものとは認められない。

⑶ 引用商標について
 引用商標は、ほほ袋を大きく膨らませ、大きな尻尾を持つなどリスの特徴を誇張し、服を着て蝶ネクタイをし、手に虫メガネを持つなど擬人化したリスを思わせる動物の図形(図形部分)と、その下部に「リッキー」の文字(文字部分)を横書きした構成からなるところ、その図形部分と文字部分は、図形と文字という構成要素を異にすることに加え、色彩も異にし、それぞれ重なり合うことなく、相当程度の間隔を空けて上下に独立して表されているものであることから、視覚上、明確に分離して看取し得るものである。文字部分を構成する「リッキー」の文字は、上記のとおり、一般的な辞書等に載録された成語ではなく、特定の意味合いを想起させる語として知られているというような証拠もないから、特定の観念を生じることがない造語として認識されるというのが相当である。
 また、上記の構成からなる図形部分は、リスを擬人化したものと思わせはするものの、一般に親しまれた特定の事物を表したものとは認められず、これにつき特定の称呼や観念が生じるといった事情も見いだせないことから、図形部分と文字部分とは、観念上のつながりはない。その他、図形部分と文字部分とで、両者を常に一体のものとして把握しなければならない特段の事情も見いだせない。
 そうすると、図形部分と文字部分は、これらを分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているとはいえないというべきであるから、引用商標は、その構成中の図形部分と文字部分が、それぞれ独立して自他商品役務の出所識別標識の機能を有しているといえ、その構成中から文字部分を要部として抽出し、この部分だけを他人の商標と比較して商標の類否を判断することも許されるものである。
 したがって、引用商標は、その構成中の「リッキー」の文字部分に相応して、「リッキー」の称呼を生じる。上記のとおり、文字部分からは特定の観念を生じない。

⑷ 本願商標と引用商標の類否について
 本願商標と引用商標は、上記⑵及び⑶のとおりの構成からなるところ、全体の外観において、図形部分の有無の差異を有するものの、本願商標と、引用商標の要部として抽出し得る文字部分とを比較すると、書体の違いはあるものの、いずれも「リッキー」の構成文字を共通にするものである。
 そうすると、本願商標と引用商標とは、全体の外観において相違し、観念において比較はできないものの、本願商標と引用商標の要部である文字部分との対比では、外観において近似し、称呼を共通にするものであるから、これらを総合して考察すると、本願商標と引用商標とは、互いに相紛れるおそれのある類似の商標ということができる。

⑹小括
 以上によれば、本願商標は、引用商標と類似する商標であって、その指定商品と同一又は類似する商品について使用をするものであるから、法4条1項11号に該当するものというべきである。そうすると、これと同旨の本件審決の判断に誤りはないというべきである。

2 原告の主張に対する判断
 引用商標の構成中、図形部分は、前記1⑶のとおり、リスを擬人化した何らかのキャラクターを描いてなると看取できるものの、我が国において広く知られ、親しまれたものではないから、特定の称呼や観念が生じることはない。また、「リッキー」の文字部分と称呼や観念における関連性はなく、当該キャラクター名称を表してなると直ちに認識、理解されることもないというべきである。
 そして、引用商標が特段の知名度を有するものと認めるべき証拠はないから、引用商標の文字部分と図形部分とは、文字部分が、図形で示されるキャラクターそのものの称呼や観念と異なる「リッキー」なるブランド名(店舗名)を示し、それをキャラクター図形と併記したものと認識、理解され得るものであり、それぞれが出所識別標識として独立して機能する構成要素として、それらを分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているものとはいえない。

3 結論
 以上によれば、原告主張の取消事由は理由がなく、本件審決にこれを取り消すべき違法はない。よって、原告の請求を棄却することとし、主文のとおり判決する。

解説/検討

 審決においては、キャラクター図形と文字より構成される結合商標については、文字はキャラクターの名称であるとして一体的に判断され、称呼が共通するものの、外観・観念において区別可能であるとして非類似と判断されている例も多くある。
 実際、下記表の商標は、称呼は共通するが非類似と判断されている。

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画像カンちゃん
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画像X-GIRL
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 確かに、文字部分が、図形で示されるキャラクターそのものの称呼や観念と異なるブランド名(店舗 名)を示し、それをキャラクター図形と併記したものと認識、理解され得る 可能性もあり、それぞれが出所識別標識として独立して機能することもあると考える。
 本件の場合には、「図形」と「文字」との一体性の欠如や「文字」がキャラクター名称とは直ちに理解されないもの(「○○ちゃん」や「○○マン」など)も考慮されたように考える。

       

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