【ハッシュタグと商標的使用】
投稿日:2026年8月14日 |
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著者:弁護士 山口 裕司
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参照条文/キーワード/論点 |
「業として」の使用/類否/商標的使用/差止めの必要性 |
ポイント※「#シャルマントサック」(被告標章1)は,需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができる態様による使用すなわち商標的使用がされていると認定した。 |
判決概要 |
| 裁判所 | 大阪地方裁判所第26民事部 |
| 判決言渡日 | 令和3年9月27日 |
| 事件番号 | 令和2年(ワ)第8061号 |
| 事件名 | 商標権侵害差止請求事件 |
| 裁判長裁判官
裁判官 裁判官 |
杉浦 正樹
杉浦 一輝 布目 真利子 |
事案の概要
本件は,本件商標(商標登録第6232133号(標準文字 シャルマントサック))に係る商標権(本件商標権)を有する原告が,被告がオンラインフリーマーケットサービス「メルカリ」上に開設したサイトに表示した別紙被告標章目録記載1又は2の標章(被告標章1「#シャルマントサック」、被告標章2「シャルマントサック」)が本件商標と同一ないし類似し,また,上記サイトにおいて被告が販売する巾着型バッグ(被告商品)は本件商標権の指定商品と同一であるとして,本件商標権に基づき,上記サイトにおける被告標章1又は2の表示行為の差止め(商標法36条1項)を求める事案である。
争点
商標的使用の有無
判旨
イ 商標的使用について
被告は,被告標章1につき,需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができる態様により使用されていない,すなわち商標的使用がされていない旨を主張する。
しかし,前記のとおり,オンラインフリーマーケットサービスであるメルカリにおける具体的な取引状況をも考慮すると,記号部分「#」は,商品等に係る情報の検索の便に供する目的で,当該記号に引き続く文字列等に関する情報の所在場所であることを示す記号として理解される。このため,被告サイトにおける被告標章1の表示行為は,メルカリ利用者がメルカリに出品される商品等の中から「シャルマントサック」なる商品名ないしブランド名の商品等に係る情報を検索する便に供することにより,被告サイトへ当該利用者を誘導し,当該サイトに掲載された商品等の販売を促進する目的で行われるものといえる。このことは,メルカリにおけるハッシュタグの利用につき,「より広範囲なメルカリユーザーへ検索ヒットさせることができる」,「ハッシュタグ機能をメルカリ上で使うと使わないでは,商品閲覧数や売り上げに大きく差が出ます」などとされていること(いずれも甲7)からもうかがわれる。
また,被告サイトにおける被告標章1の表示は,メルカリ利用者が検索等を通じて被告サイトの閲覧に至った段階で,当該利用者に認識されるものである。そうすると,当該利用者にとって,被告標章1の表示は,それが表示される被告サイト中に「シャルマントサック」なる商品名ないしブランド名の商品等に関する情報が所在することを認識することとなる。これには,「被告サイトに掲載されている商品が「シャルマントサック」なる商品名又はブランド名のものである」との認識も当然に含まれ得る。
他方,被告サイトにおいては,掲載商品がハンドメイド品であることが示されている。また,被告標章1が同じくハッシュタグによりタグ付けされた「ドットバッグ」等の文字列と並列的に上下に並べられ,かつ,一連のハッシュタグ付き表示の末尾に「好きの方にも…」などと付されて表示されている。これらの表示は,掲載商品が被告自ら製造するものであること,「シャルマントサック」,「ドットバッグ」等のタグ付けされた文字列により示される商品そのものではなくとも,これに関心を持つ利用者に推奨される商品であることを示すものとも理解し得る。しかし,これらの表示は,それ自体として被告標章1の表示により生じ得る「被告サイトに掲載されている商品が「シャルマントサック」なる商品名又はブランド名である」との認識を失わせるに足りるものではなく,これと両立し得る。
これらの事情を踏まえると,被告サイトにおける被告標章1の表示は,需要者にとって,出所識別標識及び自他商品識別標識としての機能を果たしているものと見られる。すなわち,被告標章1は,需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができる態様による使用すなわち商標的使用がされているものと認められる。これに反する被告の主張は採用できない。
解説/検討
htmlファイルにメタタグを記載することについて商標的使用(出所識別機能を果たす態様での使用)を認める裁判例は従前からあり、大阪地裁平成17年12月8日判決・平成16年(ワ)第12032号[中古車の110番事件]、大阪地裁平成24年7月12日判決・平成22年(ワ)第13516号/大阪高裁平成25年8月27日判決平成24年(ネ)第2382号[SAMURAI JAPAN事件](既に削除されていることから差止請求は否定)、大阪地裁平成29年1月19日判決・平成27年(ワ)第547号[BIKE LIFTER事件]、東京地裁平成30年7月26日判決・平成29年(ワ)第14637号[タカギ事件]、東京地判令和元年5月23日判決・平成28年(ワ)第23327号(第1事件)・第38566号(第2事件)/知財高裁令和2年3月19日判決・令和元年(ネ)第10049号[ブロマガ事件]が挙げられる。
他方で、ハッシュタグについて言及された裁判例には、大阪地裁平成31年3月14日判決・平成30年(ワ)第4954号[Tea Coffee事件]、東京地裁令和3年6月17日判決・平成31年(ワ)第11130号[ふふふ事件]がある。ただ、前者は、インスタグラムの「投稿には,「teacoffee」というハッシュタグが付されているものの,「京茶珈琲」や「ほうじ茶コーヒー」などというハッシュタグも付されていた」ことから、原告商標の自他商品識別力を否定する文脈で触れられていただけであった。後者は、「♯fufufu!」が米の名称である「富富富」を欧文字で表示したものとハッシュ記号を組み合わせたものであるとして、本件商標「ふふふ」と外観、観念が一致しないとして、商標の類似を否定するものであった。
本件は、ハッシュ記号を付している場合に、商標の類似を認め、商標的使用を認めたものである。ウェブサービスでハッシュタグをつける際に、利用者に商標権侵害の認識が薄い場合も実際上はあると思われるが、フリーマーケットのサイトでハッシュタグをつけて検索でヒットしやすくして販売を促進する行為を商標的使用と評価することは可能だと思われる。
