【比較広告の不正競争該当性と一般不法行為】

 

投稿日:2026年5月8日

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著者:弁護士 山口 裕司
*本記事は、筆者の個人的見解であり、当事務所を含め、筆者が所属する如何なる団体の見解も表示するものではありません。
*判決等に筆者が適宜下線や太字強調等を付している場合があります。


参照条文/キーワード/論点

品質誤認表示/信用毀損行為/一般不法行為

 

ポイント

 比較広告が不競法2条1項21号にいう「営業上の信用を害する」ものとはいえず、不正競争には該当しないが、自由競争として許容される範囲を逸脱する態様による広告であって、一般不法行為としての違法性を有するとした。

 

判決概要

裁判所 札幌地方裁判所民事第1部
判決言渡日 令和6年2月27日
事件番号 令和3年(ワ)第595号
事件名 損害賠償請求事件
裁判長裁判官
裁判官
裁判官
布施 雄士
藪田 貴史
小松 美緒
 

事案の概要

 本件は、化粧品等の通信販売業を営む原告が、被告らに対し、被告Y2のウェブサイトにおける広告が不正競争防止法(以下「不競法」という。)2条1項21号所定の信用毀損行為に当たり、被告Y1のウェブサイトにおける広告が同項20号所定の品質誤認表示に当たるところ、これらの行為は被告らによる共同の不正競争(同項柱書、民法719条)又は共同不法行為(民法709条、719条)に該当し、これにより原告の営業上の利益が侵害されたと主張して、原告の損害合計13億4612万2808円の一部である1億円及びこれに対する令和3年4月10日(各訴状送達の日の翌日)から支払済みまで民法所定の年3%の割合による遅延損害金の連帯支払を求める事案である。

争点

(1) 本件ランキング表示の品質誤認表示該当性(争点1)
(2) 本件比較広告の信用毀損行為該当性(争点2)
ア 原告と被告Y2の競争関係の有無(争点2-1)
イ 本件比較広告の内容が「虚偽の事実」に該当するか(争点2-2)
ウ 本件比較広告の内容が原告の「営業上の信用を害する」といえるか(争点2-3)
(3) 被告らによる共同の不正競争及び共同不法行為の成否(争点3)

   

判旨

1 争点1(本件ランキング表示の品質誤認表示該当性)について
 本件ランキング表示は、客観的根拠を欠くものであって、正確性が何ら担保されていないにもかかわらず、Eが多くの消費者から高く評価されていることを表示し、需要者においてEがそのような評価をされる品質を有する商品であると誤認させる可能性があるものといえるから、「品質」について「誤認させるような表示」がされていると認められる。

2 争点2(本件比較広告の信用毀損行為該当性)について
(1) 争点2-1(原告と被告Y2の競争関係の有無)について
 不競法2条1項21号所定の営業誹謗行為を行う者は、自らが被害者と同種の営業を営む者でなくても、行為の外形上、被害者と競争関係にある営業者のためにすると認められるような関係を有する者については、競争関係にあるものと解される。
 これを本件についてみると、原告と被告Y1は、いずれもアイクリームの通信販売を行う者であり、需要者を共通にする関係にあるから、上記競争関係が認められるところ、被告Y2は、被告Y1と本件業務委託契約を締結し、被告Y1のためにEの広告や宣伝活動を行っていたものであり、被告らが代表取締役2名が共通していることも併せ考慮すると、被告Y2についても、原告と競争関係にある被告Y1のために本件比較広告を制作・公開したものとして、上記競争関係があるというべきである。

(2) 争点2-2(本件比較広告の内容が「虚偽の事実」に該当するか)について
 不競法2条1項21号にいう「虚偽の事実」は、客観的真実と異なる事実を指し、告知・流布の受け手になる者において、真実と異なる認識を招くものといえるか否かを検討すべきものと解される。
 そして、本件比較広告は、インターネット上において公開されていたものであるから、本件比較広告に記載された事実の受け手としては、D及びEに関する前提知識を有さない一般消費者を想定すべきである。

(3) 争点2-3(「営業上の信用を害する」該当性)について
 不競法2条1項21号にいう「信用」とは、人の経済面における社会的評価、すなわち財産上の義務履行に対する信頼をいうものと解されるところ、原告が主張する事情(DとEの価格差、販売における契約条件の有利不利)が原告の財産上の義務履行に対する信頼を損ねるとはいえないから、本件比較広告における記載は「営業上の信用を害する」ものに当たらない。

3 争点3(被告らによる共同の不正競争及び共同不法行為の成否)について
 本件比較広告が不競法2条1項21号にいう「営業上の信用を害する」ものとはいえず、同号所定の不正競争には該当しないが、同(1)・(2)で説示したところによれば、本件比較広告のうち「年間定期購入(税抜)3ヶ月ごと3本ずつのお届け」「1本あたり2,533円+送料(合計:7,599円/1年契約)」とする記載及び「1本ずつ届くお試し定期コースでも、Eはいつでも解約OK」「Dは定期コースを途中解約できない!」とする記載(以下「違法記載部分」という。)については、自由競争として許容される範囲を逸脱する態様による広告であって、一般不法行為(民法709条)としての違法性を有するというべきである。

 

解説/検討

 本判決は、「本件比較広告が不競法2条1項21号にいう「営業上の信用を害する」ものとはいえず、同号所定の不正競争には該当しないが、…自由競争として許容される範囲を逸脱する態様による広告であって、一般不法行為(民法709条)としての違法性を有するというべきである。」として、損害賠償請求を一部認めた。
 ワンスプーン事件では、原告商品の「ワンスプーン」の販売契約の終了後に、同じインターネット上のサイトで他社製造に係る原告商品と同種の商品を「ワンスプーンプレミアム」との商品名を付して販売を開始したケースで、大阪地裁令和5年9月14日判決(令和4年(ワ)第3392号)が、原告の請求を棄却したが、大阪高裁令和6年5月31日判決(令和5年(ネ)第2172号)は、「原告商品の商品名自体が不競法上の周知商品等表示と認められず、本件販売行為が不正競争を構成しないとしても、需要者の誤認を利用するものといえる上記被控訴人による被告商品の販売態様は、自由競争の範囲を逸脱した違法な販売態様で控訴人の顧客を奪っているものといえるから不法行為を構成するというべきである。」として、原判決を変更し、損害賠償請求を一部認めた。

 

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