【先使用権の効力は、実施の準備をしていた具体的意匠のみならず、類似意匠まで及ぶと解された事例】

 

投稿日:2026年10月15日

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著者:弁護士 山口 裕司
*本記事は、筆者の個人的見解であり、当事務所を含め、筆者が所属する如何なる団体の見解も表示するものではありません。
*判決等に筆者が適宜下線や太字強調等を付している場合があります。


参照条文/キーワード/論点

意匠法第29条/実施又は準備をしている意匠

ポイント

意匠法29条にいう「実施又は準備をしている意匠」には、意匠登録出願や優先日の時点において先使用権者が事業の実施又は事業の準備をしていた具体的意匠に限定されるものではなく、その具体的意匠に類似する意匠も含むという解釈が示された。

 

判決概要

裁判所 大阪地方裁判所第26民事部
判決言渡日 令和8年9月10日
事件番号 令和7年(ワ)第1068号(本訴)
同第7435号(反訴)
事件名 意匠権侵害差止等請求事件(本訴)
差止等請求権不存在確認請求事件(反訴)
裁判長裁判官
裁判官
裁判官
水野 正則
小野 健
西尾 太一
 

判決へのリンク(裁判所HPへ)

事案の概要

1 本件意匠及び被告各意匠
■本件意匠
 登録番号:第1652579号
 出願日:平成31年4月26日
 意匠に係る物品:シートパイル用連結具
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■被告意匠1:TypeⅡ(large)
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■被告意匠2:TypeⅡ(large)のマイナーチェンジ版
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■被告意匠3:TypeⅡ(small)
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2 請求の概要
 本訴事件は、本件意匠権を有する原告が、被告らに対し、被告らによる被告各製品の製造、輸入、販売等が本件意匠権を侵害するとして、意匠法37条1項に基づき被告各製品の製造、輸入、販売等の差止め、同条2項に基づき被告製品の廃棄、不法行為に基づき損害金5500万円及びこれに対する不法行為後の日である本訴状送達の日の翌日(令和7年2月13日)から支払済みまで民法所定の年3%の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。
 反訴事件は、被告横山基礎工事が、原告に対し、被告横山基礎工事による被告製品3の製造、輸入、販売等が本件意匠権を侵害するものではないとして、原告の被告横山基礎工事に対する本件意匠権に基づく損害賠償請求権、不当利得返還請求権及び差止請求権を有しないことの確認を求める事案である。

3 前提事実
(当事者間に争いがないか、後掲の各証拠(いずれも枝番を含む。)又は弁論の全趣旨により容易に認められる事実)
(1) 当事者等
 原告は、各種の鋼材の企画、開発、製造、販売を行っているドイツ法人であるSteelWall ISH GmbHの代表者(マネージメントディレクター)であり、本件意匠権の意匠権者である(甲1、2)。
 被告JFE商事は、一般鋼材の仕入、販売、加工等を目的とする株式会社である。
 被告横山基礎工事は、土木工事業等を目的とする株式会社である。
(2) 本件意匠権
 原告は、本件意匠権(その概要は別紙意匠権目録記載のとおり。)を有している。
 本件意匠は、土木・建築工事において、護岸や土留め等に用いられるシートパイル(鋼矢板)を連結するための「シートパイル用連結具」の意匠であり、別紙意匠権目録7項「意匠の形態(図面)」記載の各図面のとおりの形態からなる(甲2)。
(3) 被告各製品
ア 被告横山基礎工事は、平成23年頃より、マイクロジョイントパイル(MJP)工法による鋼管矢板の施工工事を、米国PileProグループからTypeⅠ(large)及び同(small)と呼ぶ特殊継手(以下「旧継手」という。)を購入して、実施してきた(乙B4、7)。
イ 被告各製品は、いずれも旧継手の後継となる新たな特殊継手であり、マンシュタット社が製造し、被告JFE商事が羽田興産株式会社(以下「羽田興産」という。)を通じて輸入して、被告横山基礎工事に販売している。
 被告各商品の製造・輸入の開始時期は、被告製品1(TypeⅡ(large))が遅くとも平成30年以降、被告製品2(被告製品1のマイナーチェンジ版)が令和6年以降、被告製品3(TypeⅡ(small))が令和元年11月以降であった(乙A4ないし9、乙B53、弁論の全趣旨)。
(4) 訴訟提起等(当裁判所に顕著な事実)
ア 原告は、令和7年2月4日、被告らに対し、「『基礎工』(総合土木研究所発行)2022年8月号(2022 Vol.50, No.8)の裏表紙に『特殊継手』として掲載されている『シートパイル用連結具』」の製造、輸入、販売等が本件意匠権を侵害するとして、侵害行為の差止め、上記製品の廃棄及び損害賠償金の支払を求める本訴を提起した。

イ 被告横山基礎工事は、同年7月16日、原告に対し、被告製品3について、原告の被告横山基礎工事に対する本件意匠権に基づく損害賠償請求権、不当利得返還請求権及び差止請求権が存在しないことの確認を求める反訴を提起した。

ウ 原告は、令和8年2月9日、本訴について、本訴提起時に上記アのとおり特定した製品を被告製品1と特定し直すとともに、被告製品2及び被告製品3についても、それらの製造、輸入、販売等が本件意匠権を侵害するとして、被告らに対して侵害行為の差止め、製品の廃棄及び不法行為に基づく損害賠償を求める旨、請求を拡張して、請求の趣旨を前記第1の1のとおりに変更した。

争点

(1) 被告各意匠が本件意匠に類似するか(争点1)
(2) 日本国内に先に存在する物の抗弁の成否(争点2)
(3) 被告らによる先使用権の成否(争点3)
(4) 新規性欠如による無効(争点4)
(5) 原告の損害額(争点5)

判旨

1 認定事実
 前記前提事実に加え、後掲の各証拠及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実を認めることができる。
(1) 被告横山基礎工事は、遅くとも平成29年初め頃までに、旧継手の後継となる新たな特殊継手の製造委託先・購入元として、被告JFE商事からマンシュタット社の紹介を受けた(弁論の全趣旨)。

(2) 被告横山基礎工事は、新たな特殊継手の図面として本件原図1を作成し、被告横山基礎工事の担当者は、平成29年3月1日にこれをメールに添付して被告JFE商事の担当者に送付した(乙B26ないし28、乙A10)。
 その後、本件原図1に基づく製品の製作可能性や取引内容等について、被告横山基礎工事、被告JFE商事、羽田興産、マンシュタット社らの間で協議が行われ(乙A11、12、乙B29ないし31)、被告横山基礎工事において本件原図1を修正した本件原図2を作成し(乙B32ないし34)、これをもとに関係者の間で同年5月31日に協議が行われた後、被告横山基礎工事において本件原図2を修正した本件原図3を作成し(乙B36)、本件原図3を基にマンシュタット社が作成した製造図面に、被告横山基礎工事の担当者が「承認済 APPROVED」と記載をすることにより、同年6月13日、被告製品1にかかる承認製造図面が確定した(乙B3、37、38)。

(3) 被告横山基礎工事は、平成29年6月12日付けで、前記承認製造図面とともに、被告製品1(メス継手)318トン(1547本)を含む特殊継手を発注する旨の注文書を被告JFE商事に対して送付し、第1回分の発注を行った(乙B10、23、24)。
 その後、同年12月から平成30年1月にかけて、第1回分の発注にかかる被告製品1合計1653本(約328トン)が、日本国内に輸入され、被告横山基礎工事に納入された(乙A4ないし9)。
 また、被告横山基礎工事は、平成29年10月28日付けで、被告製品1 380トン(1849本)を含む特殊継手を発注する旨の注文書を被告JFE商事に対して送付して第2回分の発注を行い(乙B53の2)、平成30年4月までに、第2回分の発注にかかる被告製品1合計411トン(2133本)が日本国内に輸入され、被告横山基礎工事に納入された(乙A16ないし19、乙B54)。

(4) 被告横山基礎工事は、被告製品1を含むTypeⅡ(large)の特殊継手について、平成30年1月に溶接取付け確認試験、同年4月及び5月に止水試験、同年5月に打設試験及び引抜き確認試験からなる掘削試験といった各種の性能試験を社内で行った。前記の各試験のうち、止水試験と掘削試験は、被告横山基礎工事の岡山第2工場で行われた。(乙B7、26、39)

(5) 被告製品2は、被告製品1のマイナーチェンジ版と位置付けられる製品であり、被告製品1の意匠の継手部(ソケット部)の内部に長尺物として連続して面一に直線状に溝部が設けられていること、正面視及び背面視で継手部(ソケット部)の中間から接合部(台座部)の左右の輪郭線が直線状ではなく、くびれた曲線状に形成されており、長尺物として連続して面一に形成されるくびれ形状を有すること、及び、接合部(台座部)の正面視及び背面視における下辺左右の大きな角丸形状と鋼管矢板との間に凹みの大きな弧形が形成されていることは、被告製品1とマイナーチェンジ後の被告製品2とで共通であり、差異点は、上記溝部の深さが5mmから7mmに変更されているなど形状が若干異なる点程度である(乙B22の1ないし3、49)。
 被告製品1と被告製品3を比較すると、①被告製品1の意匠の継手部(ソケット部)の内部に長尺物として連続して面一に直線状に設けられた溝部、②正面視及び背面視で継手部(ソケット部)の中間から接合部(台座部)の左右の輪郭線が直線状ではなく、くびれた曲線状に形成されており、長尺物として連続して面一に形成されるくびれ形状を有すること、及び③接合部(台座部)の正面視及び背面視における下辺左右の大きな角丸形状と鋼管矢板との間に形成される凹みの大きな弧形状は、被告製品1と被告製品3の間で共通であり、差違点は、高さ(正面視上下方向の長さ)と幅(正面視左右方向の長さ)の比率、及び接合部の下辺に存在する円弧状の湾曲の大きさ程度である(乙B3、45)。

2 争点3(被告らの先使用権の成否)について
事案の性質に鑑み、争点3から判断する。
(1) 前記前提事実、前記認定事実(1)及び(2)によれば、被告横山基礎工事は、旧継手の後継となる特殊継手の製造委託先・購入元としてマンシュタット社の紹介を受けた後、自ら新たな特殊継手の図面である本件原図1を作成し、マンシュタット社や被告JFE商事などの関係者との協議を経ながらその図面を修正し、平成29年6月に被告製品1にかかる承認製造図面を作成するに至ったと認めることができるのであって、マンシュタット社の回答書において本件原図1のアイデアが被告横山基礎工事のものである旨が記載されていること(乙A13)にも照らせば、被告横山基礎工事が、本件意匠とは関係なく被告意匠1を創作したものということができる。

(2) そして、前記認定事実(3)によれば、被告横山基礎工事は、被告JFE商事を通じてマンシュタット社に被告製品1の製造・納品を依頼し、平成29年12月頃から被告製品1が日本国内に輸入され、被告横山基礎工事に納入されていたのであるから、同時期から、被告横山基礎工事が、日本国内において被告製品1の製造、輸入にかかる事業をしていたということができる。
 他方で、本件各証拠を精査しても、本件意匠権の優先日である平成30年11月6日以前に被告横山基礎工事が日本国内に輸入した被告製品1をMJP工法による鋼管矢板の施工に実際に使用していたことを直接的に裏付ける証拠はなく、当該時期に旧継手が依然として施工に使用されていたことをうかがわせる証拠(乙B7)も存在することにも照らせば、被告横山基礎工事が平成30年11月6日以前に被告製品1の使用、譲渡、貸渡し等の各事業をしていたとまで認めることはできない。
 しかし、前述のとおり、被告横山基礎工事は、平成29年6月に被告意匠1を完成させ、その後に被告意匠1に基づく被告製品1の製造・輸入を発注し、同年12月には被告製品1の納入を受けており、更には前記認定事実(4)のとおり、平成30年1月から5月にかけて被告製品1の性能試験を実施しているのであるから、同年11月6日の時点で、被告横山基礎工事において、被告製品1にかかる使用、譲渡、貸渡しの事業を即時に実施する意図を有しており、その意図が表明されていたということができ、したがって、被告横山基礎工事において、前記各事業の準備をしていたということができる。

(3)以上によれば、被告横山基礎工事は、本件意匠権の優先日である平成30年11月6日の時点で、被告意匠1の実施に当たる製造、使用、譲渡、貸渡し、輸入の事業をし、又は事業の準備をしていたと認められる。

(4) また、意匠権者の権利が登録意匠のみならずそれと類似する意匠にも及ぶこと、先使用制度の趣旨が、主として意匠権者と先使用権者の公平を図ることにあることに照らせば、意匠法29条にいう「実施又は準備をしている意匠」には、意匠登録出願や優先日の時点において先使用権者が事業の実施又は事業の準備をしていた具体的意匠に限定されるものではなく、その具体的意匠に類似する意匠も含むものと解すべきであり、先使用権の効力は、当該類似する意匠にも及ぶものと解するのが相当である。
 本件においては、前記認定事実(5)のとおり、被告製品2と被告製品3は、その意匠の重要部分が被告製品1と共通しているのであって、原告が本件意匠と被告各意匠がいずれも類似している旨主張していることに照らしても、被告意匠1と被告意匠2及び被告意匠3が類似していると認めることができる。

(5) したがって、本件意匠と被告各意匠が類似しているとしても、被告横山基礎工事は、本件意匠を知らないで自ら本件意匠に類似する意匠を創作し、本件意匠権の優先日である平成30年11月6日の時点で、現に日本国内において原告意匠に類似する意匠である被告各意匠の実施である事業をし、又は事業の準備をしていたと認められるから、意匠法29条により、被告各意匠及び事業の目的の範囲内において、本件意匠権について通常実施権を有すると認められる。
 そうすると、被告横山基礎工事が、被告各製品を製造、輸入、販売等する行為は本件意匠権を侵害しないものと認められる。
 また、被告JFE商事は、被告横山基礎工事の注文に基づき、もっぱら同社のために被告各製品を輸入し、輸入した被告各製品を同社に販売したものであって、被告JFE商事による前記各行為は、被告横山基礎工事の有する通常実施権を行使したものに過ぎず、被告横山基礎工事の通常実施権行使の範囲内に属するものといえることから、被告JFE商事が被告各製品を輸入、販売等する行為も、本件意匠権を侵害しないものと認められる。

3 結論
 以上によれば、原告による本訴請求については、被告らの主張する先使用権の抗弁が成立することから、その余の争点について判断するまでもなく、いずれも棄却することとする。
 また、被告横山基礎工事による反訴請求は、被告製品3について、被告横山基礎工事による製造、輸入、販売等が本件意匠権を侵害するものではないとして、原告が被告横山基礎工事に対する本件意匠権に基づく損害賠償請求権、不当利得返還請求権及び差止請求権を有しないことの確認を求めるものであるところ、前記前提事実(4)のとおり、原告は、被告横山基礎工事による反訴提起の後に、被告製品3についても、本件意匠権の侵害を理由とした侵害行為の差止め、廃棄及び不法行為に基づく損害賠償請求を求める旨、本訴請求を拡張しているのであって、これにより、反訴請求のうち、損害賠償請求権、差止請求権が存在しないことを確認する部分は、訴えの利益を欠くことに帰するから、当該部分の訴えを却下することが相当である。
 他方で、反訴請求のうち、不当利得返還請求権が存在しないことの確認を求める部分については、前記本訴請求の拡張の際にも不当利得返還請求権に基づく請求が追加されていないため、訴えの利益を欠くことにはならない。そして、当該不当利得返還請求権の内容は必ずしも明らかではないものの、被告横山基礎工事において本件意匠の正当な使用権限がないのに本件意匠と類似する被告各意匠を用いた被告各製品を使用したことによって得た利得の返還を求める請求権を指すものと考えられるところ、これまで述べたとおり、被告らが先使用に基づき本件意匠権の通常実施権を有すると認められることからすれば、原告は、被告横山基礎工事に対し、前記不当利得返還請求権を有しないというべきである。よって、反訴請求のうち、原告が不当利得返還請求権を有しないことの確認を求める部分は、認容することとする。

第5 結論
 以上によれば、原告の本訴請求は、いずれも理由がないからこれを棄却することとし、被告横山基礎工事の反訴請求のうち、原告が損害賠償請求権、差止請求権を有しないことの確認を求める部分は訴えの利益を欠くことから却下することとし、原告が不当利得返還請求権を有しないことの確認を求める部分は理由があるから認容することとし、訴訟費用の負担については、被告横山基礎工事の敗訴部分が僅少であることから、民事訴訟法64条ただし書を適用して原告の負担とすることとして、主文のとおり判決する。

解説/検討

 「実施又は準備をしている意匠」に変更を加えた類似意匠にまで先使用権が認められるかという点について判断した裁判例は少ないが、本判決と同旨の裁判例として、大阪地裁平成10年(ワ)第11674号「包装用かご事件」が存在する。
 「包装用かご事件」では、「意匠の創作的価値」に着目しており、創作説的考え方を採用しているようであるが、創作価値が共通する範囲にまで先使用権を認めるという考え方は、特許の「発明範囲説」の考え方(後掲「ウォーキングビーム式加熱炉事件」)と親和性が高い。
 一方、本判決では「意匠の創作的価値」という文言は用いておらず、創作説的考え方を採用しているのかは不明であるが、創作説を持ち出すまでもなく公平の観点から先使用権の効力を類似範囲にまで認めている点において、意義があると考える。実際、意匠はライフサイクルが短く、短期間にバリエーションの意匠を創出(モデルチェンジ)していく必要性もあるため、類似範囲にまで先使用権を認めなければ、先使用権者の保護の実効性に欠けることとなるであろう。

【包装用かご事件】
 「ここにいう『実施をしている意匠の範囲』とは、登録意匠の意匠登録出願の際に先使用権者が現に日本国内において実施をしていた具体的意匠に限定されるものではなく、その具体的意匠に類似する意匠も含むものであり、したがって、先使用権の効力は、意匠登録出願の際に先使用権者が現に実施をしていた具体的意匠だけではなく、それに類似する意匠にも及ぶと解するのが相当である。なぜなら、意匠の創作的価値は、当該具体的意匠のみならずそれと類似する意匠にも及び、意匠権者は登録意匠のみならずそれと類似する意匠も実施をする権利を専有する(意匠法二三条)という制度の下において、先使用権制度の趣旨が、主として意匠権者と先使用権者との公平を図ることにあることに照らせば、意匠登録出願の際に先使用権者が現に実施をしていた具体的意匠以外に変更することを一切認めないのは、先使用権者にとって酷であって、相当ではないからである。」

【「ウォーキングビーム式加熱炉事件」(昭和61(オ)第454号)】
「先使用権の効力は、特許出願の際(優先権主張日)に先使用権者が現に実施又は準備をしていた実施形式だけでなく、これに具現された発明と同一性を失わない範囲内において変更した実施形式にも及ぶものと解するのが相当である。けだし、先使用権制度の趣旨が、主として特許権者と先使用権者との公平を図ることにあることに照らせば、特許出願の際(優先権主張日)に先使用権者が現に実施又は準備をしていた実施形式以外に変更することを一切認めないのは、先使用権者にとつて酷であつて、相当ではなく、先使用権者が自己のものとして支配していた発明の範囲において先使用権を認めることが、同条の文理にもそうからである。」

 

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